
モヤモヤ職場 鳥谷 陽一(著) より
現代のような不確実な環境下で、最大の成果をあげるために一番重要なことは何でしようか。それは、組織や上位の意図どおりにメンバーを動かすことだけではなく、メンバーに共通の目的を共有させた上で、環境の変化に適応して柔軟性を持ち、各自に自律的な行動を採ってもらうことです。
そうかな?
目的を共有できたらメンバーは自律的に行動できるんだろうか?
ガルシアへの手紙 エルバート ハバード
というのをご存じでしょうか?
まぁ、要約すると

米西戦争のさなか、米国大統領マッキンレーは、早急にキューバの反乱軍のリーダーと連絡を取らなければならなくなった。その男ガルシアは、キューバの山奥のどこかにいるとのことだったが、誰もその所在を知るものはいなかった。郵便も電報も、ガルシアの元へは届かない。だが大統領はなんとしてもガルシアの協力を取り付けなければならなかった。そんな時、誰かが大統領に進言した。ローワンという男なら必ずや大統領のためにガルシアを見つけてくれるでしょう。
ローワンは、命令通り、手紙を持ってボートでキューバに渡り、スペイン兵のいるジャングルに消え、3週間後に再び姿を現した。手紙は無事ガルシアに届けられたのだという。
という物語に対して、著者は
マッキンレー大統領がローワンにガルシアへの手紙を渡したが、そのときローワンは、その手紙を黙って受け取り、「ガルシアはどこにいるのですか」と聞かなかったということである。
この男こそ、ブロンズで型にとり、その銅像を永遠に国中の学校に置くべきである!
若い人たちに必要なのは、学校における机の上の勉強ではなく、また、あれこれの細かな教えでもない。
ローワンのように背骨をビシッと伸ばしてやることである。
自らの力で物事に取り組もうという精神を教えることである。勇気を教えてやることである。
そうすれば、若い人たちは、信頼にそれこそ忠実に応えられる人物、すぐ行動に移せる人物、精神を集中できる人物となり、そしてガルシアに手紙を持っていく人物となれるであろう。
と書いている。目的の共有も何もあったもんじゃぁなく、どこにいるのかもわからないような人物に手紙を渡すという「目標」だけがあった。
で、この本は、アメリカだけではなく、各国の軍隊に(日本も含む)冊子として配布されているそうです。まぁ軍隊だけではなく、国家の機密にかかわるような仕事をする人は、その本来の目的など教えてもらえるわけはなく、言われたことをちゃんとやるだけ。
以前の記事にも書きましたが、上司から「これをやれ」と言われたときに、
「その目的と得られる効果を教えてください」
「なぜこれをすることで、そういった効果が期待できるのでしょうか?」
などとのたまう部下はあまり好かれないのが現実かもしれません。
もちろん、軍隊と会社は違いますので、命令は絶対ではありません(建前はね)。
多くのビジネス書はそんなことは書いてないですが、上司が与える目標はある意味絶対命令に近いです。その手段についてはある程度部下の裁量範囲が与えられますが、その目標や上司が出した制約事項を勝手に変えるというのは、ちょっと厳しいですね。
「勝手に解釈をするな!」
と言われかねませんし、上司として目標を明示した以上、その目標を達成できた場合には、それによって、どのような効果を出すかは上司の責任なのですから。
もちろん「絶対命令」といっても、一般常識に反するものや違法なものは拒否するべきでしょうが、過去の事件などを垣間見る限り、
上司の指示を拒否しますか?
という問いは、その場になってみないとわかりませんね。
それを拒否したことで、クビにならないまでも、冷や飯を食わせられることは十分あるわけですし、それ以外にも様々な圧力がかかります(勝手に感じただけ、というのもあるでしょうけど)。さらにそれをやってしまったことで、トカゲのしっぽにされる危険性もあるので、慎重に考えないと…。
部下としては上記のように、その指示を受けることに対する自分の将来を天秤にかけて、考えないといけないでしょう。
上司としては、状況が許す限り冒頭の「モヤモヤ職場」にあるように目的を共有するべきでしょうし、それがどのようなものなのかというビジョンを持つべきでしょう。
ただし、先日の記事「3人の職人と墨俣城」に書いたように、それも
使い方次第
つまり、共有することの効果と共有しないことの効果を考えて、いずれの方策を取るべきか考えをもって行動すると、結果としての効果に責任が持てるでしょうね。