あるプロジェクトの計画をたてるときに、関係者に予想工数を出してもらいますよね。
予想工数ってどのくらいマージンを取ってみなさんは回答するでしょうか?
■予想工数は90%
何かの調査で、予想工数というのは、人によってもばらつきがありますが、9割ぐらい確実にできる値を出すそうです。
例えばあるタスクが「20時間かかります」と言われた場合、9割の確率で20時間以内に収まるということ。でも内心は「15時間くらいかな〜」なんて思ってるわけです。でも、もし出来なかった時スケジュールに影響を与えたのが
「自分の責任にはしたくない」
ってみんな思ってるわけですよ。
このあたりは経験の少ない人のほうが正直ですね。
「15時間くらいかな〜」って思ったら、それをそのまま口に出しちゃう。
で時々間に合わなくて、みんなで集まってスケジュールの再調整をすることになったりすると、
「あ〜、まずったなぁ」
って思うので、だんだん余裕をみ込むようになります。
■クリティカルチェーン
TOC(制約理論)におけるクリティカルチェーンに基づくプロジェクトマネジメントってご存知でしょうか。
全員が、
そのタスクを全力でやった時の最短時間
を出して、それでスケジュールを組んでしまうという代物。
つまり、100%そのタスクに打ち込んだ時に、できるかできないか五分五分の時間を出して、それでスケジュールを組んでしまいます。ただし、プロジェクト全体で余裕分のバッファを持つ。遅れが生じた時には、その余裕分のバッファを使って、全体のスケジュール調整をします。
先日タスクマネージメントの講師の方に、
「このやり方でやったことはある?」
と聞いたら、「YES」という答えでした。
で、どうでだったかというと、ちゃんとできたそうです。
そのかわり、終わった時には全員へろへろ。
「とてもではないですが、普段に使える方法ではありませんね。」
「ただ、非常に強力であることは確かです」
というのが講師の方の感想でした。
逆に言えば、緊急で短期のプロジェクトなら使えるということ。
私の実感でもまったくその通りです。
■緊急事態
私はここ10年ほどは生産設備の設計をしてますので(その前は製品の設計をしてた)、生産に使用中の設備がトラブると緊急事態になります。
そのときにこのやり方が非常に効果があります。
工場から障害の第一報が入ってきます。
「この前入れた××システム、応答しなくてライン止まったぞ!」
となると、即効で関係者・識者を集めます。
「○○さん、▲▲をしらべて」
「××さん、△△のデバッグログを埋め込んだソフトを作って工場にリリースして」
:
:
と次々に指示を出します。そのときに一番キーになりそうな担当者を攻撃します。
私 :「■■さん、いつまでにできる?」
担当:「え〜っと、2時間ください」
私 :「今抱えている業務をやめたらどのくらいでできる?」
担当:「じゃぁ、1時間半で」
私 :「分かった。1時間でやって」
担当:「え、無理です〜」
私 :「大丈夫、遅れたらその場で調整するから」
(もう、やれうかどうかなんて聞かなない)「じゃあ、君が終わり次第、もう一度ここに集合にしますので、すぐに取り掛かってください。」
「あ、君は30分後に進捗状況を聞きに行くからね。」
という展開。もともと30分でやらせるつもりです。言い値の4分の1。
上司が30分後に進捗を聞きに来るとわかれば、メールを見たり、他の業務をする余裕なんてありません。必死になってやります。
で、きっかり30分後に行ってできてなければ、後ろに立ってます。
そうなれば、担当者はトイレにいく余裕もなくなります。
で、8割がた処理が終わったところで、関係者に電話をして、「これから結果のレビューをするからあつまって」と、担当者に聞こえるように話をします。
大体最短速攻で問題は解決しますね。
こうやり方をするので、「◆◆さん(私のこと)はトラブルになると元気になりますね〜」なんて言われるのですが、こればっかりはやむを得ない。
■普段は使わないけど
こんなふうなやり方ですので、いつもやるとメンバーはクタクタになります。
だから、基本的には原則は使ってはいけない伝家の宝刀。
でも抜かないといけない時もあることを知っておきましょう。
■やり方
0.関係者を集める(ひとりひとり電話をして呼び出す)
1.ひとりひとりにタスクを与える
2.それぞれのタスクの見積り時間を言わせる(先に自分で見積もっておきます)
3.担当者が見積りを行ったら、それを1/2〜1/3位の時間でやるように指示する
4.8割がたできたら、電話をしてくるようにする
5.電話を受けたら、次の指示を出す。別の人がそれを受けて次のタスクをするのであれば、すぐに次のタスクの担当者に電話をかけて、タスクをスタートするように指示する。
5.キーになりそうなタスクの担当者には、最小の見積り時間で、その人の席へ行き、できるまで後ろに立ってる
6.担当者が「出来ました」と言う前に、見切りで関係者を集め始める
つまり、前工程の処理が終わった途端に後工程がスタートするようにするわけです。
本当はすべてのタスクに対してそれをやれるといいのですが、リーダは体がひとつしかないので、最も重要なタスクにベッタリ張り付いているわけです。
■普段使ってはいけない
最初にも書きましたが、この方法は、プロジェクトを最短で終わらせる最良の手段だと思いますが、担当者やリーダ自身の緊張も相当なものです。
毎日やられたら精神的にも肉体的にも持ちません。
緊急時だけにしましょう。