なにかにチャレンジをすれば、その目標自体を達成できたとしても、そこにはいろいろな反省点も出てくると思います。
個人的にやったことなら別なのですが、チームでチャレンジすると、問題が発生した時に、「なぜ、こういうことになったんだ?」という質問をつい、したくなります。
■原因を追求は難しい
品質改善手法で、「なぜなぜ分析」というものがあります。
これは、問題点を見つけたら
「なぜそうなったか」⇒「こういう必要があったから」
というのを5回繰り返して、本当の原因にさかのぼり、その原因を潰すことで、問題やそれから派生する問題を起きなくしようという活動です。
これ自体は素晴らしいと思うのですが、自分が起こした問題で、他人から「なんでそういうことをやったんだ?」といわれると、責められているという感じがして、ものすごく圧迫感があるんですね。
特にチームリーダや上司から「なんで?」といわれるとすごくプレッシャー。
よく言われるのは
やってしまった行為やその人自身にフォーカスするのではなく、問題点にフォーカスしなさい
というお話なのですが、どう言葉尻を作ろっても、根掘り葉掘り効かれる側にとっては、被告席に座らされているのも同然。
もしあなたが議事進行をするのであれば、最大限の配慮をしないといけないのですが、すごく難しいです。
■目標にフォーカスする
そこで、私がやり始めたのが、過去にフォーカスするのではなく、未来にフォーカスを当てるということ。
・もともとそれをやろうとしていた理由は何だっただろう?
・それをもっとうまくやれる方法はないだろうか?
という議論をすること。
この議論であれば、すべての参加者が「考えていること」に対して話ができるので、一人の人に質問が集中しにくいです。
■実例
ということなのですが、ちょっとこれだけではわかりにくいですよね。具体的な例を上げてみたいと思います。
◆問題現象
あるときソフトのリリースする時に、本来やらないといけないリリースのチェックを飛ばしてリリースしてしまった。その結果、実はそのチェックリストを実施していれば分かったデグレードを見逃してしまった。
◆なぜなぜ分析をした場合
以下のような会話をすることになります。
リーダ:どうしてチェックリストを飛ばしてしまったの?
担当1 :(担当2)さんがやったと思っていたから…
担当2 :(心のなかで)なんだよオレのせいにしたいのかよ!
リーダ:どうして必要な資料が揃っているか確認しなかったの?
担当1 :すみません。気が付きませんでした…
リーダ:どうして気が付かなかったの?
担当1 :すみません…。
リーダ:いや、あやまって欲しいんじゃなくて、
原因を知りたいんですけど。
担当1 :全部僕が悪いです…
↓
●破綻●
リーダ:(気を取り直して)じゃぁ(担当2)さん、
どうしてこのチェックリストを飛ばしたの?
担当2 :(担当1)さんのがやると思ったんです。
リーダ:どうして(担当1)さんがやっていると思ったの?
担当2 :すみません。思い込んだだけです。
リーダ:どうして思い込んだの?
担当2 :そんなことわかんないですよ!
どうせ全部オレの責任にしようと思ってるんだろ!
↓
●崩壊●
◆目的フォーカス型
こんな会話です。
リーダ:リリースするソフトのデグレードがないようにし
たいんだけどどうすればいいかな?
担当1 :チェックリストを間違いなくやることだと思います。
リーダ:でも、今回それを飛ばしちゃったよね。ソフトの品質
を担保するためには何をすればいいのかな?
担当2 :やっぱりチェックリストが充実していれば…
担当3 :チェックリストが多すぎて、チェックリストの
チェックリストが必要になっちゃったんですけど…
リーダ:そうだよね〜。
担当1 :だれかチェックの専任担当者をおいたらどうでしょう?
リーダ:で、チェックのチェックを行う、と?
担当4 :もっと早い段階で問題が見つかるようになればチェック
しなくてもいいんじゃないかなぁ
担当2 :自動的にチェックが働くようになればいいのでは?
リーダ:自動化なんて(ソフト屋の)自分たちにピッタリの作戦
だよね。
担当3 :EXCELのマクロで必要なところにチェックが入っている
かならボクが簡単に作れますが。
リーダ:じゃ、とりあえず今回はその作戦で行こうよ。
(担当4)さんの言った、「早い段階で」というのは
なにかいい手がある?
担当3 :これも自動化できないかなぁ
担当4 :それよりも、デグレードを防ぐにはレビューを
充実させたらどう?
↓
●技術的検討が始まる●
■理想通りには
ま、理想通りに行くわけではないですが、
目標にフォーカスする
と、
「どうやったら」
という議論になります。これは前向きな話なので、みんな議論に入ってきやすいですが、「なぜ」「どうして」というと、過去の話をほじくり返すことになるので、当人にとっては傷口に塩を塗りこまれる感じは避けられません。
よほどこういう場面に慣れたファシリテーターなら出来るかもしれませんが、普通のサラリーマンには結構難しいです。
なので、「事実は事実」としてさっさと未来に向かって行動を始めてしまったほうが建設的になれます。