2020年06月15日

昇進面接質問のブレークダウン





本日は昇進・昇格面談を控えた人に向けた使ってほしい実績アピールの技術について。




■前振り


ウチの会社では6月〜7月が昇進・昇格のための面接試験の季節です。
最近、TOIEC試験も義務化されたため、「今の若い人はたいへんだなぁ」と思わざるを得ません。

なにしろ、英語も勉強しなくちゃいけないし、その上面接でどのようなことがきかれるのか、どうやったらうまく受け答えできるのかも学ばなければなりません。
新卒で採用される時や転職における面接技術というのは本もいっぱい出てますけど、昇進・昇格面接の技術というのは、あまり見かけませんね(私が知らないだけかも)。

でも、人生に1回か2回しかない面接と、数年に1回ある面接なら後者のほうが「もっと大切にされてもいいなぁ」と思ってしまう。
上司との面接(普通は「面談」というのかも)なら、だいたい年間4回(半年ごとに目標面談、実績面談が各2回)あるのに、それほどこのやり方に関して情報が少ない。
Amazonで検索しても、上司との評価面談をうまく乗り切る技術というのはあまり書籍もありませんね(これも探しようが悪いだけかも)。

昇進・昇格面接も基本的には転職面接と同じなのですが、だいたいこんな流れで話がされます。

 ◇自己紹介
 ◇入社後の職務履歴
 ◇最近数年間の実績
 ◇質疑応答
 ◇今後の展望

この質問で面接官としてよくする質問の仕方なのですが、

 「あなたが考える『リーダーシップ』とはどういったものですか」
 ⇒「『リーダーシップ』とは〜〜〜〜〜だと考えます」
 「では、そのポリシーにもとづいて、あなたがとった行動の具体事例を聞かせてください」
 ⇒「え!?、…………」




■あなたが考える『×××』とは?


この×××にはなんでも当てはまります。例えば、前出の「リーダーシップ」。他によく出す質問は

 ・会社に対する貢献
 ・仕事の品質
 ・コミュニケーション
 ・仕事の能力
 ・グローバル化
 ・部下育成
 ・情報共有
 ・見える化

など。私が良くする質問もだいたいこのくらいから、思いつきで適当に選んでます。

実は面接官としては、この質問に対する答えはどうでもいいのです。
その答えが、世の中一般に通用するものなのか、あるいは会社内ではまぁそこそこなのか、あるいは全く論外レベルなのかは、評価してません。もしかして「論外レベル」だったら、「もういいや」になるかもしれませんが。

聞きたいのはその後。

つまり、何をポリシーにしていて、その

 ポリシーにもとづいてどのような行動をとっているか

が聞きたいところ。

ところが、最初の質問に引っかかって、ビジネス書で読んだような格好いい答えを言ってしまうと、その次が続きません。
たとえば、「リーダーシップとは」ときかれて、

  組織の使命を考え抜き、それを目に見えるかたちで確立すること
  ※プロフェッショナルの条件(P185)より

などと答えてしまうと、

  「じゃぁ、あなたの組織の使命は何で、あなたがそれに対してどのようにみえる形で確立していますか?」
  「とっている行動はなんですか?」

と言われた時に、答えに窮するわけです。

この時面接官は内心

 「お前は、どこぞのコンサルか評論家かよ…」

と思ってます。

■自分のポリシーを作る


昇進・昇格するというのは、その組織において、相対的に「他人を指導する」という立場に移動するという意味です。
もちろん、給料も上がりますが。

そういった対象者には、すべからく「組織の視点」「リーダの視点」が問われます。
これは、「ポリシーやルールを作り、それを順守する(させる)力があるか」を評価することにほかなりません。

当然、仕事の効率や成果も問われますが、この「自分の基準」がない人は昇進できません(少なくとも私の会社では)。
おそらく、人間を何十年もやっていれば、大概の人が「基準」をもってますが、これが「表現できるレベルにないといけない」という事です。

あなたは、上の項目「貢献」、「品質」などについて自分の「ポリシー/基準」が言えますか?
もし言えないようなら、短い言葉で言い換えられるように、ノートに書き出して、それを何度も見ておいてください。

仕事をする上でも損にはなりませんよ。




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posted by 管理人 at 07:18| Comment(2) | TrackBack(0) | 面接技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
先日、課長登用試験を不合格通知を受けへこんでいるものです
不足していた能力、認識についてネットで調べていたところ、たまたま本ブログにたどり着きました。非常に面白い記事を書かれていると思いました。面白い点として
1.評価する側のポイントがよく分かる
2.自信の認識不測が改めて認識できる
です。見つけようとしてもなかなかこのような記事が無いと思います

いきなりで申し訳ないのですが、可能であれば本ブログにある
■あなたが考える『×××』とは? の
・会社に対する貢献
・情報共有
に関して、具体的に何を人事側は何を確認したいのか、意見を聞かせて(ブログを書いて)いただけませんでしょうか?

私は技術系の職種であり、お客様へシステムを構築し、納入する担当をしています。先日の面接で「会社としてどのようにすれば売り上げをさらに増加し、事業計画の売り上げ目標を達成するのか」との問いに対して、システム構築作業中にお客様から新たな要望を聞きだし、新たな受注に結びつける取り組みをしており、本取り組みを社内へ展開する旨の回答をしましたが、

「もう既に他の部署でもやってるよね!?」

という面接官からの突っ込みがあり、理解していただけませんでした。不合格面接結果のフィードバックを聞いたところ、会社全体としての視野が狭いという理由でしたので、おそらくこのあたりの回答内容や会社全体から見た視点の認識が不足していたと考えています

私の感覚では、誰もやっていない新たな取り組みを説明し、情報共有等をして会社全体への売り上げ向上を説明する必要があるなら、500人中、数人しか合格しないと思いました(今回は500人ほど受験したそうです)。

なのでそれはありえない話だと思っていて、何を聞きたいのか、どのような認識を持っているべきなのか、教えていただければ幸いです。勝手なことばかり記載してしまい申し訳ございません
Posted by うつぼ at 2014年02月01日 10:34
ご質問、ありがとうございます。

たぶん、質問者の意図は、質問したことに対して、いま部門でやっていることを説明して欲しいわけではなく、うつぼ様がどのように考えているかを知りたかったのではないでしょうか。

もし私が同様の質問を面接官としてするのであれば、まず、以下の点をどのように理解しているかを聞き出したいと思って質問します。

 ・会社として、どのようなコアコンピタンスを持っているのか
 ・そのコアコンピタンスを自分の部門がどのように担っているのか
 ・「売上を更に増加する」と言うのはどういう意味なのか
 ・今の自部門のコアコンピタンスが、その「売上増加」とどのような関連性を持っているのか

その上で、面接を受ける人が

 ・その関連性をどう使って(あるいは強化して)行きたいと思っているのか
 ・それをどのように行動しているか

ということを聞こうとすると思います。

決して、「新しいビジネスモデルを目の前で構築してみせろ」という意図があったわけではないと思います。

■面接官と同じ目線で
通常、面接というと、面接官は2段階上くらいの人がやることになりますので、その人の視点で見た時に会社がどう見えているかを話さないといけません。

これはすごく難しいと思います。
だって、社長をしたことがない人に、「社長として会社をどうしたいか」を聞いてもわかるわけ無いですよね。

でも、面接では、

 この人(面接を受ける人)と自分(面接官)で、会社のことを議論できるかどうか

が最も単純な合否基準です。

そのとき、議論のベースになるものが、

 【戦略マップ】
 ※参考
 ※ http://www.itmedia.co.jp/im/articles/0509/27/news123.html

というものです。

「戦略マップ」そのものを作っていなくても、どの会社にも同じような思想、というか利益につながるようなストーリー(これを「戦略」と呼んでます)があるはずです。
面接官はおそらく、これを思い浮かべながら質問しますので、面接を受ける人も、これを思い浮かべながら、話をしないと、議論にならないわけです。

その上で、自分の直接の部下になった時に、「この考え(ビジネスプラン、売上増大プラン)は正しいだろうか?」と相談できる人を求めています。
その時答えてほしいのは、「今、現場で起きていることは、この仮説を証明するものです」といった、現場を知った上で、上司の言葉を解釈できることが望まれるのではないでしょうか。

そういう意味で、うつぼ様がされた答えは、単に「上司の戦略(あるいはお題目、または戦術)をトレースしただけ」に、聞こえたのではないかと思います。当然、うつぼ様の上司が示している部門戦略は、この戦略マップの一部でしかないわけです。
なので、「全社的視点が〜」とコメントされたのではないでしょうか。


■解答例
うつぼ様が置かれた会社の状況がよくわからないので、外している可能性が大きいのですが、私がもし面接官からおなじ質問をされたら、下記のように答えると思います(読み返すとちょっと例が悪そうなのですが、いいものが思いつかないのでこのまま掲載します)。

 我が社のコアコンピタンスは「お客様との密接な関係とフォローアップ」にあります。
 私の部門は、お客様に直接接する事ができる部門ですので、システム構築中にお客様とお話する中で、お客様の持ってみえる課題をより深く理解し、そのソリューションを展開する製品ラインナップの充実をして行きたいと思います。
 
 具体的には、先日、お客様が××××のようなところでお困りのようでした。
 これは表面的には、ウチが提供しているシステムの範囲外なのですが、■■を××すると、この業務は不要になります。つまりお客様の課題自体をなくすることができる可能性を持っていると思います。
 同じような問題は、▲社も▽社もありそうです。

 私は、■■の機能を××に対応しやすく改造し、パラメータ変更で××××にもなるようにしたいと考えています。

とか。

■解説
「売上増」という言葉を分解すると、売上増につながるのは

 ・新規顧客の開拓
 ・既存顧客の費用(支払金額)増

の2つのいずれか、または両方が必要ですね。
それが戦略マップの一番上に来ます。

そのどちらに軸足を置くべきかは、市場の状況(拡大中なら前者、縮小中なら後者)で戦略目標を定めて、それを実現するためには、前者なら新規顧客開拓に必要なのは、「ハデな売り文句になる機能」だったり、「カスタマイズ性の向上」だったりするわけです。

うつぼ様の会社ではおそらく、後者が軸足に採用されてますね。つまり既存顧客をしっかり囲い込み、より多くの発注をもらう、という方針ではないでしょうか。

それが、私の解答例で示した第1段落に相当します。

うつぼ様が書かれた内容と違うのは、

  会社→部門→自分

を段階を追って分解していることと、第2段落で、面接官が知らない現実の世界をこの方針にそって具体化しているところです。
もちろん、具体的なことについては面接中に話されたかもしれませんが、面接結果のコメントを拝見するに、上側(より大きな戦略)への言及がなかったのではないかと拝察します。


■意図を噛み砕く
つまり、「上の意図」を噛み砕いて、「下に展開」する能力があるよ、とアピールすると好印象だったのではないかと思います。
※あくまでも、「指示(明文化されたもの)」ではなく「意図(明文化するときに考えていたこと)」です。

ちょっと解答例がイマイチで申し訳ありません。
また、いい回答方法があれば、記事に書こうと思います。

よろしくお願いします。
Posted by 管理人 at 2014年02月02日 10:05
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