2021年03月15日

成功の理由を問う





ようやく昇進・昇格面接も一段落しました。
今年の面接でも気になった点をちょっとだけ。




■面接官が聞きたい事の本質


面接時には、最近の業務上の課題とその成果を報告してもらい、それについてちょっと突っ込んだ質問をします。
たとえば、

 ・その課題をやるにあたって、あなたが最初にしたことはなんですか?
 ・その課題に対して、あなたはどのような方針でどのように解決しようと考えましたが?
 ・その課題の背景を説明してください

大体この3つを聞けばその人の能力は見えてきます。

面接官はその人の能力を測りたいわけで、過去の成果が聞きたいわけではありません。

じゃぁどうやって能力を測るかというと、「成果の再現能力」を見るわけです。
つまり、過去にやった課題で、その人がどのような考えに基づいて、どのような行動力を発揮したかを聞けば、今後も同様に困難にぶつかった時に、自分で考えて自分で行動できるのかがわかる、というものです。これを「コンピテンシー」と言います。



■最初の行動


第1の質問「あなたが最初にしたこと」というのは、課題に対してその人がとった具体的な行動を聞いています。
これを聞くのは、その課題を自分が考えて自分がゴールに持っていくような考え方と行動によって成果を「その人のおかげで」出すことができたかどうかを確認するためです。

時々、「×××をやってお客様迷惑率を半減しました」みたいな答えを言う人がいますが、実際にはそれは部門が出した成果であって、その人がいてもいなくても変わらないような場合があります。おそらく上司から、「こういうことを言うと面接官に成果がアピールできる」とか言い含められてきたのでしょう。

そういう人は、最初にとった行動が思い出せません。
理由は簡単、「誰に言われてやったことだから」。

淡々とやっていればいい業務を淡々とやった結果、目標が達成できたとか、上司に言われるまま行動した結果目標達成をしたという場合には、実は記憶が殆ど無いんですよ。人間の頭は「無意味なこと」というのを覚えて置けるほど容量がないんですね。
逆に、無理難題を言われて、必死に考えて、試行錯誤をしながらやったことというのは、細部まで鮮明に覚えています。

もし、これに「はい。クレームの多かったお客様のトップ10を抽出し、そこに戸別訪問しました」などと答えられれば次の質問に進めます。




■方針と方策


第2の質問は「方針と方策」。
要するに、課題に対応するにあたり、どの程度先を見越して、どのようなリスクマネジメントをしたかを聞いています。
当然部門における課題というのは、1日で答えが出るようなものはありません。何ヶ月も少しづつ積み重ねて行く必要があるわけです。
その時に、いきあたりばったりに遭遇したことに対して「リアクション」をしている人は、成果につながったのは単なる偶然です。
全体の流れを見て、その流れの中で現在どこにいるのか、どのようにしたら自分の思い描くゴールに向かって最短距離を進めるのかを常に考えていないと、成果は出ません。

なので、一定の方針に基づいて、常に判断をしていないといけないわけです。
そして、起きる出来事、入ってくる情報に対して具体的な対応を取っていくわけです。それが方策

戦略と戦術と言い換えてもいいかも。

■背景を推察する


大体の場合、課題は上司から部下(面接者)に対して出されます。
その時上司が、「なぜこの課題をやる必要があるのか」を説明するのですが、多くの場合部下は聞いてません。
すぐにどうやってやるのかに気持ちが行ってしまっているからです。まぁ、上司の説明不足というのも大いにありますが。

そういう時に、「どの程度背景を推察できるか」が部下としての能力のひとつです。
これができないと、上司のおもっているゴールと部下が思ったゴールというのがものの見事に別物になります。

で、出来上がった時に、上司から「いや、こんなものが欲しかったんじゃない」と言われてやり直しになる。
まあ、それが半日で作れるようなものであれば、やり直しても対して影響はありませんが(無駄には成りますが)、半年もかかってやるべき仕事だったら、半年間その人は無駄メシをしてたことになります。


■なぜですか?


これらの質問は、別に考えるまでもなく、よどみなく答えられれば、次の質問に進めます。
この段階で引っかかってしまう人は、もはやそれ以上質問するもありません。

次の質問は、なぜですか?です。

これがちゃんと答えられれば、ようやく合格ラインに近づいてきます。

それぞれの3つ質問がありますが、次に聞くのはこのたった一言です。

 ・なぜそのような行動をとったのか
 ・なぜその方針が適切なのか
 ・なぜその背景が生じたのか

それが理解できていなければ、その人には昇進・昇格するだけのコンピテンシーはありません。

ようは、ある行動をするのに、カン・経験・度胸で渡り歩いている人は、運がいい人です。
昇進・昇格すれば、それだけ会社の業績に対する影響度が大きくなります。今まで運がいいだけでやってきた人に、会社の将来、ひいては自分の将来を預けるのはちょっと恐ろしいですね。

なので、理詰めでそれを考えて、それを行動に移せる人だけを上に上げたいと思います。
もちろん、カン・経験・度胸も必要ですが、それだけではダメで、まず最初に「理由」が必要だということです。

理由にも深みが必要です。

表面的な現象だけを考えて対応をとったか、根本原因まで掘り下げて対応をとったかは、この質問に対しての答えでわかります。
非常に単純に言えば、「ここで長々と理由を説明できる」人ほど、深く掘り下げられています。
因果関係が複雑なので、かなり喋らないと説明ができないんですね。その結果、「なぜ?」という短い質問に対して、非常に長い時間かけて説明をしてくれるわけです。

内容が正しいかどうかは、正直面接官ではわかりません。

 ・理路整然としているか
 ・自分の経験に照らして、その理由付けは正当と思えるか

で判断します。

ここが出来れば合格です。
ただし、5点満点中3点(まぁギリギリセーフ)といったところ。

■あなたのチャレンジがうまく行った理由はなんですか?


で最後に聞くのがこれ。

何事にも、ターニングポイントというのがあります。
これをちゃんと見極められているかがその人能力の高さを示しています。

つまり、これは、物事の流れが見えてないと答えられません。
たとえ答えても、「そりゃないだろう」てきなポイントしか答えられません。

以前の記事

 1.蟻の目 ミクロの視点
 2.鳥の目 マクロの視点
 3.魚の目 フローの視点

っていう物の見方をご紹介しました。

面接官はこの3つを順番に聞いていくわけですね。
どの「目」がどの質問に対応するかは、わざわざ書きませんが。

これがちゃんと答えられれば、5点満点で合格です。

ちなみに、管理職になる時は、この程度の質問はちゃんと答えられて当たり前です。
これにさらに、「経営視点」での自らの発動を質問します。

ようは、誰かに言われて業務をするのではなく、自ら「経営的な視点」で課題を発見し、その課題に対して上記3つの目を使いこなしながら、成果を出していくことが必要なんですね。
これに答えられるかどうかが、管理職になれるかどうかの境目でしょう。




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