この本のコンセプトを一言で言えば、
情報は整理するものではなくて、活用するものである
という感じでしょうか。
本書は、様々な情報術の本に対して差別化を意識していて、本書以外が情報をどう扱うかという基本的な作業方法を中心に説明されれいるのに対して、ゴール(情報を活用して成果を出すこと)からみて、情報をどの様に取り扱うべきかを論じています。
◆情報の整理術
その中でちょっと異色なのは、「メモはとる必要がない」と明言していること。他にも同様の論旨を展開している本はあるが、本書はメモを取らない代わりに、
頭なの中に引き出しを用意して、そこに分類・整理する
ということを薦めています。
これに関しては、一部賛成一部反対といったところ。
一部賛成の部分は、情報はメモをしておいても、所詮はそれがもう一度頭の中に入らなければ、活用はできません。これはまったく本書に書かれている通り。
いくら素晴らしいメモがあっても、単なる外部記憶にあるたくさんのデータの中の一部にすぎません。使わないのであれば、ないのと同じ。不要なのであれば捨ててしまうのが一番です。
一部反対は、その情報にもう一度巡り合える機会という点。
頭の中で考えだしたことならば、また、何かのトリガああれば再現できる場合もありますが、トリガが必要。一度頭の中に入れたからといって、それがそのままの状態で残るわけではなく、時間とともに曖昧になっていきます。その結果、正確に思い出すことができなくなるのでメモやデータは必要で、その都度取っておく必要がある、とおもいます。
ただ、問題は最初に書いたように、課題に取り組んだ時に、如何にそのメモや情報にたどり着くかという方法。
その方策として、筆者は「引き出し」という方式を提案している。
簡単に説明すれば、要は大雑把な分類(タグ)をつけておくこと。それによって情報が芋づる式に取り出せるようにすればいい。人間の脳は連想に優れており、一定のパターンさえあれば、過去に記憶したことが引き出せる、というもの。
これを電子情報上でやれるようにしたのが、Gmailなどに実装されている「タグ」と言う機能ではないでしょうか。何かのキーワードで、分類するのではなく情報を付加する事によって、検索や連想がしやすくするための仕組みと考えています。
◆情報の収集術
情報収集については、基本的には他の本で紹介されているものと大した違いはありません。
ただ、本書は1次情報とそれ以外を強調している点がちょっと異なる。
すなわち、1次情報は事実だが、2次情報以降はそれを伝えた人のフィルタがかかっている点に着目をしています。
2次情報はそれを伝えた人のフィルタがかかっている、と言うことは、それを伝えた人がどの様な点に興味がある、という部分を知るための情報として考えることだと書かれています。
■要約
◆課題
この情報過多の時代にあって、情報の活用方法を提案したい。
ただ、情報の収集方法に関しては多くの書籍が出ているので、これを繰り返すつもりはない。本書では、情報をどの様に利用して、どの様に成果に結びつけるのかについてお話ししたい。
●解決策
現代は情報をもって、その情報を他人に出していく技術では、ライバルとの差は出ない。なぜなら、情報はそれを探すだけなら非常にコストが安くなり、ほぼだれでも同様の情報を集めることができるようになってしまった。
ここで差がつくのは、その情報をどの様に加工して、どのような成果に結びつけるような活動をしたかである。活動内容は、読者の務めている会社や環境によって異なるので、情報をどうやって組み合わせ、「スパーク」させられるかを説明する。
●目次
第 1 章「情報整理」では差がつかない時代
第 2 章大事なのは量ではなく「質」
第 3 章情報を最大限に活かすための「20の引き出し」
第 4 章デジタルとアナ口グを使い分ける
第 5 章私の情報源ーメディア、仕事、日常からどう情報を得るか?
●要約
かつては、情報をたくさん持っている人が重宝がられて、成績をあげていた。しかし、インターネットが発達し、あらゆる情報が簡単に手に入るようになった現代では収集や整理の力だけでは、評価をしてもらえなくなった。
人より抜きん出るためには、情報をアウトプットにつなげていく力が必要である。
情報活用には3つの目的がある。
・意思決定の助けとするもの
・アイディアの元とするもの
・コミュニケーションの手段
それぞれに対して、どの様な情報をどうやってあつめ、蓄積するのか、そしてそれが活用できるようにしていくのかが重要である。
また、情報は人と同じ情報を得ても差別化はできない。大切なのは1次情報。ただ、すべての1次情報をにゅうすることができないので、2次情報、3次情報も活用せねばならない。この時に、2次以降の情報はそれを伝えた人の意志が入っている、ということに注意が必要である。
情報を蓄積するのに膨大なメモを残す必要はない。忘れてしまう情報は所詮その程度の情報なのだ。ただ、忘れないような工夫も必要である。私(筆者)は、頭に引き出しを設けて、それに情報をしまう、というイメージをして覚えるようにしている。
引き出しにはラベリングしてあり、それぞれ自分の興味のある分野ごとに分けている。人間はある連想であれば、その情報は覚えておけるものだ。
20くらいの分野に分けて、それぞれをラベリングして記憶しておくと良い。
情報源は、新聞、本、ネットなどがあるが、「紙メディア」にこだわりたい。ネットの情報は著しく歪んでいる場合が多いからだ。
テレビという情報源も無視はできない。ドキュメンタリー番組からは学ぶことも多い。
情報のなかで1次情報が最も大切と述べたが、仕事の現場というのは1次情報の宝庫である。そこには膨大な情報がある。それを仮設によってフィルタリングし、情報を取捨選択するのだ
最も重要な情報源は、「人」である。専門家とのコンタクトも現代では非常に取りやすくなっている。こういった人との関係なくしては、情報を加工することはできない。
また、日常からつねに情報を集めるアンテナを高くしておこう。それを20の引き出しに整理して、情報導師をスパークさせるのだ。それが、あなたのアウトプットにつながる。
●著者 内田和成
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■■キーポイント
★P50−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−◇ 本書で私が伝えたいこと
ここまで、できるビジネスパーソンになるための現代版「知的生産術」の基本について語ってきた。簡単に言えば、
@情報化時代には情報収集と整理方法(インプット)では差がつきにくい。そのため出口すなわちアウトプットで勝負することがカギとなる。
A情報活用の「目的」を明確にすることで必要な情報とその収集方法が決まってくる。
B自分の「立ち位置(ポジション)」を理解する。それによって求められる役割も違ってくるし、必要な晴報や活用方法も違ってくる。
Cそれらを理解したヒで、自分の「期待役割」、すなわち自分の得意技を身につけ、自分の勝ちパターンを築いていく。
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本編で改めて述べるが、多くの人は「仕事」と[作業」を混同しがちだ。「ある目的を達成すること」が仕事であり、「その目的を達成するための手段」が作業である。当然、ビジネスパーソンにより求められているのは「仕事」である。
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もちろん、実は A ・ B ・ C では不十分で、新たな選択肢を検討しなくてはいけない場合もある。だが、ここまで十分検討してきた最後の段階で、いきなり D を持ち出すような上司はリーダー失格である。しかし、世の中にはこういう上司が多いのが現実。途中で余計な口を出しては現場を混乱させる。下の立場の人間からすれば、それなら最初から選択肢に加えておいてくれ、という話である。
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かつては読書カードなどに自分の気に入った箇所を書き写して、あとで活用できるようにしていたこともある。しかし、こうしたやり方は前述のように、努力のわりに活用の機会と効果が少なすぎてある時期よりすっばりやめてしまった。
こんなことではあとで忘れてしまうのではないか、と思われそうだが、確かにその懸念はある。だが、忘れてしまったような情報はそもそも重要ではなかったと言えるわけだし、正碩には覚えていなくても、どの本に書いてあったかくらいは意外と覚えているもの。それさえわかれば、あとはこうした印や付菱をたどっていけばいいわけだ。
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特に、私がよく観るドキュメンタリー番組、たとえば、 「カンブリア宮殿」や「ガイアの夜明け」といった番組では、その傾向が強い。これらの番組は、ある一人の人物ないしは」つの企業に焦点を当てて紹介する、というものだが、なるべくその人の人となりや経営の仕方、リーダーシップ、あるいはその商品開発のプロセスなどを理解しようという目的で観ることが多いのだ。
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大きく分ければ、二つのパターンがあるだろう。一つは、まず仮説を立てて、それにしたがって情報を読み解いていくというアブローチ。つまり、「ここに問題があるのではないか」という仮説を事前に立てて、それが正しいかどうかというスタンスで、情報を読み込んでいく。そこにもし、求めている情報がなければ、「こういった情報はありませんか?」と担当者に聞いてみる。コンサルタントにとっては王道のアプローチとも言えるだろう。
そしてもう一つが、「異常値」あるいは「例外」を見っけようとするアプローチである。私は仮説を立てて本筋から攻めるのも得意だが、一方でこうした人とは違うアプローチも大好きだ。異常値とは、「これはちょっと、普通の会社と違うな」とか、「常識と違うな」「ここはどうもよくわからないな」といったもののこと。具体的には、同業他社に比べてある部門の人数が極端に少ないとか、ある経費が飛びぬけて多いといったことである。
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実際、これは私が日ごろやっていることとそっくりだ。私は電車での通勤時は、絶好の情報収集の場だと考えている。電車内の広告だったり、駅のポスターだったり、人の流れだったり、何かにつながりそうなヒントは山ほどある。
私の場合は観察に加えて、デジカメで写真を撮ったりもする。
後藤氏の話に戻ると、氏に言わせれば電車の中で観察をしないで携帯をいじり、会社に着いて初めて「今日は消費者のことを調べるぞ」などという社員には、絶対に消費者のことがわかるわけがないそうだ。
花王の社員に対しても、このことは言っているとのことだ。全く同感である。携帯やパソコンの画面をじーっと眺めていて、ビジ不スや商品のアイデアが浮かぶほど世の中甘くはない。
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