たとえば、昨日一番頑張ったことは何でしょうか?
それに見合う結果が出ましたか?
普通、サラリーマンをしていると、短期的に成果が出るものは多くありません。また、営業職でもない限り、具体的な成果として数値が上がるものでもありません。
なので、時々話をしていて「あ、この人、成果について考えてないな」と感じる時があります。
そういう人は多くの場合、「真面目ないい人」なんですよ。
どういう時に気がつくかというと、「『なんでもすごく一生懸命』やる」という行動をしている場合です。
すごく一生懸命やっているのはわかるのですが、それが「頑張る」ことが目標になっていて、下手をすると、頑張っている自分に陶酔してる。
いや、別に「頑張ってはいけない」とは言いませんが、どこにポイントがあって、どこは大した影響はないかがよくわかってないので、残念〜とか思っちゃいます。
■努力は美しいと思ってないか?
子供の頃から、私達は努力する姿を褒め称えるシーンによく出会ってきました。今の学校はよく知りませんが、私の頃には、校門の近くに二宮金次郎像がおいてありました。あの薪を担いで歩きながら本を読んでいる金次郎像です。
これをさして先生が「二宮金次郎は、お金がなかったので、働きながら勉強をして………」と話してもらって、子供心に「頑張らないといけないんだなぁ」などと思ってました。
昔NHKでやっていた「プロジェクトX(エックス)」でも、黒部ダムを作ったり、ウォークマンを作ったり、南極観測船を送ったり、どれだけの人がどれだけ必死になってやったのかが描かれています
それを見て
努力することが大切なんだ
なんて判断しちゃうのは、「おいおい…(^^;;」と思うのですが。
こういう刷り込みを受けていると、「会社のために夜遅くまで頑張る」とか「家に帰っても、仕事をする」なんてことを自分に許しちゃいます。それをやっている自分に酔っちゃうんですね。
■努力と結果は比例しない
プロジェクトXなんかだと、過去の話ですし、割と冷静かつ客観的に見ているので、「そこがポイントだったのね」と判断できるのでしょうが、もし自分が今現在渦中にいるプロジェクトがあれば、冷静には判断できないでしょうね。「自分の担当部分が遅れて、プロジェクト全体に遅れが発生したら、関係者に迷惑がかかる」
と考えて、スケジュール通り、あるいは前倒ししてやろうとするでしょう。それこそ、寝る時間を削ってでも。
以前の自分がそうだったので、思い当たるフシがあるかたが、この記事を読んで見える方にも見えるでしょうし、自覚がない人もみえるかもしれません。
あなたのやっているタスクが、もしクリティカルパスにないものだったら、遅れても何の問題も起きません。
あなたのやっているタスクが、品質に直接影響を及ぼさないクリティカル機能でなければ、多少バグがあっても、大した問題にはなりません。
以前に液晶パネルの工場の人に伺ったことがありますが、ほんの5年ほど前まで、日本向けの液晶パネルは、ドット落ち(液晶が制御に反応しない画点)が3個以内。日本向け以外は、10個以内だったそうです。そのために日本向けだけ人間による特別判定の工程があって、さらにそのモレを防ぐために、もう一度判定をし、さらに抜き取りで再度検査してていたそうです。
ところが、あるときからやめたそうです(経営判断)。
結果は、何も変わらなかったそうです。売上も、クレームも同じ。
頑張った甲斐がないとはこのことですね。
■パレートの法則
聞いたことはあるとは思います。品質管理などで、パレート図というのを使いますよね。あれです。
日本でこれが使われるようになったのは、戦後日本に品質管理を教えたデミング博士。
アメリカでは鳴かず飛ばずだったデミング博士が日本に来て、この品質管理を布教しました。結果それまで、「安かろう悪かろう」だった日本の製品は、本場のアメリカよりも向上し、「日本製=品質がいい」とイメージされるまでになりました。
ちなみに、そのおかげで、デミング博士はアメリカ帰国後、引っ張りだこになったそうです。
簡単にいえば、
全体の大部分は、全体を構成する要素のほんの一部から生み出される
というもの。「80対20の法則」などとも呼ばれますね。
で、品質管理では、問題点の全体からその頻度を測り、最も品質に影響を及ぼしているものに集中的に資源を透過して対策すれば、全体の品質が良くなると教えられます。これを視覚化したのがパレート図です。
なぜそうなるかは、システム思考的な言葉を使うと自己強化ループが回るためなのですが、まぁ、利用する側としては、そんなことはどうでもよくて、
成果の8割は、あなたの努力の2割から生み出されている
と理解すれば簡単。
つまり、努力の8割は、結果にほとんど影響してない、ということ。
■次回につづく
というところで、前置きだけで、いつもの長さが尽きてしまいました。続きは明日。
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