年度の下期が始まりましたね。
下期の目標を決めて上司と面談されている方も多いことでしょう。
ウチの会社では、管理職になると、上司との面談は1年に2回、年度末の成果報告と、年度初めの目標面接のですが、一般職は半期ごとに目標面接、成果面接があります。
この他に短い評価結果面談があり、それぞれの半期の成果に関して最終決済のおりた本人の評価結果を上司から部下に報告する面接があります。私の場合は、面倒くさいので、次の期の目標面接の時に一緒にやっちゃいますが。
■目標決め方
MBO(MBO:Management by Objectives)管理が実施されている会社では、この目標面接、成果面接は必須のものですね。
でも、結構目標の決め方がうまくない人がおおい。
本日は面接の目標の決め方について、ちょっとしたコツを。
※これはもしかしたら、ウチの会社だけの問題かもしれませんが。
■残念な目標
まず、ちょっと残念な目標の決め方の例
下期目標 ××プロジェクトの遂行
目標値 スケジュール順守、遵守率100%
内容 ××プロジェクトにおいて、12月生産開始時に、△△設備の工場への納品完了
MBOでは必ず「目標値」すなわち、「何を」「いつまでに」「どのくらい」が求められます。
したがって、これを決めないといけないのですが、生産開始が12月だとすると、設備の製作やら納入、試験稼働やらで1〜2ヶ月はかかります。つまり、現時点で自分がやれること(その設備の設計・製作)の結果がわかっている状態です。これは目標にはなりません。
しかしながら、工場に納品するためには、運送業者の問題、工場の受け入れ体制の問題があるので、上記のように、設計・制作が完了しても、1〜2ヶ月は時間が必用なわけです。
ところが、これは自分ではどうしようもないものです。
つまり、極端な例で言えば、運送業者がストでも打った日には、この目標は達成できなくなります。
そうすると、次の成果面接の時に
目標は達成できなかったけど、私のせいじゃありません
といわざるを得ない状態になるわけです。
つまり、目標を決めるときに、結果が考えられていない場合が多いんですね。
これは、「仕事の性質」を考えて見ればわかることで、仕事と言うのは、「誰かから自分へボールが渡される」「自分に渡されたボールを加工して次の人に渡す」ということをすることなんですね。
つまり、少なくとも自分の前に一人、自分のあとに一人の相手があって、その相手次第で結果が変わるということ。
これを組み合わせで見てみると
ちゃんと計画通り、目標通りやった ○
計画、目標のいずれか、または両方やれなかった ×
と表すと
1 2 3 4 5 6 7 8
前の人 ○ × ○ × ○ × ○ ×
自分 ○ ○ × × ○ ○ × ×
次の人 ○ ○ ○ ○ × × × ×
の8通りの組み合わせがあるわけですね。
この内、最初のようにちゃんと目標通りのプロジェクト全体に影響しない結果を出すためには、1のパターンしかなくて、それ以外のパターンは何らかの悪い影響を出しちゃうんですね。
つまり、成功確率はたったの1/8
そら、無理だわな、と思いません?
ちなみに、この組み合わせ表による成功確率、前の人や次の人が増えると2のべき乗で分母が増えますが、分子は永久に1のままです。
プロジェクトマネジメントが難しいわけですね。
でも、自分の目標に他人の成果も組み込んでしまうと、いくら自分が予定通りきちんとやっても、他人がそれを台無しにしてくれることがあります。
■成果に焦点を合わせる
このセリフはドラッガー大先生のもの。
そりゃそうですよね。会社としては、その会社で作ったものやサービスが顧客に届いて、顧客がそれに対して対価を払ってくれた時にだけ儲けがでます。製品を作っておきながら、「こんなものいらん」と突き返されてしまえば、1円も儲かりません(逆にそれを作る労力分損になります)。
だから、「マネジメント(会社を指導する人)は、成果に目標を置きなさい」と言うのはまったく至極当然なのですが、イチ従業員がそこに目標を置くと、他人の責任までひっかぶることになります。
ところが、今の人たちはすごくまじめにこういったことを勉強しているので、「利益が出なければ成果ではない」という考え方に洗脳されてしまっていて、すごく立派な目標を立ててくれます。これは管理職としてはすごくありがたいのですが、「お前、本当にやれるの?」と聞きたくなります。
もし運送業者がストを起こしたら、自分で担いで工場まで持って行くんだよね?
という意味です。「できるわけ無いだろ」と思いません?
できないものを目標にしても意味が無いわけです。
じゃぁ、どうすればいいのかというと
あなたが管理できる範囲の成果に焦点を合わせる
ことです。
それより広範囲な仕事は上司やプロジェクトリーダーの仕事です。あなたの知ったことではありません。
だから、
目標 ××プロジェクトの△△設備設計
目標値 設計図面リリース、工数順守100%
内容 ××プロジェクト(12月生産)で、△△の設計工数を目標値120時間内に仕上げて図面リリースする
ならあなたの目標になります。
つまり、全体の日程に間に合うかどうかは、「前の人が日程通り渡してくれて、後の人が日程通り進めてくれれば間に合いますよ」として切り捨てちゃうわけです。
■目標は最低ライン
これまた、よくある失敗例ですが、やたらとチャレンジャブルな目標を上げてくる人がいます。
目標 設計期間短縮
目標値 前モデルの1/3
内容 前モデルにおける設計工数と比較して1/3で同等品質の設計を完了させる
上司としては、「おお!、ありがと」というところですが、達成できるめどを聞くと「はい。頑張ります」みたいな返事が…。
で、期末に、
「1/3にはなりませんでしたが、頑張って5%縮まりましたので、高いチャレンジだったということを加点評価してください」
って言うハメになる。
内心、「あほか、そんなもん測定誤差だろ」と思いながら、「気持ちはわかるが、ちょっと成果としては小さすぎだよね」等と話して減点になります。
よく、「いい目標とは、ちょっとだけ背伸びをした目標」という言われ方を聞きますが、私からすると、「いいように会社や社会に踊らされてるなぁ」という感じがします。つまり会社や部門としては、現実的に達成可能な従業員の120%を使いたいわけですよ。
そうすると、結果として自分の部門は成果がでますが、会社トータルの利益という成果はでなくても、「いや、ウチの部門はちゃんとやってます」と言えるので。
それぞれの部門、上司でそういった思惑があるので、ぎりぎり背伸びした目標(というかギリギリまで働かせたいという希望)を立てさせたいのですが、「オレの都合で」とは言い難いので、「君の成長のために、ちょっと背伸びをしたところまで頑張ってほしい」とか言うわけです。
※そう言っている本人が言うのだから、多分間違いない。
そんなもの考慮する必用はありません。
プロジェクトに支障をきたさない最低ラインを狙えば問題ありません。
それが、自分の80%の力で達成できるのであれば、残り20%でなにか新しい仕事のネタでも考えたほうがよっぽど生産的です。
もし、ネタがなければ、Webサーフィンでも、内緒で読書でもしていましょう。
チャレンジャブルな目標を立てても、会社の成果(売上や利益)に影響するほどあなたは偉くありませんし、もし失敗すれば、ペナルティを喰らうだけです。
逆に、簡単な目標を立てて、それよりもっと良い成果が出たとすれば、簡単に加点評価されます。これがMBOのいいところですね。
ただし、上司に「目標が低すぎる」とダメ出しを食らっては、思惑が外れることになります。
このあたりの書き方・話し方のコツもあるのですが、長くなっちゃったのでまたの機会に。
■チャレンジ精神を大切にする会社
会社では(ウチの会社だけかもしれませんが)、「チャレンジ精神」や「イノベーション」などのかっこいいセリフを役員や社長から聞きます。でも「ウチの会社は、チャレンジ精神を大切にする」と言っておきながら、MBOを採用した時点でまゆに唾して聞いたほうがいいです。
単純に、従業員の給料を抑えるための手段だったりしますので。
※いわゆる、「裏と表」、「建前と本音」というやつですな。