時々色々な質問箱を見ていると、「仕事が覚えられない」という相談があるのを見かけます。
その人に当てはまるかどうかわからないのですが、自分がいろんな人から仕事のやり方を教えられたり、反対に仕事を教えてきたりした経験から、ちょっとだけヒントを。
■他人のレベルで自分を計らない
まず最初に意識して欲しいのは、自分のレベルが低いと勘違いしないこと。
教えてくれた人は、当然人に教えられるくらいなので、「やれる」に決まってます。
逆に自分が知らない時には、「やれない」に決まってます。
そこを1かゼロかで考えてしまうと、当然最初は「やれない」=「ゼロに近い」わけです。
教えてくれた人と同じレベルでやれるようになるためには、その人と同じだけの長さの経験の蓄積が必用です。
最初から泳げる人はいなくて、泳げる人(泳げるようになるための教え方を知っている人)から泳ぎ方を教えてもらうのでしょうけど、すぐに教えてくれた人並みに泳げるようにはならないということです。その人だって長い期間練習したり勉強してきているわけです。一足飛びにそんな状態になるわけがありません。まず水にプカプカ浮かべるだけで十分なんですよ。
「できない」というのが、昨日の自分と比較して、あるいは1年前の自分と比較しても「できなくなっている」のであれば問題ですが、現在の位置だけで判断してしまえば他人と比較するしかなくて、自分がその業務に対して経験が浅ければ、他の人よりできないのは当たり前。
仕事の出来具合をはかるためには、以前の自分との相対関係ではからないといけません。
仕事に限らずですが、初めてからまだ日も浅いのに、何年も経験してきた人と比較して自己嫌悪に陥る必用はないです。
その仕事を任せた人も、最初から前任者がやっていたスピードと品質が出せるなんて思ってません。
もし思っているとしたら、その人の考え方自体がおかしいです。
どんどんミスして思い知らせてやりましょう。
■仕事を覚える手順
ということで本題。
よくビジネス書なんかで「守破離」という言葉が出てきます。
最初は支障のやる通りにやってみる(「守」)。
それがある程度できるようになったらちょっとだけ自分の工夫を加えてみる(「破」)。
さらに自分独自のやり方を確立する(「離」)
ですね。
これを私流に勝手に翻訳すると、仕事を覚える手順と言うのは、
1.仕事のやり方を聞く
2.マニュアルを自分で作る
3.マニュアルの通りにやる(守)
4.マニュアルを見ずにやる(守)
5.工夫してやる(破)
6.独自のやり方を見つける(離)
の順番が必用だと思ってます。
この2番めと3番目が重要で、これをすっ飛ばして、いきなり5番目をやったり、6番目に行ったりすると、仕事の品質がある程度以上には向上しません。その程度が低いと「自分は仕事が覚えられない」と才能や能力の問題にしちゃう場合があるみたいです。単に「手順が間違っているだけ」という場合が、私の過去の経験的には多かったですね。
■マニュアルを作る
最初は言われたことを寸分違わずやってみることです。
そのためには、教えてくれた人の言うことを100%書き出すことです。一言一句間違いなく。
よく勘違いしている人がいるのですが、「マニュアルは教えられた側が作るもの」です。
「手順書を出してくれればやります」という若い人が時々いますが、私は絶対に書き物では渡しません。口頭で言います。
「それを文章にして自分のところに持ってこい」と指示します。
これは「コミュニケーション術」のひとつなのですが、「言ったこと」と「聞いたこと」は大概違います。人によって思考回路が違うので。
だから、「××をして、○○をするように」と言っておいたら、「今何言ったか書き出して」と要求します。それを確認すると、大体その人が理解できていることが分かります。
「ビジネス書を読んでも役に立たない」というのも同じですね。
入ってきた情報を自分で加工しない限り自分のものにはなりません。
だから、インプットされたらアウトプットしないと情報が正しく伝わったかどうかわかりません。
まず、仕事のやり方を教えてっもらったら、それを絵にして(=図解して)相手にチェックしてもらうんです。
そうすると、自分の理解があっているかどうかわかります。
あっていればそのとおりやればいいですし、あっていなければ訂正してもらえるでしょう。
注意点が一つあります。
マニュアルを作るときには、徹底的に詳細に書くことです。
誤解は細部に生まれます。間違った部品を組立てても、正しい製品はできません。
神は細部に宿る
ですよ。
■マニュアルの通りやる
そしてマニュアルの通りにやるわけです。寸分違わずに。
他の人が5分でできることを、マニュアルと突き合わせながら、かつ、そこに詳細に書き込みをしながら1時間かけてやればいいです。
その結果が間違っていたものであれば、マニュアルのどこが違っていたのかを教えてくれた人に聞きましょう。
これがない状態で、教えてくれた人に「なぜうまくいかないんでしょうか?」と聞いても、相手もわかるわけありません。
だから、マニュアルは、ペンの上げ下ろしまで詳細に書くつもりで作らないと、正確なことはわかりません。
一般的に書いてしまえば、なんとでも解釈できるシロモノが出来上がりますが、それが役に立つことはありません。たとえば、あなたの仕事は、こんなマニュアルで表現できますね。
・上司から仕事を言われる
・それをやる
・その結果を上司に報告する
こんなマニュアルでは役に立たないわけです。
■マニュアルを見なくてもできるようになる
マニュアルの通りやって、結果が依頼者の期待通りのものであれば、ようやく次の段階に進みます。
何度も繰り返しマニュアルの通りにやってみて、それを空でも言えるようになって、もうマニュアルを思い出さなくても体が自然にそのように動くまで、繰り返すことです。
昨日やった仕事を覚えるために、今日もう一度やってもいいです。何度もやればちゃんと体は覚えます。
一度だけクロールの泳ぎ方を水泳教室で習ったからといって、明日のオリンピック予選には出られません。毎日毎日泳いで体に覚えさせないとできないんです。人間なので当たり前。
マニュアルを見なくても、「できる」と言える段階になれば、もうそのマニュアルは卒業です。
この段階になれば、「自分は仕事が覚えられない」と悩むことはなくなるでしょう。
あとの段階は長くなっちゃったので「省略」です(^^;