昇進面接などで、私がする鉄板質問。
「あなたのチームの部下やメンバーの年齢構成を教えて下さい」
これは大体次のように続きます。
「年上の方にたいして指揮命令をするときにどんなことに注意していますか?」
自分の経験では意外とみなさんうまく(当たり障りなく)受け答えをする人が多いのですが、こちらの聞きたいことにはなかなかたどり着けません。
こちらの質問の意図は、被面接者の「
リーダーとしての力量」が知りたいのですが、多くの人は、
「丁寧語や敬語を使ってはなします」
「年上としてのプライドを傷つけないようにします」
というこたえ。
これは私(面接官)の意図した答えからすると20点くらいかな。
答えて欲しいのは、「どのようにして彼ら(年上の部下)に行動を起こさせるか」のルールを知っているのか、という点。
丁寧語で話したとしても、「そんなことやっても、オレの経験からうまく行かんよ」と言われてしまえば、年上の人のほうが経験は上なので、より経験の少ないあなたは反論のしようがなくなってしまいます。それでも面接者は上司・リーダーとして、この扱いにくい部下をコントロールしないといけないわけです。
■他人を支配下に置くための4原則
昇進面接を受けるような方なので、概ねリーダーや課長などの管理職になるような人です。無能なわけがありません。しかし、会社というのは、学校のようにある狭い年齢範囲で固まっているわけではなく、ベテラン(要は会社に長くいる人)やら新人やらいろいろ混ざってます。
その中から、頭ひとつ抜け出すためには、言葉は悪いですが
他の人達を支配下に置くのが必要なんですね。
通常、上長が支配権を握っているのは、人事権を持っているという要素が大きいのですが、単にそれだけでは面従腹背になる場合があります。そこで、相手を本当にちゃんと動かすためには、私は以下の要素が必要と思ってます。
★――人を動かす4原則――――――――――――――
1.業績評価者の合意
2.業務目標との整合
3.直接関係者の合意
4.ビジョンに対する納得、明確なゴールイメージ
――――――――――――――――――――――――――★
優先順位はこの順番。
一般に、ビジネス書やリーダーシップなどの研修では、「ビジョンを共有しなさい」と言われますが、過去記事(
3人の職人と墨俣城)などで何度か書いているように、平凡なサラリーマンは「ビジョンごとき」では行動は変化しません。
何が一番大事かというと、
自分の評価です。
例えば、あなたのもとに日本の首相がやってきて、「ソマリアの貧困を解決するために一緒に頑張ろう。だからあなたに一人でソマリアにいって欲しい。」と言われたとして、あなたは「よっしゃ!わかった。ちょっと会社には辞表を出して、飛行機の予約をするわ。」って言いますか?
「
貧困を解決する」というビジョンに否定する要素は殆どありません。でも、だからといって、ソマリアへ行きますか?
もちろん、そういうことをやれる人はたくさんいます。たとえ自分の命が危険にさらされても、自分の信じた道を歩いて行く力と勇気を持っている人たちです。でも、すべての人がそれができるかというと…。
いわゆる「ビジョンの共有」は、有効な人とそうでない人がいて、多くの場合、後者が結構多いと思っています。少なくとも、管理人はソマリアへ行く気はありません(自慢できることではありませんが)。
■リーダーの力量とは
この面接質問でリーダーとしての力量をどのようにはかるかというと
扱いにくい相手を動かす方法に気がついているのかということです。
最も扱いにくいのが、年上の部下や担当者なので、冒頭のような質問になります。
自分が上に行くに従って、どんどん年上の部下ができてきます。その時に、それらの人を取りまとめて、結果を出していけるのかどうかが大事なんですね。
で、気がついて欲しいのが、この「人は何によって命令に従うのか」のルール。
もちろん、これは私の経験則なので、この4原則と一致する必要はありませんが、面接を受ける人が、自分なりにどういうルールで人を動かそうとしているのかが大切です。
それがないまま、たまたま相手が「物分りの良い人」だったので、チームとしてうまく回っているのであれば、その人は別の環境に置かれた時点で、もう成果は出せなくなります。
そんな人は、
管理職になるには、まだ能力不足と判断します。
■つづく
ちょっと長くなってしまったので、私の
人を動かす4原則の説明はまた明日。
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俗に言う「次点」です。
悔しくて、自己研鑽したいためにいろいろと研鑽ツールを探していたところ、本ホームページにたどり着きました。 非常に勉強になります。
次点結果理由に関して、フィードバックがありました。アドバイスを頂けると幸いです。
【理由】「年上の部下に対するマネージメント方針に断固とした姿勢に欠ける」という事でした。
【具体例】
面接時の質問:「年上の部下が出来ればどうマネイジメントしますか。しかも優秀ではなく、愚痴の多い部下だと仮定してください」
伝えた点:目標を明確化し、重要性だけでなく必要性を理解させる。目標のみならず、プロセスも具体化し、道筋をイメージできるよう励んでいく。
面接官:「それでも愚痴を言って、仕事をしなかったら?」
→回答:「根本的な点から原因を洗い出すために面談を実施します。」
面接官:「あなたの部署の部下構成が、優秀、普通、不優秀の割合が、2:6:2の時、どういうマネイジメントを実施しますか。」
→回答:「基本的には、真中以上をピックアップしますが、下の2割もサポートはします。」
【結果】
2割の部下に退職を促す(切るという表現でした)という答えを期待していたらしいです。
「腐ったミカンをミカン箱に放置すると、周りのみかんも腐ってしまう」という事まで言われました。
面接官が初対面にも関わらず、「あなたはいい人ですね。その人柄がすばらしい」と褒めていただけたので、合格の可能性が高いと思っていましたが、結果は逆でした。
【ご教授ください】
この様な内容の質問は多いですが、この質問の更なる意図と、オーナー様が面接官であった時の、ニーズ、具体例を教えて頂けると幸いです。
コメントありがとうございます。
■質問の回答について
まず、麹さんの回答に対する私なりの所感ですが、申し訳ありませんが私もその面接の場にいたらあまり良い点はつかけなかったと思います。
理由ですが、麹さんの答えが設問の「優秀ではなく、愚痴の多い部下」に適切だとは思えないからです。もしかして麹さんはこういった部下や後輩を持たれたことがないのかも、と推察します。
もちろん、その部下のレベルにもよりますが、一般に面接でこういう聞き方をした時にはかなり極端なレベルの人を想定します。そう仮定した時に、モチベーションがない人に対して、仕事のノウハウを教えても学習はしない場合が多いです(私の経験的に)。
■面接官の期待した答えについて
しかしながら、私なら面接官の答えも肯定はしません(否定はできませんが)。
この面接官が言われた答えは、上司として最終手段だと考えるからです。
こういった部下への対応方法については、別の記事
http://sarahin.seesaa.net/article/397291029.html
で書きましたのでご参考になれば幸いです。
この記事の中にも書きましたが、「腐ったミカン〜」のたとえは確かに考慮せざるを得ません。すなわち、その人が自分の部下や部門関係者に悪影響を及ぼす場合です。この場合は、面接官の言われたような措置を取らざるをえないと思います。
ただ上記記事でも書きましたとおり、その部下が自分の部下である以上、「切る」のは自分の上司に対して自分の無能を晒すことになりますし、その部下にも生活があり、その生活は上司の評価にかかっています。そう考えると上司として「なんとかしてあげたい」と思うのも、個人的には人情ではないかと考えています。
■2:6:2の法則について
一般によく言われる法則ですが、最後の2を切ると、残りの8がまた2:6:2の比率でバラける、というのもよく言われます。つまり、その不優秀の2に対して永久に切り続けなければいけなくなって、結果として組織として成り立たなくなるリスクがあります。
※これも、面接官さんの言われる「腐ったミカン〜」を極力避けたい理由のひとつです。
したがって、もし私がこの部分に答えるとしたら、「下の2の人には非常に細かな作業レベルでの指導と直接のスケジュール管理をします。6の人にはそれぞれのレベルに応じた業務スキルの育成指導と実績追求を。一番上のレベルの人にはモチベーションアップのための自己研鑚と業務プロセス改革の推進をさせます。」と答えると思います。
これは、スキルレベルを縦軸とモチベーションを横軸として部下をプロットして、それぞれの部下に対してどういうリーダーシップが有効かを考え、相手に応じて対応方法を変えられるかがポイントなのではないでしょうか。
勘違いしている人がいるような気がするのですが(麹さんがそうだと言うわけではありませんが)、リーダーシップや上司マネジメントの発揮の仕方は、世の中で言われるような「うまくいくあるパターン」があるわけではないと思ってます。簡単にいえば、相手次第でやり方を変える必要があって、相手のプロット位置に対して、臨機応変に対応が変えられる人が管理職として実力が出せる人みたいです(所詮は人間対人間のやりとりですので)。
これはだれでもできることで、たとえば、お使いに言ったことがない子供には、すごく丁寧に教えますよね。中学生相手には「○○を買ってきて」といえば済みますよね。
同じことを部下に対しても積極的に活用した方がいい、と勝手に考えてます。
その時に、どのような分類をするのかというと、上記のスキルレベルとモチベーションの直交軸での部下の位置づけを確認することが第一歩だと考えています。
長文になってしまいましたが、ご参考になれば幸いです。
早速のアドバイスありがとうございました。
管理人さんのアドバイス目からウロコでした。感謝しています。
管理人さんのおっしゃる通りで、私の今までの部下、後輩は極端に無能な社員をもったことがありません。
私はビジネス書を読むのが好きです。
私が書いた文章を読み返すと、ビジネス書に書いている一般的な内容だと思いました。
力不足を痛感しました。
やはり、こういう面接においては、いい意味での「泥臭さ」が必要ですね。
もし、差支えなければ、「泥臭さ」を培うための勉強方法及び、推薦の書籍がございましたら、ご教授ください。
この悔しさをバネに更なる成長をしていきたいと考えています。
よろしくお願いします。
コメントありがとうございます。参考にしていただけたようで幸いです。
さて、勉強法ですが私もよくわかってません。申し訳ありません。
ただ過去に100人を超える部下を持ったり、いろいろな部署を変転するなかで、なんとなく経験的なマネージメント方法として、上記のように感じているに過ぎません。
もちろんビジネス書は結構読みますが、「このビジネス書を信じている」みたいなものはなく、それぞれのよさげなところをつまみ食いしている、というのが実情です。
麹さんもビジネス書をよく読まれるようですので、おそらく「おっ、これは!」と思われたところが多数あるのではないでしょうか。そういったものを実際に試し、フィードバックしていきながら(試される部下からしたらいい迷惑なのかもしれませんが)、自分のスタイルを作っていくのがいいのかもしれません。実際にはもっと効率のいいやり方があるのかもしれませんが。
ちなみに、相手に合わせたリーダーシップの発揮の仕方というのは、
無敵のリーダーシップ
瀬戸尚
という本に書いてありました。古い本(1995出版)なので、今では入手しにくそうですが…。
では、今後ともお互い頑張って行きましょう。
当ブログも時々覗きに来ていただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。