2019年02月18日

数値評価のワナ




日本でMBO(Management by objectives;目標による管理)が導入されてからずいぶんになります。
でも、その結果日本の企業の業績が良くなったかというと、どうもそうではないように見えます。

まぁ、イチサラリーマンが、MBOの仕組みについてどうこう言うつもりはありませんが。




■数値評価にはワナがある


★P120〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

あるとき私はクライアントの依頼で、急に膨れ上がった製造コストの改善を行うことになった。しかしその 1 場で変更のあった点といえば、間接費の酬膨方法だけだった。間接費をひとまとめにして各部署の占有面積や従業員数で割っても、実際のコストを割り出したことにはならない。けれども、ほとんどの企業で間接費の配賦には何らかの公式を用いる。そのほうが計算がラクだからだ。

どの製品が最も電力を消費するか、どの部署が最も多くの通信回線容量を使用しているか、そういったことを突きとめようとしたらあまりにも時間がかかる。つまりコストはどう算出するかによって決まるものであり、確実な数字ではない。収益はもう少しごまかしが利かないかもしれないが、売上をいつに計上するかはやり方次第である。うまくすれば、四半期の目標達成に利用できるかもしれない。
  :
  :
このような手口の横行に対し、企業が対策を講じることもある。戦略目標を達成するためにもとからあった評価指標のほかに、新たな評価項目を加えてバランスを図るのだ。営業の例を見てみよう。営業のコミッションは、利益率を犠牲にしてでも売上目標を達成することで得られる。そこで今度は、利益率も評価基準に加えるのだ。
 :
したがって、理にかなう唯一の方法は、売上と利益率と顧客満足度で評価することだ。すると今度は返品を増やすことになる。返品を無条件で受け付けると、顧客の購買意欲が高まるからだ。ならば返品率の低さも評価基準に加えよう。さて、この調子でやっていたら、評価基準と目標が際限もなく並ぶだろう。戦略目標への集中や優先順位づけなど忘れ去り、やったことはただひとつ、評価だけだ。さらに悪いことに、毎年の評価基準には入っていない長期的な目標や業務は置き去りになる。そうなれば、従業員たちが会社の長期的な将来を見すえてがんばろうとする動きはなくなってしまう。

カレン・フェラン(著) 『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
――――――――――――――――――――――――――――★


企業としては、最終的に業績を良くしたいわけですが、そのためには、業績につながる成果を数値にして、それを分解して、最終的には個人個人の業務目標に割り振らないといけません。
それがMBOなので。

ところが、分解していくと、本書『御社を潰したのは私です』のように、ある計算式で求められる数値が必要なので、いろいろなところをモデル化しつつ省略してしまいます。

ここが、サラリーマンの付け入りどころ

たとえば、営業職の人であれば、「新規顧客契約数」という目標があったとすれば、

 ・100万円の契約1件
 ・1円の契約10件

どっちがいいかというと、後者のわけです。

だったら、顧客の関連会社と、恐ろしく安い契約を結んでしまえば、件数はガッツリ稼げます。

まぁ、そこまでロコツなことをする人はいないでしょうけど。

私の仕事の例だと、「日程遵守率」という指標があります。これはプロジェクトのマイルストーンごとに、ちゃんと計画通りプログラムをリリースしたかという指標なのですが、

 マイルストーン当日に、「これがリリースバージョンです」といってメールを出せば達成

できます。バグだらけだろうが機能が足らなかろうが関係なし




■数値評価を利用する


これは単なる例であって、こんなことわざとやってるわけじゃぁないですよ。ホントに。

ただ、必要なときは抜け道を利用するというのも処世術の一つかと。
あまりやり過ぎると、粉飾決済になりかねませんが、ある程度なら…。どこまで許されるかは、上司の様子を見ながら。

そのためには、成果となる数値指標はどの様な要素でどのように計算されるのかをちゃんと決めておかないといけません。
そして、その要素を成果がいい方向に変化させる要因をちゃんと予定しておくと、あとで突っ込みどころ満載の自己申告書を出さなくて済みます。

あなたの成果指標はどんな要素からなっているでしょうか?

もう一度見なおしてみませんか?

ちなみに、本書『御社を潰したのは私です』には、こんなたとえが書いてありました。


★P136〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

・指標スコアカードは自動車のダッシュボードと同じ。ダッシュボードだけ見て道路を見なければ、衝突してしまう!

カレン・フェラン(著) 『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
――――――――――――――――――――――――――――★


こう使うべきなのでしょうけど、やっぱり高い評価はほしいので、バカ正直に悪く報告することはない、とかんがえることにしましょう。





■参考図書 『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。




■前代未聞! 気鋭のコンサルが業界の内幕を暴露。
コンサルの過ちを懺悔した全米騒然の問題作!

本書の著者は、マサチューセッツ工科大学及び同大学院を卒業後、
大手会計事務所系コンサルティングファームの
デロイト・ハスキンズ&セルズや戦略系コンサルティングファームの
ジェミニ・コンサルティングで活躍。その後、ファイザーや
ジョンソン・エンド・ジョンソンなどの大手企業で
マネージャーとしての経験を積んだ敏腕コンサルタント。

本書は、その著者が自ら「自分たちがコンサルタントとして
クライアントに勧めてきたことは、あれもこれも間違っていた」と
懺悔した前代未聞の書である。
「この30年、多くの企業に入り込み、『目標による管理』だの
『競争戦略』だのとお題目を唱えて回ったすべての
経営コンサルタントを代表してお詫びします」
と告白したのだ。

■大手ファームの仕事の「実態」とは?

著者は自らが経営コンサルタントとしてクライアントに勧めてきた
さまざまなメソッドについて、その経緯と理論を振り返りながら、
コンサルティングを受けた企業の顛末を詳細に語る。
「戦略計画」「最適化プロセス」「業績管理システム」など、
コンサルがどういう発想で改革を持ち込み、それが企業にどんな影響を
与えているかを具体的に理解できるのも面白いところだ。
現代の経営手法を根幹からひっくり返すような「告白」を満載した本書、
コンサル業界だけでなく、いまのビジネス潮流そのものに
一石を投じる一冊と言えるだろう。

目次

はじめに 御社をつぶしたのは私です
Introduction 大手ファームは無意味なことばかりさせている
第1章 「戦略計画」は何の役にも立たない
第2章 「最適化プロセス」は机上の空論
第3章 「数値目標」が組織を振り回す
第4章 「業績管理システム」で士気はガタ落ち
第5章 「マネジメントモデル」なんていらない
第6章 「人材開発プログラム」には絶対に参加するな
第7章 「リーダーシップ開発」で食べている人たち
第8章 「ベストプラクティス」は“奇跡"のダイエット食品





◆アマゾンで見る◆◆楽天で見る◆◆DMMで見る◆

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
著者 :カレン・フェラン

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
検索 :最安値検索

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
検索 :商品検索する



●本書を引用した記事
 考えは伝えられない
 伝わった結果だけが問題2:どう伝わったかを判断する方法
 数値評価のワナ
 道具は目的を達成しない
 申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
 フレームワークに頼ってはいけない
 申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

●このテーマの関連図書


コンサルは会社の害毒である(角川新書)

いたいコンサルすごいコンサル究極の参謀を見抜く「10の質問」

コンサル一年目が学ぶこと

戦略評価の経営学―戦略の実行を支える業績評価と会計システム

この1冊ですべてわかるコンサルティングの基本

コンサルティングとは何か(PHPビジネス新書)





■同じテーマの記事

個人業務計画書を作る

おそらく会社では、組織単位で年度初めに部門の活動計画書を出しているのを知っていると思います(零細企業ではやっているところは少ない、とも聞いていますが)。ほとんどの会社では、社長は大きな方向性は決めますが、その方向性に沿うために、それぞれの部門は今年度どのようなことをするのかを部長や管理職が決めて、それを計画書の形で役員に報告していると思います。その部門方針の一部がまた担当者の業務として与えられるわけです。ところが計画書が作られるのは、そういった組織やプロジ..

マウスのホイール操作をマウスカーソルのあるウインドウに適用する

ブラウザーとメールを立ち上げておくなど複数のウインドウを表示して作業をしているときに、マウスのホイール操作をしたら、別のウインドウがスクロールして、イラッとしたことありません?Windows のアクティブウインドウって目立たないWindows って、いろいろな操作をするときに、その対象はアクティブになっているウインドウに対して行われます。当たり前ですが。ここで問題になるのはマウスカーソルはアクティブなウインドウの上にあるわけではないけど、マウスカーソルがあるとそれが..

初手、王手飛車取り!

本日は、具体的なスキルの話ではなく、心構えのお話。心構え、基礎学習なにをするにしても、かならず「心構え」が必要と言われます仕事というのは、社会に真摯に貢献するという気持ちで向かいなさい社会人としての自覚と責任をもって臨みなさい感謝の気持ちを持つことが大切自分のやったことに誇りを持ちなさいまた、何かを学ぼうというときには、まず基礎的な理論をしっかり身につけて、応用はそれからみたいなことも。それ自体は理解できますし、私自..

一番簡単にできる成果の増やしかた

年末になると、今年度の業務目標と現時点の実績との差が気になり始めます。たいていは、まだ未達状態(未完了)のものが多くて、「あと3ヶ月で年度始めに立てた目標が達成できるか?」と心配になるものがあります。一番簡単にできる成果を出す方法一般社員なら、年間の業務目標は4〜10個というところでしょうか。管理職なら、部下の業務目標数だけあるはずなのですが、ある程度集約もされるので、20個くらいというところでしょうか。私は第4クオーターになると、こうした個人的に持っている目標、管..

宴会の席では上司の隣りに座る

部門やグループで飲みに行くことがありますよね。その時、どこに座りますか?通常は、職場で一番親しい人の近くに席を取るのではないかとおもいますが、ここはひとつちょっと気張って上司の隣りに座るようにしてはいかがでしょうか。『話しかけなくてもいい会話術』に書いてあったのですが、簡単に書くと話しかけられたい人の左隣りがいいそうです。..

担当者を決めない計画立案

プロジェクトスケジュールを決めるときに、1.タスクをリストアップする2.日程を決める3.担当者を決めるってやりますよね。でも時々担当者を決めないままスケジュールとして公開してしまう場合があります。多くの PMBOK 系の進め方だと、担当者を決め、最終的に各担当者の業務負荷をチェックして業務量を可能な限り平準化するのがセオリーです。私の勝手な持論ですが、世の中セオリー通りには行かないものです。原則は担当者ありき当然ながら、担当者を決めなければ、そのタスクを責任を..




posted by 管理人 at 04:07| Comment(0) | TrackBack(0) | ヒント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック