日本でMBO(Management by objectives;目標による管理)が導入されてからずいぶんになります。
でも、その結果日本の企業の業績が良くなったかというと、どうもそうではないように見えます。
まぁ、イチサラリーマンが、MBOの仕組みについてどうこう言うつもりはありませんが。
■数値評価にはワナがある
★P120〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
あるとき私はクライアントの依頼で、急に膨れ上がった製造コストの改善を行うことになった。しかしその 1 場で変更のあった点といえば、間接費の酬膨方法だけだった。間接費をひとまとめにして各部署の占有面積や従業員数で割っても、実際のコストを割り出したことにはならない。けれども、ほとんどの企業で間接費の配賦には何らかの公式を用いる。そのほうが計算がラクだからだ。
どの製品が最も電力を消費するか、どの部署が最も多くの通信回線容量を使用しているか、そういったことを突きとめようとしたらあまりにも時間がかかる。つまりコストはどう算出するかによって決まるものであり、確実な数字ではない。収益はもう少しごまかしが利かないかもしれないが、売上をいつに計上するかはやり方次第である。うまくすれば、四半期の目標達成に利用できるかもしれない。
:
:
このような手口の横行に対し、企業が対策を講じることもある。戦略目標を達成するためにもとからあった評価指標のほかに、新たな評価項目を加えてバランスを図るのだ。営業の例を見てみよう。営業のコミッションは、利益率を犠牲にしてでも売上目標を達成することで得られる。そこで今度は、利益率も評価基準に加えるのだ。
:
したがって、理にかなう唯一の方法は、売上と利益率と顧客満足度で評価することだ。すると今度は返品を増やすことになる。返品を無条件で受け付けると、顧客の購買意欲が高まるからだ。ならば返品率の低さも評価基準に加えよう。さて、この調子でやっていたら、評価基準と目標が際限もなく並ぶだろう。戦略目標への集中や優先順位づけなど忘れ去り、やったことはただひとつ、評価だけだ。さらに悪いことに、毎年の評価基準には入っていない長期的な目標や業務は置き去りになる。そうなれば、従業員たちが会社の長期的な将来を見すえてがんばろうとする動きはなくなってしまう。
カレン・フェラン(著) 『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』
――――――――――――――――――――――――――――★
企業としては、最終的に業績を良くしたいわけですが、そのためには、業績につながる成果を数値にして、それを分解して、最終的には個人個人の業務目標に割り振らないといけません。
それがMBOなので。
ところが、分解していくと、本書『御社を潰したのは私です』のように、ある計算式で求められる数値が必要なので、いろいろなところをモデル化しつつ省略してしまいます。
ここが、サラリーマンの付け入りどころ。
たとえば、営業職の人であれば、「新規顧客契約数」という目標があったとすれば、
・100万円の契約1件
・1円の契約10件
どっちがいいかというと、後者のわけです。
だったら、顧客の関連会社と、恐ろしく安い契約を結んでしまえば、件数はガッツリ稼げます。
まぁ、そこまでロコツなことをする人はいないでしょうけど。
私の仕事の例だと、「日程遵守率」という指標があります。これはプロジェクトのマイルストーンごとに、ちゃんと計画通りプログラムをリリースしたかという指標なのですが、
マイルストーン当日に、「これがリリースバージョンです」といってメールを出せば達成
できます。バグだらけだろうが機能が足らなかろうが関係なし。
■数値評価を利用する
これは単なる例であって、こんなことわざとやってるわけじゃぁないですよ。ホントに。
ただ、必要なときは抜け道を利用するというのも処世術の一つかと。
あまりやり過ぎると、粉飾決済になりかねませんが、ある程度なら…。どこまで許されるかは、上司の様子を見ながら。
そのためには、成果となる数値指標はどの様な要素でどのように計算されるのかをちゃんと決めておかないといけません。
そして、その要素を成果がいい方向に変化させる要因をちゃんと予定しておくと、あとで突っ込みどころ満載の自己申告書を出さなくて済みます。
あなたの成果指標はどんな要素からなっているでしょうか?
もう一度見なおしてみませんか?
ちなみに、本書『御社を潰したのは私です』には、こんなたとえが書いてありました。
★P136〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
・指標スコアカードは自動車のダッシュボードと同じ。ダッシュボードだけ見て道路を見なければ、衝突してしまう!
カレン・フェラン(著) 『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』
――――――――――――――――――――――――――――★
こう使うべきなのでしょうけど、やっぱり高い評価はほしいので、バカ正直に悪く報告することはない、とかんがえることにしましょう。
■参考図書 『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』
◆アマゾンで見る◆ | ◆楽天で見る◆ | ◆DMMで見る◆ |
申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。 著者 :カレン・フェラン | 申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。 検索 :最安値検索 | 申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。 検索 :商品検索する |
●本書を引用した記事
考えは伝えられない
伝わった結果だけが問題2:どう伝わったかを判断する方法
数値評価のワナ
道具は目的を達成しない
申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
フレームワークに頼ってはいけない
申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
●このテーマの関連図書
コンサルは会社の害毒である(角川新書)
いたいコンサルすごいコンサル究極の参謀を見抜く「10の質問」
コンサル一年目が学ぶこと
戦略評価の経営学―戦略の実行を支える業績評価と会計システム
この1冊ですべてわかるコンサルティングの基本
コンサルティングとは何か(PHPビジネス新書)