本の精読にはいくつかの手段があります。以前の記事音読すると理解できるでは、本を音読してみることをお薦めしました。
本日はもうひとつの精読の手段、究極の精読、筆写について、考えてみたいと思います。
■読書の全技術
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音読もそうですが、書き写すとやっばり身になリます。その結果、当時の人々はものすごスピードで知識を増やしていったのです。
ですから、書き写すということは精読の最たるものともいえるのです。
齋藤孝(著) 『大人のための読書の全技術』
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以前の記事音読すると理解できる同様、元ネタはこの本『大人のための読書の全技術』です。
■学生時代の成功体験
私が学生(大学)時代のことですのでもうずいぶん古いお話ですが、ある研究室にどうしても入りたくて、その研究室の研究課題である関連書籍を図書館で読んでました。しかし、一向に理解できたような気がしないので、最後の手段として、その教授の著書を借りて、全部をノートに写しました。
それでちゃんと理解できたかというと、それ自体は怪しいものですが、教授のところに行って、そのノートを見せながら、「ここのところがわからないんです」と結構しつこく迫りました。それまで、学生の中では特に目立った成績でもなく、単にこの研究室に入りたいといっても歯牙にもかけてもらえなかったのが、急に教授がいろいろ雑談などもしてくれるようになって、晴れてその研究室にはいることができました。
実際、研究室に入ってみると、自分より成績の良かった同級生も、その教授の分野については、「自分より知らない」ことに驚いた記憶があります。
ひたすら書き写したことで、その意味や背景が腹に落ちていたわけではないですが、少なくとも教授の所見は頭のなかに入っていたのですね。
そうした経験から、「書き写す」というのは、何かを理解するための(私にとっては)究極の手段になってます。
とにかく「これ!」と決めた本を、わかろうがわかるまいが、ひたすらノートに書き写します。当然、図などがあればそれも。
本と全くおなじになるように書き写します。
■全部はやれない
ただ、本はビジネス書ですら200ページを超えます。これをひたすら書き写したら、1年近くかかっちゃいます。
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あるとき、諭吉が豊前中津藩家老の奥平壱岐のところに挨拶に行くと、壱岐が、長崎で 23 両という大枚を支払って手に入れたという、オランダの築城書を自慢げに取り出しました。
それまで、物理や医学の蘭書は見たことがあった諭吉ですが、城のつくり方を書いた本は初めてでした。そこで諭吉は壱岐をおだててなんとか借り出し、一気に書き写してしまったというのです。
その直後、城の門番という下級武士の生活に耐えられなくなり、父・百助の蔵書や家財道具を売り払って借金を払い、母を説得して大坂に向かいます。
そして書き写した築城書を翻訳するという名目で、適塾で生活し、学ぶことを許されたのです。
また、その翌年には適塾の先生である緒方洪庵が、福岡藩主・黒田長博から 80 両もする「ワンダーベルト」という物理学の原書を三日間限定で借りてきて、塾生が交替で「エレキテル」の部分を筆写したと伝えられています。
本が貴重であり、高価だったこともありますが、当時の人というのは、そうやって書き写すことを決して厭いませんでした。
齋藤孝(著) 『大人のための読書の全技術』
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この「ワンダーベルト」という本がどのくらいの分量なのかは知りませんが、おそらく3日間で書き写すというのは大変な作業だったのではないかと思います。いまならコピー機で一発ですね(著作権は別として)。
これほどの作業を費やす価値について考えると、個人的には「価値はある」と思いますが、それ以上に、日々の生活があるサラリーマンにとっては、文明の利器に頼りたくなってしまいます。
なので、今では「大事なところだけ書き写す」ようにしてます。それも PC に。
以前の記事で、スキャナで取り込んで OCR をすると引用が楽、と書きましたが、この大事な所だけは、OCR を使わずに書いてます。
本を書見台(自作)に広げておいて、読みながらひたすら PC に打ち込んでいきます。
ビジネス書で言えば、書き写す量はかなりばらつきがありますが、だいたい10〜20ページ位はこうして書き写してます。
部分的にでも、書写すると記憶に明確に残ります。
なので、こうした本の部分紹介をするときに、本を引用することができるようになった、というメリットもあります。
PCを操作する速度にもよりますが、気に入った本のために2時間、使ってみませんか?
インプットするだけではなく、アウトプットをすると、本の効果が変わってくることに、ある日突然気が付きます。
ただ、書き写すときには、あるセンテンスだけではなく、そのセンテンスを含むページ位は書き写しましょう。
前後関係も含めて書き写すことが、そのセンテンスを記憶するコツみたいです。
■参考図書 『大人のための読書の全技術』
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