「なぜなぜ分析」という言葉を知らない人はあまりいないのではないかと思います。
では、そのやり方は? というと結構心もとない人も見えるのではないでしょうか。
やっぱり、ある手法というのは、基本的なやり方があって、そのやり方をきちんとトレーニングを受けていないとうまく使えないものです。
これは、なぜなぜ分析に関する本を読むだけではな足らなくて、実際に講習などで受講してみないとうまく使えるようにはなりません。もちろん、講習を受けたからといってそうなるとか限らないですが、本で詳細を学び、それを先生について実際の訓練をやった人というのは活用できるラインを超えられる人は多くなります。
「なぜなぜ分析」の3つのキーポイントについて考えてみたいと思います。
本日は、最初に書いた事例の3つの問題のうち、最後の3つ目。なぜの段階について、ご紹介したいと思います。
■原因と要因
まず、考えないといけないのは「原因」と「要因」の違いです。
案外この2つを区別せずに使っている人も見えるようですが、これは別物です。
辞書に書いてあるのは、「要因とは主な原因」みたいな説明が多いですが、私が若いころ上司や先輩に指摘されたのは、
要因とは「問題を発生しうる可能性のある全ての事象」
原因とは「問題を発生させた事象」
です。つまり、要因のほうが事象の数が多いということです(可能性を含んでいるため)。ところが、辞書では、原因より要因のほうが少なくなります。
これは私ごときでは、どういうことかよくわからないですが、「要」という字に問題があるのですかね? 私が間違っているんだろうか?
辞書の定義からすると
原因とは「問題を発生させた事象」
要因とは「問題を発生させた事象のうち支配的な事象」
となるのでしょうかね?
そうなると、「問題を発生しうる可能性のある全ての事象」というのはなんと言えばいいのだろうか?
まぁ、国語は学者さんに任せるとして、以下では「要因」と「原因」は勝手ながら私の定義で使わせていただきます。
■なぜなぜ分析で挙げるのは「原因」
前々回の記事でも書いたように、原因は複数あります。これを順番に上げていくのがなぜなぜ分析なのですが、これが間が足らないものが少なくありません。
事例としては
●経営者のせい
○○の問題が起きた
↓
△△部品が変形した
↓
試作段階の検討が不充分だった
↓
開発人員が不足している
↓
人員を増やす予算がない
↓
経営者が悪い
で、「部品が変形した」→「検討不足」という部分を例としてあげると、「部品が変形した」のは、「想定外の応力がかかった」とか、「強度が足らなかった」のが原因であり、「検討不足」は直接原因ではありません。それは「要因」のひとつにすぎないわけです。
直接引き金を引いたのは、別のものです。
この、「直接引き金を引いた」という点に着目しないと、話はどんどん抽象化してしまって、答えがある原因にはたどり着けません。
つまり、なぜなぜ分析で重要なのは、因果関係が間違いようのない事実関係のある原因である必要があるわけです。
■原因のレベル
もう一つ重要なのは、前々回述べた、複数の原因があるときの複数個の原因のレベル合わせです。
ちょっとこれは説明がしにくいのですが、
1.○○の問題が起きた
1.1.△△部品が変形した
1.2.△△部品の駆動速度が変動した
1.3.○○制御がオーバーシュートした
というように複数の原因を挙げた時に、
1.4.応力計算が間違っていた
というものを入れると、1.4は、1.1の原因にもなってしまいます。
これが、「複数の原因のレベル合わせができてない」状態です。
つまり、原因を挙げる際には、同じ階層は同じレベルで考えるようにしないと、ただしく直接的な原因が見つかりません。
■要因をあげてはいけない
最後に注意すべきは、「要因」を上げてはいけない、ということ。
つまり、直接問題を引き起こしていない、たんなる可能性の話だけで原因として問題点を挙げると、話が空中戦になってしまいます。
これをさけるためには、客観的に観察できる事象に限ることです。
とくにわかりにくいのが、主語や述語を省いた名詞で原因を表現するものです。たとえば、「不注意」「○○不足」とかです。これは、解釈のしようによっていろいろな意味にとれてしまうので、関係者で合意がしやすいのですが、「××さんが○○の手順を省いた」と表現するとやっぱり、当人にとってはいい気持ちがするものではありません。だから、日本語の便利なところを取り込んで、主語や述語を省いてしまいがちですが、これでは問題点を浮き彫りにすることなどできません。
さらに、以前の記事にも書いたと思うのですが、ないものは観察できません。事実として観察できるのは、あるものだけです。「××がなかった」ではなく、「××があった」と書かないと、なんとでも言えてしまいます。これも NG ワードにしておかないと、その後の深堀りが続かなくなります。
■おわりに
以上、簡単になぜなぜ分析について紹介してみました。
もちろんこれが全てではなくて、何冊も本が書けるほど奥が深い者ですが、取っ掛かりにはなったでしょうか。より詳しく知りたい方は、以下に私が勉強になった参考図書を上げておきますので読んでみてください。いろんなシチュエーションで役に立ちますよ。
■参考図書
といって唯一の正解があるわけではありませんし、私ごときが正しい説明ができるとも思えないので、以下の本をご紹介しておきます。
『なぜなぜ分析 徹底活用術―「なぜ?」から始まる職場の改善』
※ものごとの原因を突き止める簡単な思考法が「なぜなぜ分析」です。なぜ? を繰り返していくと、いままで気が付かなかったさまざまな現象とその原因が見えてきます。仕事改善に業務改善などに適用すれば、大きな成果が期待できます。本書では、なぜなぜ分析のポイント、正しい使い方などをていねいにわかりやすく説明しています。
ただし、本書は読むのは結構骨が折れるので、以下の本が取っ掛かりとしては楽かもしれません。
『問題解決力がみるみる身につく 実践 なぜなぜ分析』
※問題の本質は「なぜ?」を適切に繰り返すことで見えてきます。物事を論理的にとらえ、ミスやトラブルの原因を的確に追究したいビジネス人必読。「なぜ?」の問いに答えていくだけの、誰にでもできる究極の問題解決手法をわかりやすく解説します。
『生産・品質トラブルを防止する なぜなぜ分析と変更管理』
※モノづくり現場では何かとトラブルに見舞われている。そのトラブルの再発防止策を講じられるようにするのが「なぜなぜ分析」で、トラブルの発生を未然に防ぐようにするのが「変更管理」である。本書は、なぜなぜ分析と変更管理をわかりやすく解説したもので、再発防止から未然防止につなげていく改善の大きな手がかりを提供してくれる現場改善の実務書となっている。
『「なぜなぜ分析」習得の7ステップ―真の原因をつかめ!』
※問題解決手法の代表である「なぜなぜ分析」本来の目的とは、仕事の「あるべき姿」とのズレを見つけること。しかし、結果を急ぐあまりの思いつきや、論理に飛躍がある分析も多い。本書では、現場・現物・現象で徹底的に観察し、原理・原則によって問題発生のしくみを理屈付けしながら解いていく。体系的に、誰でも、いつでも、簡単にできる「なぜなぜ分析」の入門書。
『なぜなぜ分析実践指南―現場トラブル徹底攻略法』
※製造現場のトラブル解決の虎の巻! 「なぜなぜ分析」とは、製造現場でのトラブルの真の原因を、発生現象をスタートに「なぜ」「なぜ」…と繰り返して追求していく画期的かつ効果的な分析手法です。現場で抱えている問題を「なぜなぜフローモデル」にあてはめて考え、「なぜなぜケーススタディー」を参考に展開していけば、トラブル解決の方法がきっと見つかるはずです。
私は『問題解決力がみるみる身につく 実践 なぜなぜ分析』が取っ掛かりには良かったと思います。『なぜなぜ分析 徹底活用術―「なぜ?」から始まる職場の改善』は結構ハードルが高いかのように思いました。もし製造系でなぜなぜ分析を活用したい方には、最後の『『なぜなぜ分析実践指南―現場トラブル徹底攻略法』が最適かと。