調べてみると、「論理を鍛える」ようなセミナーは非常にたくさんあります。多くの人が「自分の課題だ」と思っている(=需要がある)ということなのでしょうね。
他人に対する「説得力」の違いがでるのは、もちろん論理的に話すことも重要ですが、人は論理だけでは動きません。気をつけていたい言葉に「私たち」という言葉があります。
その事例としてすごくわかりやすい説明が載っている本の一節をご紹介します。
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●ブルータスの演説はどこが汝ずかったか
相手のニーズを知り、どうすれば相手の共感を得られるかを考える 。それが説得の原点、ブレゼン成功の鍵です。
シェークスピアの「ジュリアス・シーザー」の中に、シーザーが暗殺された後、殺した側のブルータスと、シーザー側にいたアントニーが演説する、有名な場面があります。
まずブルータスが立って、「自分たちはなぜシーザーを殺したか」を話します。
シーザーはよいことをたくさんやった。けれども野心家で、ローマを私物化し、口ーマ人を奴隷にしようとした。
私は彼が嫌いだから殺したのではない。私はシーザーを愛していたが、それよりももっとローマを愛していた。だからシーザーを殺すしかなかったのだ
ブルータスの話は高潔で、集まった人たちはそれを聞いて「そのとおりだー」と喝采しました。
しかしアントニーはうろたえませんでした。というのは、ブルータスの話は「なぜシーザーがローマ人を奴隷にすると思ったのか」という具体的な理由については説明していなかったからです。
ブルータスが演説を終えると、次にアントニーが話をします。
私はブルータスを尊敬しています。しかし、シーザーはそんなに悪い人間ではなかった。彼はみなさんをお金持ちにしたではないですか。みなさんの気持ちをよく理解し、帝王になることを断ったではないですか。シーザーのどこが野心的だったというのでしょう。
彼の遺言があります。その遺言には「ローマのみなさんに私の宮殿を捧げます」と書いてあるのです。
そんなシーザーが、どうしてみなさんを奴隷にするというのでしょうか
アントニーの話は雄弁で、具体的で、感情に溢れたものでした。
そLて、「私が見つけた」と言って、シーザーの遺言状(偽物と思われる)まで見せたのです。
アントニーの反論を聞いたローマ人たちは、今度は「アントニーの、言うとおりだ!」と言い出しました。
高潔なブルータスより校猪なアントニーの演説のほうが聴衆に訴えたのは、アントニーが聞き手であるローマ人たちの気持ちをブルータスよりわかっていて、その共感を得ることに成功したからです。
アントニーは「我々の役に立っことをやったのは誰だ。シーザーなのか、ブルータスなのか」そう問いかけた。
論理ではなく、聞く側の感情に訴えて説得に成功した、大変いい例ではないかと思います。
「あなたと私は仲問ですよ」「私たちの願いは同じです」と訴えていくことで、相手の支持を得る。それがプレゼンのポイントと言えます。
ロバート・アラン・フェルドマン(著) 『フェルドマン式知的生産術―国境、業界を越えて働く人に』
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何かのプレゼンをするとき、「あなたたちは」というと、私とあなたたちが対立して向かい合っているイメージを抱きます。
一方で、「私たちは」というと、みんなが同じ方向を向いているイメージを抱きます。
共感を得やすいのはどちらかはわかりやすいですよね。
「あなた」ではなく「私たち」と言い換えてみましょう。言いたいことのその部分だけ取り替えるだけでも、文章がおかしくなったりはしません。機械的にやるだけで効果がありますよ。
■「ウチの会社」か「この会社か」
『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』というマンガに、人事部の人が、「だれを昇進させるか、というときに、会議である言葉に注目している」という話が書いてありました。
「ウチの会社」というか「この会社」というか?
この言葉だけで、この後、昇進して活躍する人かどうかわかるそうです。
「ウチ」や「私たちの会社」という発言をする人は、将来会社のために情熱を持って活躍してくれる可能性が高い
のだそうです。自分も、会社を批判するときには、「この」を使っているような気がしました。注意せねば。
■参考図書 『フェルドマン式知的生産術―国境、業界を越えて働く人に』
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著者 :ロバート・アラン・フェルドマン
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■参考図書 『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』
君たちの「転職」は間違ってないか!?
メディアに騙されるな、イメージに惑わされるな。
これは社会人のための“ドラゴン桜”だ! 今の仕事に悩んでないか!?転職を考えているなら……今が人生の転機だ!!転職とは人生のチューニング。龍山高校英語教師・井野真々子は転職代理人の海老沢と出会った。彼の話にひかれ転職を決意した!!選んだ職業は、転職代理人!!
あらすじ
龍山高校で英語教師をしていた井野真々子は、教師としての成果を挙げながらも教師でいることに飽きてしまい、転職を決意する。そんな時、桜木が主催するビジネスセミナーの会場で、桜木に"転職代理人"・海老沢康生を紹介される。「人の価値は相場で決まる」「30過ぎたら利息で暮らせ」などの海老沢や桜木のアドバイスを受け、教師を続ける事を決意しかかっていた井野だったが、海老沢の勧めで海老沢が所属している転職サポート会社・ライフパートナーに転職する。
井野は海老沢直属の部下となり、海老沢や桜木が極秘裏に進める「日本支配計画」に巻き込まれながらも、キャリアパートナーとして日々奮闘していくことになる。
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書名 :エンゼルバンク ドラゴン桜外伝
著者 :三田紀房