あなたの会社には役員専用の応接室がありますか?
ウチの会社にはあります。
基本的には、一般社員は使えないのですが、どうしても他の会議室などが使えない時に、ここが空いていれば使わせてもらえます。
■厳しい交渉には役員応接室を使う
私はときどきここを使わせてもらってます。上司の役員にお願いして「この時間しかないので使わせてもらっていいですか?」と聞けば、「空いていればいいよ」とたいていは言ってもらえます。聞かれた役員にしても、たぶん「一般社員には使わせたくない」までのこだわりはないでしょうし。
なぜ? と言うとこんな理由。
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●部屋の快適さで、人物の評価が変わる
交渉とは、その内容で受け入れるかどうかを決めるものですが、どうしても交渉相手の人物の印象が影響します。
誠実で信用できそうな印象か、調子よくいい加減なことを言いそうな印象かで、提示された条件が一緒でも、判断が違ってくることは十分あり得るでしょう。
だからこそ商談の際には、だれもが印象マネジメントに気をつかうわけです。
ところが、その印象が物理的環境に大いに左右されてしまうのです。
商談をするには雰囲気の良い店や落ち着いた場所を探すのがよいと言われますが、それにはどんな意味があると思いますか。
心理学者グリフイツトによって、そのヒントとなる実験が行われています。
それは、対人魅力の心理学、つまり人に対して魅力を感じさせる要因を探求する心理学領域の実験です。
そこでは快適な部屋と不快な部屋の 2 つの条件が設定されました。快適な部屋というのは、室温 20 度、湿度 30% でした。
一方、不快な部屋は、室温 32 度、湿度 60 %と、非常に蒸し暑い状態でした。
それぞれの部屋で知らない人物のプロフイールを見せて、その人物の印象を評価させるという実験を行ったところ、快適な部屋で評価した人たちの方が、不快な部屋で評価した人たちよりも、明らかに好印象を抱いていることがわかったのです。
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:(中略)
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こうしてみると、快適な環境を用意すると商談がうまくいきやすいというのは真実であり、その理由は、環境による快適さを交渉相手の印象に結びつける勘違いが起こるからと言えるでしょう。
●影響を知らず識らずに受ける
柔らかくて座り心地の良いソフアーを用意すると商談がうまくいきやすいとも言われますが、これにも心理学的根拠があります。
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:(中略)
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そのため、心理状態が知らず識らずのうちに物理的な世界の印象に影響されるということが起こってくるのです。
たとえば、交渉時に硬い椅子に座っていると、柔らかい椅子に座っている場合よりも、強硬な姿勢を取り、なかなか妥協しないことが証明されています。
また、熱いコーヒーカップをしばらくもっていると、冷たいアイスコーヒーのグラスをもっていたときより、人に対して「温かく」、好意的な印象を抱くことも、実験で証明されています。
こうしてみると、人間の判断がいかに物理的環境に影響されやすいかがわかると同時に、商談を成功させるには、快適な物理的環境を用意することがいかに重要かがわかるでしょう。
榎本博明(著) 『仕事で使える心理学』
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ちょっと引用が長くなってしまいましたが、こういうことです。
役員応接室というのは、その会社の中でも豪華な雰囲気を持っていますし、ゆったりした環境です。まわりのざわざわも聞こえてきません。
ソファーにゆったり腰掛けながら、大理石のテーブルを前に話をしていれば、落ち着いた感じが出せると思います。
もうひとつは、一般社員にはあまり馴染みのない場所、という点です。これは相手に対するプレッシャーになります。
雰囲気もそうですし、「ここは30分しか使えませんので」といえば、30分以内に結論を出さなければ、役員が入ってきて、「一般社員がなんでここ使ってるんだ」と怒られかねません。
そういうプレッシャーが相手に弱みを作らせるわけです。
ゆったり感と心理的プレッシャー、こちらが優位に立てる場所なわけです。
せっかくあるのに、役員が使ってないからといって空気だけが使っているというのはもったいないですから。
あるものは使わないきゃ損。
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