2016年11月28日

合意したけど賛成してない―結論は他人の物




いろんなルールを作るけど、ルールがルールとして守られるのは、たぶんほんの一部です。
特にルールが賞罰に影響しないものだったり、イチゼロで判断できないようなものだったりすれば一層。

とくに、

 「会議をして全員で決めたのに、結局何も変わらない」

なんてのは組織で動いているとよくあることです。

たとえば、「帰宅前に机の上を片付けて帰ろう」みたいなルールを決めたのに、1週間もすればもう元の木阿弥。
まぁ人間なんてこんなもんなんですけどね。

■なぜ決定事項が守られないか?

組織の状況や決定時の雰囲気、リーダーの存在などによっていろいろ変わってくるのですが、その原因のひとつに「社会的手抜き」と言われるものがあります。

詳しくは 社会的手抜き-Wikipediaを参照してもらえればわかりますが、要は「オレ一人くらい…」「今日くらい…」「このくらいなら…」ってやつです。

もうひとつ、よくある原因は、「コミットメント不足」。

結局その決定に、心から「そうだよな」と思わないので、上司や議長が正論を言えば黙って聞いているだけです。
誰も反対しないので決定とみなしただけ。

だれも積極的にやろうとは思ってないので、意識しているうちは決定事項を守りますが、すぐに意識の外に行ってしまいます。

■決定事項を個人のものにする

全員で決めたものは全員の責任です。しかし、行動するのはあくまでも個人なので、個人の責任要因が見える化されないかぎり、社会的手抜きが起こりますし、コミットメントしていないものに対しては責任感ももてません。

逆に言えば、この2つの要因を排除すると、守られる期間は長くなります。

ただし、相対的に長くなるだけで、永久にではありません。これを永久にするためには、「エスカレーション」が必要なのですが、これにふれだすとまとまりがなくなるので、今回は

 社会的手抜き防止コミットメント

についてのみ。

■社会的手抜き防止とコミットメント

★P109〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

●手抜きを防止する方法
こうしてみると、社会的手抜きというのは、個人がモチべーションの高い人物か低い人物かに関係なく、人間すべにあてはまる普遍的現象だということがわかります。

集団になると、だれでも一人だけで取り組むときほどの努力量が発揮されないのです。でも、それでは組織としては困るわけです。せっかくの個人の力が十分発揮されないのですから。では、どうしたらよいのでしょうか。心理学者釘原直樹は、社会的手抜きの防止法として、つぎの 4 つをあげています。

 ・{個人の貢献度がわかるようにする
 ・課題に対する自我関与度を高める
 ・他者に対する信頼感をもつ
 ・集団全体のパフォーマンスの変動についての情報が成員個々に与えられる

榎本博明(著) 『仕事で使える心理学
―――――――――――――――――――――★


◆個人個人に課題を落とす

一番最初に書いてある「個人の貢献度がわかるようにする」というのが社会的手抜きを防止するのに非常によく効きます。

たとえば、冒頭の「帰宅時に机の上を片付ける」というルールがあったら、

 毎朝課長が一番で出社して、個人個人の机の上をチェックして、その結果を公表する

とやれば、個人の状況が見える化されるので、手抜きをしにくくなります。

課長の負担は大きいですけどね。

「このくらいなら…」に対しては、たとえば、デスクマットを導入して、「デスクマットの上に何もおかれていないこと」などと明確な基準を設けます。こういう基準を決めたら、たとえペン1本であっても、「デスクマットの上にものがあった=×」にしないといけません。

◆コミットメントをさせる

二番めに書いてある「課題に対する自我関与度を高める」がコミットメントです。

単純に言ってしまえば、「私はやります」とひとりづつが全員の前で宣言させることです。

会議の場で、「帰宅時に机の上を片付ける」と決定したら、一人ひとりに「あなたはやってくれますか?」と聞いて「はい。やります」だけでも効果がありますし、もっと小さな行動なら「賛成の人は挙手をお願いします」でも効果があります。

この二つをするだけでも、スタートアップからいきなり「なし崩し」なんてことは防げます。

■会議の合意は他人のもの

たいていの、リーダーが主催する会議というのは、決定事項がリーダーの責任においてなされます。

なので、リーダーの目がなければ、やりたくないものになりがちです。

リーダーとしてはみんなで合意したつもりでも、参加者はそんな風には思ってません。
一般の参加者にとっては、上から落ちてくる命令に過ぎないんです。

それを参加者の責任にするためには、リーダーが「決定しました」と言って終わりではなく、「あなたの責任ですよ」ということを明確にしないと守られません。




■参考図書 『仕事で使える心理学

ビジネスの世界は人間心理で動く!
 営業、交渉、会議、部下指導、心の健康対策など、仕事のあらゆる場面で役に立つ心理学知識を解説します。

「交渉は先にキレたほうが勝つ??」
 例えば、ビジネス交渉にはさまざまな心理テクニックがあります。最初に過大な要求を相手にぶつけて自分の要求を通しやすくしたり、契約のサイン寸前になってわざと新たな条件を持ち出し相手にのませるなど、注意すべき技法を紹介します。

「みんなで決めるとリスクは高まる」
 物事を独断で決めずにみんなで話し合ったほうが、いろいろな知恵が結集できると思われ がちですが、集団での意思決定には意外な落とし穴があります。みんなで決めると気が大きくなり、責任も分散されることから、リスクの高い選択をしがちだということです。

「折れない心をつくる」
 また、ストレスに強い「レジリエンス」(復元力)という言葉が注目されています。ストレスのメカニズムや、ストレスを緩和・克服する心の習慣づくりを解説します。

本書は、経営や営業の現場で日々、打ち合わせや交渉をしている方や、部下の指導方法に悩んでいる方など、心理学を役立てたい人に最適の入門書です。




◆アマゾンで見る◆◆楽天で見る◆◆DMMで見る◆

仕事で使える心理学
著者 :榎本博明

仕事で使える心理学
検索 :最安値検索

仕事で使える心理学
検索 :商品検索する



●本書を引用した記事
 厳しい交渉ごとは役員応接室でやりなさい
 お子様上司の時代
 蟹は甲羅に似せて穴を掘る
 話題を探す(ハイダーの認知的バランス理論)
 タイプ別ストレス発散の方法
 決済を素早く貰えば仕事は早くなる2

●このテーマの関連図書


言いづらいことの伝え方(日経文庫) 4532113172





■同じテーマの記事

ファシリテーションを勉強する

会議で、みんなの意見を取りまとめたり、会議の進行をうまくやる技術を「ファシリテーション」といいます。これは、私が過去にいろんなセミナーで学んだ技術のうちでも、かなり役に立っとと思える技術のひとつ。さらに会議を行う際にとても重要なことがあります。それは「事前準備」です。「事前準備」をきっちり行うことで会議の時間そのものを短縮しつつ、質の良いアウトプットを生み出しやすくします。ここでい..

簡単な仕事は今やりなさい

打ち合わせをしていて、「じゃあさん(あなた)、さんに××を確認しておいてください」とか決まったとします。あなたならどうしますか?2分間ルールGTDで「2分間ルール」と呼ばれるものがあります。それをする「2分間ルール」次の行動が2分以内でできるものなら、最初にその項目を取り上げたときにすること。そのメモを読むのに30秒..

PCですぐにメモをとるためのツール

PCにメモ(忘備録)をとる人が多くなったように思います。もちろん、だれかと立ち話をしている時や、飲み会、通勤途中などでは難しいのですが、オフィス仕事が多い人なら、大抵はPCに触れているので、メモ帳にメモをして、それをPCのリマインダやスケジューラに書き写すより、いきなりPCに書き始めたほうが早いというのはたしか。PCでメモをとる上で、重要なのは、1〜2キーでメモが取れる体制、すなわち後は必要なテキストを入力できる状態になることです。以下、私の普段の..

議事録は清書してはいけない

仕事をしていて、会議をしたことがない人はいないでしょう。会議の中で議事録をとったことがない人もいないでしょう。仕事を効率的にするのに、この議事録にかける時間を少なくするというのは、製造系の直接業務(実際にものを作る仕事)でない限り、かなり効果のあることです。例えば先の会議で言えば、会議終了直後に「即製メモですがご確認ください」と議事録を送信して..

会議は最後に発言しなさい

会議で発言するときには、なるべく会議の最後に発言するのが効果的です。スターリンの影響力強化方法(16)そしてスターリンは会議ではいつも最後まで何も発言しなかった。全員がそれぞれの意見を言うのを聞き終えてから、発言する。まず、いままでに出た意見をいくつかに分類し、それぞれを比較してみせる。みな、聞き入るしかない。そのまとめ方が的確なので、誰も異論を挟まな..

使いまわし議事録:議事録は使いまわししなさい

会議をするとほぼ間違いなくくっついてくるのが、議事録です。公式の会議になると、発言者:………発言内容…………発言者:………発言内容…………発言者:………発言内容…………などというほとんど「録音しておけばいいのに」みたいなレベルの内容が書かれていて、最後に1行だけ。結論:を承認するみたいな。議事録の構成そこまでではなくとも、議論の経緯、決定の経緯、宿題事項などはあとで「なぜに決..

会議の宿題はアクションにする

「じゃ、本日は時間ですので、ここまでということで…」ウチの会社でもよくこういう終わり方をする会議があります。何が決まったんだ?と思うようなこともしばしば。会議の成果会議の目的にもよりますが、大抵の場合は、会議は開催することに意味はありません。その後に参加者または参加者の部下や同僚が何かのアクションを起こさなければ会社の成果にはつながりません。これはよく言われる「会議の目的を明らかにする」ことが大切なのですが、もう一つ大切なのは..

名刺の重み

小さな会社の方とお会いすると、すごくお若いのに「××開発部長」というような肩書を持って見える方がいます。よくよく聞くと「部下は一人だけなんですけどね〜」とか。「でも部長なんですよね」と持ち上げたりすると、「いや、こういう交渉事も仕事のうちで、その時には肩書があったほうが便利なんですよ」と。そういえばそうだなぁ、と。肩書を利用する名刺の重みを利用しよう課長の自覚と..

議事録をつけると仕事力がアップする

議事録って簡単そうに見えるのですが、仕事の基本的なスキルなので、比較してみると、仕事が出来る人出来ない人では歴然と差があります。私の部門では、議事録を書くことで仕事力のトレーニングをするよう推奨してます。議事録は新人の仕事大抵の場合、議事録係はその会議で一番若い人か、居なければ新人の仕事です。これはOJTを兼ねており、・人の話のポイントを要約する・その議題になっている業務を理解する・PCへの入力速度を早くする・決定事項と単なる話題を見分ける・情報を整理する..

ミーティングチェックリスト

本日は私が使っているミーティング(打ち合わせ)で使うチェックリストを公開します。チェックリストは必須だいたい、「自分は仕事ができる」と勘違いしている人や、「仕事ができるようになりたい」と思っている人はチェックリストというものを使いません。全部頭のなかにあると思っているか、何をチェック(事前準備)するべきかがわかってません。ミーティングが必要だとおもったからミーティングを開催するのであって、人が何を言うか、どういう結論になるかはやってみな..



posted by 管理人 at 07:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 会議術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック