2017年06月21日

議論には「身、事の外に在りて」で対応する

中国の古典で「菜根譚」という本にこんな一説があります

★P〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

・個人の利害を度外視せよ
議論するときには、第三者の立場に身をおいて、十分に利害得失を検討してかからなければならない。実行するときには、当事者として、個人の利害得失を度外視してかからなければならない。
------------------
議事者、身在事外、宜悉利害之情、任事者、身居事中、当忘利害之慮
------------------

守屋洋(著) 『新訳菜根譚: 先行き不透明の時代を生き抜く40歳からの処世
―――――――――――――――――――――★


読み下し文にすると

◇――――――――――――――――――――――――――
事を議する者は、身は事の外にありて、よろしく利害の情を悉(ことごと)くすべし、
事に任ずる者は、身は事の中に居りて、まさに利害の慮(おもんぱか)りを忘るべし

出典:http://www5.airnet.ne.jp/tomy/koten/saikon/saikon_d.htm
――――――――――――――――――――――――――◇


みたいになるそうです。


■自分の意見を言ってはいけない


過去記事でも何度か書いていますが、あまり積極的に自分の意見を言うというのは、処世術としてはあまり好ましくありません。

 会議は最後に発言しなさい
 口論にしない方法
 主張しない
 摩擦を恐れなさい(和をもって貴しとなす)
 人を動かす:人を説得する原則1:議論に勝つ唯一の方法として議論を避ける
 命をかけるに値するかを考えて議論に持ち込む

などでも書きましたが、会議で発言をしないというのは NG ですが、自分の意見をいうときには、相当慎重にしたほうがいいことが多いです。
もちろん、積極的に言うべきときもあるのですが…。

特に自分の意見を言ってはいけないときというのは、誰と誰かが議論しているときに「○○さんはどう思う?」と聞かれた時や、相手が議論することを求めているときです。

複数の意見で議論がされているときに、どちらか一方に加担するような意見を述べたり、それ以外の「第三の案」を述べたりすれば、いままでの議論が否定されたかのようになって、反撃を喰らいます。
さらに議論をするのが目的なときには、意見を言っても言わなくても、その内容が賛成であれ反対であれ、何かしらの議論をぶつけてきます。意見を聞くのが目的ではないので。

それに、なんらかの立場表明をしてしまえば、一貫性の原理が働いて、自分の首を絞めることになりかねません。反撃を食らうと、どうしても自己防衛が働いてしまって、議論から抜けられなくなりますしね。

■発言はするけど意見は言わない


基本的に、議論をふっかけられたり、他の人通しで議論が始まってしまったときには、黙っているのが得策。それでもどうしてもこっちに振られたり、自分が主催者だったりしたときには放置はできませんので、この『新訳菜根譚: 先行き不透明の時代を生き抜く40歳からの処世』に従って、「利害の情を悉(ことごと)く」するのが良いと考えます。

要するに、何をするのかというと、

 「いまの○○さんと○○さんのご意見はこういうことでしょうか」

と議論内容の整理を初めてしまえばいいです。「身は事の外にありて」すなわち、第三者の役割を担えばいいわけです。


つまるところ、発言はするけど意見は言わないのがもっとも安全。つまり、自分の能力を示しながら、足を引っ張られないために、議論を第三者として整理する方向に進むのがよいわけ。

 「身は事の外にありて、よろしく利害の情を悉(ことごと)くすべし」

の部分ですね。

その場に上司がいれば、「議論をうまくまとめる力がある」と認めてもらえるきっかけにもなります。



■参考図書 『新訳菜根譚: 先行き不透明の時代を生き抜く40歳からの処世





立ち読みできます立ち読み可

Unlimitedゼロ円Unlimited無料
経済の低迷、失業者の増加、治安の悪化など、毎日のように流れてくるニュース。社会は今、その根幹となる規範まで揺らいでいる。こんな時代に大切なのは、周りに惑わされない、確固たる自分を持つこと。少々のことには動じないように自分を磨いていく必要があるのだ。では、どうすれば自分を磨くことができるのか? この問いにわかりやすく答えてくれるのが、儒教・道教・禅の教えを融合させた不朽の名著『菜根譚』だ。その名著を、現代におきかえた訳で、わかりやすく解説したのが本書である。





◆アマゾンで見る◆◆楽天で見る◆◆DMMで見る◆

新訳菜根譚: 先行き不透明の時代を生き抜く40歳からの処世
著者 :守屋洋
楽天では見つかりませんでした
新訳菜根譚: 先行き不透明の時代を生き抜く40歳からの処世
検索 :商品検索する



●関連 Web
 名経営者がこぞって読む「菜根譚」の秘密
 菜根譚(さいこんたん, 洪応明, 359条, 随筆集, 処世術)全文を紹介

●このテーマの関連図書


[新訳]大学・中庸

[新訳]孟子

[新訳]荀子性悪説を基に現代人にこそ必要な「礼」と「義」を説く

[新訳]呻吟語

[新訳]老子

[新訳]南洲翁遺訓



■同じテーマの記事

「孫子の兵法」を実践してはいけない

「孫子の兵法」はいろいろな本で触れられる事が多く、いくつかはサラリーマンにとっても意味のあるものがありますので、全面的に否定するつもりもありませんが、基本的にはサラリーマンが読む必要がないものというふうに位置づけてます。すなわち、「孫子の兵法」は戦争(集団同士によるなにかの奪い合い)を指導するものが参考にするために書かれたものであって、イチ兵隊であるサラリーマンがどうこうできるものは少ないです。たとえば、孫子の兵法の冒頭は以下の..

主張する前に相手の主張を聞く

「相手の話をよく聞きなさい」みたいなことをコミュニケーション講座ではよく言われますが、これは、相手が何を聞きたがっているのか、相手の真意を組むという意味で重要だからです。しかし、わたしは別の意味で、重要だと思っています。たとえば、「あなたの部門のさんについて、どう思いますか?」こういう質問をされたことは少なからずあると思います。「どう思うか?」というのはいわゆるオープンクエスチョンで、自分の思うところを聞き出そうとする質問なのですが、この質問の対応には注意が必要..

見勝不過衆人之所知、非善之善者也

孫子の兵法にこんな一節があります。見勝不過衆人之所知、非善之善者也。以下はいつものように勝手にWebから引用『見勝不過衆人之所知、非善之善者也、戰勝而天下曰善、非善之善者也』(勝を見ること衆人の知る所に過ぎざるは、昔の善なる者にあらざるなり。戦い勝ちて天下善なりというは、善の善なる者にあらざるなり)勝利を読み取るのに一般の人々にも分かる程度の理解では、最高に優れている..

知彼知己、百戰不殆

故曰、知彼知己、百戰不殆。不知彼而知己、一勝一負。不知彼不知己、毎戰必殆。読み下し文故(ゆえ)に曰(いわ)く、彼(か)れを知り己(おの)れを知れば、百戦殆(あや)うからず。彼(か)れを知らずして己(おの)れを知れば、一勝一負(いっしょういちぶ)す。彼(か)れを知らず、己(おの)れを知らざれば、戦う毎(ごと)に必ず殆(あや)うし。意味敵の実情を知り、また自軍の実態を知る。そうす..

図解のコツ5:配置を試行錯誤する

前回の記事で、カタマリを置くのにルールはない、ということを書きましたが、パターンはあります。ただ、どれを使うと一番いいのか、あるいは自分で考え出さないといけないのか、が経験値に依存しているということです。カタマリを置くパターン前回、カタマリを置くパターンとして、PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネージメント)分析をご紹介しました。その他のパターンですがこんなものがあります。・マトリクス系・SWOT・重要度・緊急度・バブルチャート・サイク..

posted by 管理人 at 07:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 会議術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック