たとえば天気の良い日と悪い日でものごとの判断結果が違う。涼しく快適な環境と暑苦しい不快な環境では相手の印象が違う。このように無意識のうちに偶然の要因やまったく関係のない環境要因に影響を受けて判断していることがあるのです。
そのことを自覚していないと、思わぬ落とし穴にはまってしま、つことにもなりかねません。
本書は名著『影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか』を始めとする対人心理学を具体事例を用いてわかりやすく解説しています。
本書の中から、判断に影響している心理のポイントを抜粋してみます。
■ポイント抜粋
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ビジネス上の説得においては、お互いの利害が大きく絡むため、慎重にならざるを得ません。不利な条件で合意しないように気をつけようとこちらが思うように、相手側もこちらの説得に対してかなり身構えるものです。
こちらの提案や条件を受け入れてもらうには、まずは身構えた防御姿勢を解除してもらわなければなりません。
自分自身を振り返ってみればわかるように、相手に対して警戒心をもって身構えているときは、相手の説明を素直に受け入れるよりも為批判的な目で検討しようとします。
また、こちらはあまり必要性を感じていない事柄に関する売り込みや提案をされたときなども、まともに耳を傾ける気になれず、適当に聞き流すだけになりがちです。そうした心理状態の相手に対して、いくら資料を準備して説得しようとしても、多くの場合、徒労に終わります。
そこで参考になるのは、心理学者ノールズたちが指摘する、説得への心理的抵抗の 4 つの要因です。ノールズたちは、つぎの 4 つをあげています。
・リアクタンス … 奪われた自由を取り戻そうとすること
・不信 … 警戒心が強く、相手の提案や説明を疑うこと
・吟味 … 相手の提案や説明を慎重に検討しようとすること
・惰性 … めんどうくさがって、なかなか現状を変えようとしないこと
榎本博明(著) 『仕事で使える心理学』
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●合意にもっていくための視点の転換 「損」と見るか、「得」と見るか
「損をしてはいけない」と身構えるときと、「得をするかもしれない」と期待するときでは、交渉に臨む姿勢がまったく異なり、後者の方が、交渉が順調に進みやすいでしょう。
それならば、難航する交渉では、双方が「損失」に目を向けるのでなく「利得」に目を向けられるようにもっていければ、合意の確率は高まるはずです。
ここでは、交渉の枠組みについて考えてみましょう。
利得に目を向け、できるだけ利益を多くしたいといった観点から交渉を行うとき、そこで用いられているのが「正の枠組み」です。
それに対して、損失に目を向け、できるだけ損失を少なくしたいといった観点から交渉を行うとき、そこで用いられているのが「負の枠組み」です。
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:(中略)
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(注:現在の給与が10ドルで、組合ベースアップ要求が12ドルであると仮定)
たとえば、11ドルに対して、組合側が現行の 10 ドルと比べて「1ドルの得」となると受け止め、経営側も組合側の要求額の 12 ドルと比べて「1ドルの得」となると受け止めれば、両者とも譲歩しやすくなります。
このように、どれだけ失うことになるかという受け止め方をする「負の枠組み」を用いるよりいどれだけ獲得することになるかという「正の枠組み」を用いる方が、同じ妥協点であっても、譲歩することへの抵抗感が和らぐのです。
榎本博明(著) 『仕事で使える心理学』
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●「得」より「損」を見るプ口スペクト理論
経済理論にも詳しい心理学者カーネマンのプロスペクト理論では、損失感は利得感よりも意思決定に対して強い影響力をもつと考えます。
損失をできるだけ小さくし、利得をできるだけ大きくしたいというのは、だれもが望むところです。
ただし、私たちは、利得を大きくすることよりも、損失を小さくすることの方に強くこだわる習性があります。
これを「正の枠組み」「負の枠組み」にあてはめてみましょう。
たとえば、私たちは、不確実だけれど大きな利益につながる可能性のある選択肢よりも、少なめでも確実に利益が得られる選択技を選ぶ傾向があります。
利益がいくらか少なくなるよりも、利益が得られなくなることを避けようとするわけです。ゆえに、利益が得られるのであれば、多少の譲歩はしやすくなります。
「正の枠組み」を用いると合意に至りやすいのは、そのためです。
それに対して、損失に目を向けると交渉が難しくなります。私たちは損失を嫌うため、損失をできるだけ小さくする、できれば損失を回避できる可能性にこだわる傾向があります。そのため、一定の損失を確定するよりも、損失が膨らむ可能性がありながらも、もしかしたら損失なしですませられる可能性に賭けてみたくなります。
ゆえに、損失に目を向ける「負の枠組み」を用いると譲歩が行われず、合意が得られにくくなるのです。
榎本博明(著) 『仕事で使える心理学』
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●怒りをあらわにするのはプラスかマイナスか
相手の譲歩を引き出す効果政治やビジネスの交渉の場では、相手側がなかなか譲歩せずに交渉が行き詰まったときに不快感を示したり、ときにあからさまに怒りを表すことで、相手側から譲歩を引き出そうという戦略がしばしば用いられます。
相手が不快感を示したり、怒りを表したりすると、「これは大変だ、何とかなだめないと」と慌て、空気の修復のために譲歩するということが考えられます。でも一方では、「なんだ、その態度は。脅そうっていうのか」と反発心を刺激され、よけいに要求を強めるということも考えられます。はたして交渉が行き詰まったときの不快感や怒りの表出という戦略は有効なのでしょうか。
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:(中略)
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このように、怒りを表すことは、交渉相手を絶対に譲らない攻略しにくい人物とみなすことにつながり、それによって譲歩的な姿勢が強まることが、心理学的な交渉実験によって明らかになっています。
榎本博明(著) 『仕事で使える心理学』
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●部屋の快適さで、人物の評価が変わる
「交渉」とは、その内容で受け入れるかどうかを決めるものですが、どうしても交渉相手の人物の印象が影響します。
誠実で信用できそうな印象か、調子よくいい加減なことを言いそうな印象かで、提示された条件が一緒でも、判断が違ってくることは十分あり得るでしょう。
だからこそ商談の際には、だれもが印象マネジメントに気をつかうわけです。
ところが、その印象が物理的環境に大いに左右されてしまうのです。商談をするには雰囲気の良い店や落ち着いた場所を探すのがよいと言われますが、それにはどんな意味があると思いますか。心理学者グリフイツトによって、そのヒントとなる実験が行われています。
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:(中略)
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快適だったり不快だったりするのは、部屋の条件のせいであって、評価の対象となる人物のせいでないのは、だれでもすぐにわかることです。
それなのに、部屋の快適さによって人物の評価が違ってきてしまうのです。
ここでわかるのは、評価する本人は部屋の快適さに影響されているつもりはないのに、快適な部屋にいると相手を好意的に評価し、不快な部屋にいると相手を否定的に評価するということを、無意識のうちにしてしまっているということです。
好きな音楽が流れているときは、そうでないときよりも、人に対する評価が好意的になるという実験結果もあります。
こうしてみると、快適な環境を用意すると商談がうまくいきやすいというのは真実であり、その理由は、環境による快適さを交渉相手の印象に結びつける勘違いが起こるからと言えるでしょう。
榎本博明(著) 『仕事で使える心理学』
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影響力の使い方講座 - ダイレクト出版
影響力の武器とは?説得するときにはこれ - DCC用語集
影響力の法則 影響力の武器 - YouTube
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