2017年09月30日

多面的交渉術をトレーニングする「ピラミッド交渉力」

おそらく、交渉事が得意という人は少数派なのではないか、という気がしていますが、皆さんどうなのでしょうね?

私はと言うと、交渉事は超ニガテです。
一方で、過去記事でも何度か交渉モノの記事を「えらそうに」書いていますし、それなりに使えていると自分的には思っている部分もあります。いつまでたっても「得意だ」とは思えないところが救えないですが。


本日は、交渉という人間関係のもっとも煩雑な部分にスポットをを当てた本をご紹介。

■紹介


交渉ごとが憂鬱だという人、目先に難しい交渉を抱えており、どう進めるか悩んでいる人が読んでみると、ちょっと前向きな戦略が立てられるかもしれない一冊。

本書では2つの技術について書かれています。

一つ目は交渉相手に対するアプローチ方法

「交渉」というのは、誰かから、自分が期待する何らかの結果を引き出すことです。それをするためには、相手が「YES」と行ってくれる必要があります。

この技術は多くの書籍があります。過去に紹介した

 『影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか
 『人生のすべてにおいてもっとトクをする新しい交渉術
 『すごい交渉術 “交渉の神様"が教えてくれた5つの法則

など多くの書籍で学ぶことができます。

もうひとつの技術が、「交渉の目的とは何か」という点。

これは『すごい交渉術』や『ハーバード流交渉術』でも語られていますが、「なぜ交渉がしたいのか」「どのような目的なのか」を明らかにするプロセスです。

「自分がやろうとしている交渉は何が目的なのか?」という原点に立ち返り、視点を広げるきっかけも与えてくれます。

また、本の後半には交渉力を身につけるためのトレーニング方法があります。
こういうのが好きなんですよ。個人的には。

実際、理論理屈が分かったからと言って、それができるようになるとは別物です。日々のちょっとしたトレーニングこそ、その目標に至る最適な方法です。

目先の小細工的な「技術」ではなく「能力」を身につけ伸ばすもので、これらのトレーニングに触れてみてください。


■概要


●すべり台アプローチ
「すべり台アプローチ」とは立体的思考を行う具体的な方法である。すべり台というのは、すべり台の階段のように目的意識のレベルを上げていき、目的が決まったら手段創出をしてすべり台をすべるというメタファである。
※すべり台という例えが秀逸です。

交渉では相手があるので、相手とあわせてすべり台の階段を上っていき、レベルがあったところで、手段を考える。
抽象的な言葉を使うと、目的が共有できるまで目的のレベルを上げ、レベルがあったところで、手段を考え、実行することによって協調型の問題解決をする。

●3つのアプローチ
アプローチ方法は
 1.「目的のレベル」を上げる
 2.「共感」=目的レベルの一致を確認する
 3.手段を共有して、創発を目指す

注記:
 多くの本では、この1,3は語られますが、2についてはサラッと流している本が多いように感じました。目的を一致させるのは、同じ会社の人であれば、「会社の利益」という点については目的は同じです。一方で、その利益を上げる具体的な方法は所属する部門や考え方の違いでズレが出ます。ここが交渉ねたになるのですが、その途中を共有することを十分しないと結局手段に合意が取れないということですね。

この2で、ZOPA の考え方をベースにすると、相手のレベルの一致が確認できるもっとも接近した高位のレベル(LUL)である。LULの見つけ方として

 A:「貢献の対象」を定義して、そのイメージを明確に示す
 B:「手段」や「下位レベルの目的」に固執することが、相手の「脅威」となることを示唆しながら、相手にとって「目的のレベル」を上げることが本質的なことであることに気づくように導く
 C:相手の自己実現欲求を高める魅力的な成果のイメージを示す

ことが必要である。

●トレーニング方法
5つの力を強化する必要がある。

 1.抽象化能力:物事の本質的な部分を抽出して、その関係性や全体の構造を表現する能力
 2.メタ認知力:自分の行動を客観的に認識して修正する能力
 3.説明力:相手の理解レベルに応じて、物事や事象の内容を自在に表現する能力
 4.シナリオ力:特定の情報に対する相手の反応、意識レベルの変化などの展開を先読みする能力
 5.情報整理力:特定の情報を活用するために、時間とともに変化する情報を捉えて体系的に整理する能力

この他に、関連能力として

 ・文脈整理力
 ・質問力
 ・傾聴力
 ・観察力
 ・感情のコントロール力

を獲得することが重要。

■インタレストポイント


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交渉は「勝ち負け」ではないと考えるのです。「交渉」の過程でお互いが「共感」して理解し合い、「交渉」の結果、相手と自分が互いに満足することを想像してください。どんなに素晴らしいことでしょうか。そう、互いの「共感」と「満足」からは多くのことが生まれるのです。

峯本展夫(著) 『ピラミッド交渉力 「立体的 多面的思考」で「本物」の交渉力を身につける
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交渉の成功には、論理だけではない「何か」があることは確かです。
その「何か」とは、私たちの誰もが持っている「知覚」だと考えています。
 :
 :(中略)
 :
無名の空手家の言葉に『型は美、技は心』というものがあります。体系化された同じ型を学んでも、

それを「技」として活かすことができるのは、その人の“人となり”なのです。私は、“人となり”とは、その人の“信じる心”、つまり信念だと考えています。この“信じる心”は知覚に影響を及ぼし、私たちが、そこに何を見るのか、見ないのかを決定づけているのです。「この交渉を必ず成功させる」というような信念があるかないかで、交渉の場で見える世界は異なってくるのです。

「ピラミッド交渉力」とは、「交渉の成功」を「相互満足(WIN-WIN)」と考え、お互いの「共感」と「協力」を導き出し、お互いが「満足」する合意案を達成する交渉力のことです。このような「共感」や「協力」が論理的アプローチだけで得られることはないのです。

峯本展夫(著) 『ピラミッド交渉力 「立体的 多面的思考」で「本物」の交渉力を身につける
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マズローが欲求の5段階説で示したように、人は誰でも「自己実現欲求」を持っているものです。

相手が自分の属する組織の利益代表であって、その責任感の大きさに関わらず、「もっと本質的なことに取り組みたい」とか「社会のために貢献したい」というような想いがあるはずです。

このあたりを刺激するように「目的のレベル」を上げるテーマを持っていくのです。ただし、むやみに刺激するのではなく、相手の立場や責任を第一に尊重することがポイントです。

峯本展夫(著) 『ピラミッド交渉力 「立体的 多面的思考」で「本物」の交渉力を身につける
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「未来の目標」とは、「高い目的意識」のことです。これは、たとえば、「ピラミッド交渉力」を目先の交渉の道具として考えるのではなく、「ピラミッド交渉力」を身につけて、ビジネスに限らず人生で関わる相手と良好な関係を作り、次々と新しいアイディアを生み出していく素晴らしい未来を手に入れるんだというようなイメージです。

峯本展夫(著) 『ピラミッド交渉力 「立体的 多面的思考」で「本物」の交渉力を身につける
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■参考図書 『影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか




人が「イエス」という仕組みを心理学を使って科学的に分析し、実際に応用可能なレベルにまで高めた本。
社会心理学者の口バート・ B ・チャルディーニ氏は、宗教や悪質なセールス、募金の勧誘、広告主などありとあらゆる「承諾誘導」の専門家の手口を研究し、彼らの手口は基本的に 6 つの力テゴリーに分類できることをつきとめた。心理学の専門書であるが、ビジネスからプライべートまでその応用範囲は極めて広い。
現在の心理学を応用した仕事術、交渉術、会話術などの本のほとんどすべてがこの本に書かれている。





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影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか
著者 :ロバート・B・チャルディーニ
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●関連 Web
 影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか』の[第三版] - マインドマップ的読書感想文
 影響力の使い方講座 - ダイレクト出版
 影響力の武器とは?説得するときにはこれ - DCC用語集
 影響力の法則 影響力の武器 - YouTube
 影響力の武器:マネジャーとしての影響力は、どうすれば発揮できるのか?-Bizトレンド

●本書を引用した記事
 仕事で使える心理学4:ポイント抜粋―ストレスに対応する
 仕事で使える心理学3:ポイント抜粋―リーダーにとって必要なこと
 仕事で使える心理学2:ポイント抜粋―判断に影響する心理
 仕事で使える心理学1:詳細目次
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 人を動かす:相手の話を聞くときには手を止めなさい
 やる気が出る11のヒント
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●このテーマの関連図書


影響力の武器実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣

影響力の武器戦略編:小さな工夫が生み出す大きな効果

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シュガーマンのマーケティング30の法則お客がモノを買ってしまう心理的ト…

影響力の武器コミック版

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■参考図書 『すごい交渉術 “交渉の神様"が教えてくれた5つの法則




グーグル、マイクロソフト、JPモルガンなど世界的大企業に交渉戦略をアドバイスしている「交渉の神様」ことスチュアート・ダイアモンド氏。
そんな交渉の神様から直接「交渉のいろは」を教わった豊福氏が、 自身の実践例を紹介しながら、交渉の必勝法を解説する。

交渉術の世界的専門家であり、グーグル、マイクロソフト、JPモルガンなどの多くの優良大企業や、 国連、世界銀行などの公的機関に交渉戦略のアドバイスしているスチュアート・ダイアモンド氏。また名門ペンシルベニア大学ウォートン・ビジネススクールの教授でもあり、 彼のMBAコースでの講義は同校で15年連続人気ナンバーワンとなっている。

そんな「交渉の神様」とも呼べるスチュアート・ダイアモンドから、直接「交渉のいろは」を教わった豊福公平氏。
もともと人見知りで口べた、なかなか営業成績が上げられなかった保険セールスマンであったが、「交渉の神様」から教わったノウハウをそのまま実践したところ、またたく間に営業成績が上昇。プルデンシャル生命時代には入社以来毎年、社長杯入賞、MDRTも毎年入会するほどのトップセールスマンにまで上り詰めることが出来た。

本書では、そんな豊福氏が、「交渉の神様」とも呼べるスチュアート・ダイアモンド氏から受け継いだ「交渉の成功法則」を自身の成功物語を紹介しながら、わかりやすく紹介するものである。





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すごい交渉術 “交渉の神様"が教えてくれた5つの法則
著者 :豊福公平
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自分が変わるための15の成長戦略:人は何のために生きるのか、働くのか(単…

ウォートン流人生のすべてにおいてもっとトクをする新しい交渉術





■参考図書 『人生のすべてにおいてもっとトクをする新しい交渉術





立ち読みできます立ち読み可
グーグルが社員教育に利用している交渉術
個人から政府間の交渉に至るまで、あらゆる難題をまとめてきた交渉の達人が、ウォートン校での人気講座をベースに伝授する交渉の極意。オフィスから家庭まで、誰もが何かしら参考になる例が満載。

第1章 これまでとはまったく違う交渉術
第2章 交渉の半分は「人」で決まる
第3章 認識とコミュニケーション
第4章 非協力的な相手と交渉する
第5章 不等価交換
第6章 感情
第7章 問題解決のためのゲットモア・モデル
第8章 文化の違いに対処する
第9章 職場でゲットモア
第10章 買い物でゲットモア
第11章 人間関係
第12章 子どもと交渉する
第13章 旅行先でゲットモア
第14章 街中でゲットモア
第15章 社会問題





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人生のすべてにおいてもっとトクをする新しい交渉術
著者 :スチュアート・ダイアモンド

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●本書を引用した記事
 二者択一から逃れる
 メールに感情を入れる
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■参考図書 『ピラミッド交渉力 「立体的 多面的思考」で「本物」の交渉力を身につける





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◆プロジェクトマネジメントのカリスマ講師が「交渉力」の真髄を初公開!





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ピラミッド交渉力 「立体的 多面的思考」で「本物」の交渉力を身につける
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posted by 管理人 at 23:42| Comment(0) | ビジネス書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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