『ピアニストの脳を科学する』
によると、ピアニストになるような人は、3〜4歳位からトレーニングを始め、20歳になるまでに1万時間以上ピアノを引くそうです。
すごいですね〜。
まあ、大した取り柄があるわけでもない凡サラリーマンにとっては、「何もそこまで…」と思わなくもないですが、その中からさらに選抜されて一流が生まれるというのは感慨深いですね。
■イメージトレーニングの効果
で、ピアニストではないですが、本書の中にこんなイメージトレーニングの効果が載っていました。
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スポーツの世界では「イメージ・トレーニング」という言葉がよく使われます。本番(試合)での緊張をやわらげ、100%の力を発揮するための、メンタルなトレーニングというだけでなく、最近では、自分の身体の動きを頭の中で鮮明にイメージすることによって、運動機能が実際に高まる、ということも知られています。
(中略)
ハーバード大学のパスカル・レオーネ教授らはこの問いに答えるために、まったくピアノを弾いたことのない人を3つのグループに分けて、興味深い実験をおこないました。
1つめのグループは、5日間、毎日2時間、実際にピアノを弾いて練習する。2つめのグループは5日間、毎日2時間、「実際にピアノを弾いている指の動きを思い浮かべる」、つまりイメージ・トレーニングをする。3つめのグループは5日間特に何も練習せずに、ふだんどおりの日常を過ごす。
そして、指の動きをつかさどる脳部位の働きがどう変化したかを、TMSを使って調べました。
3つのグループの中で、指を動かす神経細胞の働きが最も向上したのは、当然、毎日2時間ピアノを弾いて練習したグループでした。しかし意外なことに、イメージ・トレーニングをしたグループも、指を動かす神経細胞の働きが向上していたのです。そのため、実際のパフォーマンスの向上も見られました(指がより速く正確に動くようになる、など)。
古屋 晋一(著) 『ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム』
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いかがでしょう?
要は、実際にピアノを弾かなくても、イメージでピアノを引いたつもりになるだけで練習の効果は上がるのだそうです。
そういえば、よく音楽を演る人はシャドウイングみたいなことをしていますね。エアギターとか。
あれはあれでちゃんと科学的な根拠があったんだ…。
そういえば、ポーランドのピアニスト、パデレフスキーがこんな名言を残しています。
練習を一日休むと自分にわかる。
二日休むと批評家にわかる。
三日休むと聴衆にわかる。
ちなみに、本書によると、「ピアノを学ぶ学生のうち、2年間でスキルが向上した学生は、1日平均で 3 時間 45 分以上練習していた」ということで、イメージトレーニングを含めるともっとすごいんだろうなあ、と。
■トレーニングをする、トレーニングを継続する
能力を向上する、成長させるだけではなくて、「能力を維持する」「老化を防ぐ」という意味でも、日々のトレーニングは大事なことだと考えます。トレーニングを中断したりすれば、その能力は衰えいくでしょう。
もちろん、トレーニングを目的にして、なんか修行のようになってしまっても意味はありません。
「どのような目的で、どのようにトレーニンするか」ということも大切です。
でもその前に、まず「とにかくトレーニングの時間を確保する」ということが大事なのです。
スポーツジムでも、確かに運動内容によってはそんなに効果がないというものもありますが、「トレーニングの時間を取らない」ということが一番の悪癖です。
練習のための器具が使えない車内や徒歩中でも、その器具を使わない簡単な運動をするようにしたり、全く何もできない状態でもイメージトレーニングを欠かさなかったりと、少しでも練習に近いことを実行するようにするといいかもしれません。
毎日きちんと実行しているか、毎日何かしら鍛錬をしているか。
それだけで数日後、数年後の能力に違いが出るかもしれません。
自分たちの仕事の能力を向上させるために、「毎日これだけの鍛錬をしている」と自信を持って言えることはあるでしょうか?
たとえば、キーボードをタイプするのが仕事の一部なら、キータイプの正確さを上げるために、まいにちブラインドタッチの練習ソフトを使うのはいかがでしょうか。
ちなみに私のタイピング練習のサイト
https://typing.twi1.me/
が結構お気に入りだったりします。
■イメージトレーニングする
もちろん、実際にキーボードがないときにキータイプのトレーニングはできません。つまり、コンテキスト(状況)に依存するものも少なくありませんが、イメージトレーニングなら時間や場所を必要としません。
なにかに習熟しようと思ったら、そうしたイメージトレーニングをちょっとした空き時間やってみる、会議室に移動しているときにイメージを浮かべてみるなどをしてみるといいかもしれません。
たとえば、
・会議でいま考えていることを発言している様子
・自分の得意分野についてプレゼンをする
・今の重要な課題を上司に手短に報告しているところ
なんてものです。ほとんど空想に近くてもそれはそれなりに役に立つような気がします。
■参考図書 『ピアニストの脳を科学する: 超絶技巧のメカニズム』
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