2020年03月16日

タスクに分解する軸を作る




業務の目標を分解するときにはWBSに代表されるような方法でタスクに分解していきます。ただ、こうしたタスクの分解のためのツールは、汎用的な説明が多いために、実際にはタスクに分解することがうまくできない人が多いようです。

私は、よくプロジェクトの計画化のお手伝いをすることがあるのですが、なかなかプロセス(プロジェクトより小さな単位の業務のカタマリ)やタスク(最小の業務の単位)に分解することがうまくできないと詰まってしまうとか、全てのタスクを抽出することができずに見積工数が甘くなる、プロジェクトの実行中に新たなタスクが必要になるなどの場面をよく見かけます。


プロジェクトを実行する側の人であれば、それでも業務はこなせますが、リーダーやマネージャともなれば、これは致命的です。「○○月までにできます」と言っておきながら、途中で「重要な業務が抜けていたので、人員の増強をお願いします」「実は計画が杜撰で納期に間に合いません」ということを上司に報告しなければいけない羽目になります。これはマネージャとしては「どういう計画を立てているのだ?」と言われかねません。

どのようなタスクがあるかを細大漏らさず抽出していくためには、ひとつのプロジェクトを多数の軸で見るという指針が役に立ちます


たとえば、軸を「時間」におけば、そのタスクを時系列に並べるとプロジェクトの計画表、すなわちガントチャートが出来上がります。またそれ以外の軸で考えれば、チェックリストになったり、分析チャートになったりします。

どうもこの「軸」を変えることができないで、タスクの抽出に失敗する人が多いようです。「軸」は「切り口」と言ってもいいかもしれません。

何かのゴール(プロジェクト)に対して、タスクや必要なリソースを考えるときにマインドマップ(後述)を使って、いくつかの軸で必要なことを思い出すようにすると効果的な作業分解ができるようになります。以下は私が使っている軸のサンプルです。

 ・ハードウエア要素(必要なモノ)
 ・ソフトウエア要素(必要な形のないもの)
 ・時間
 ・開発ステップ、作業
 ・5W2H
 ・利益、便益、コスト、メリット
 ・成果物ベース要素
 ・材料ベース要素
 ・活動要素(どんな活動が必要か)
 ・知識(どんな知識が必要か)、スキル(どんなスキルが必要か)
 ・人(関係者、関係部署、関係グループ、影響を受ける人)
 ・課題、気になること
 ・リスク、環境変化

これらについて、思いつくことをあげていきます。さらにその思いついたことから連想する別のことも、とにかく思いつくことすべてをあげていきます。ひとつの軸を一気に作るのではなく、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしながら、前に書きだしたものから連想をしながら書き出していきます。

こうすると、抜け漏れがすごく少なくなります。

もちろん、必要に応じて付け足すこともしていますが、最初にこうした事を考えておくと、連絡漏れが少なくなり、抜け漏れのタスクが後で発見されるというリスクが少なくなります。

以下では、この連想的な発想法を支援する非常に強力なツール、マインドマップについてご紹介します。
こうしたツールで作った情報は再利用ができます。過去の資産の活かすテンプレート化についてもご紹介します。最初は時間がかかるかもしれませんが、こうして再利用することによって、次のプロジェクトからはより短時間に、より品質の高いタスク分解ができるようになります。


■マインドマップ


マインドマップとは、マインドマップ(英: mind map, mindmap)とは、トニー・ブザンが提唱する、思考の表現方法です。頭の中で考えていることを脳内に近い形に描き出すことで、記憶の整理や発想をしやすくすることができるようになっています。


私はXmindというツールを使っています。以下のURLからダウンロードできます。フリー版とPro版(有償版)があります。

   Xmind
   http://jp.xmind.net/

Xmindに限りませんが、マインドマップというツールは、目標設定編でご紹介したとおり、頭の中にあるキーワードを連想的に並べていくことができ、思考の動きにしっかり追従した言語化や見える化をしてくれるので、もし使ったことがない、あるいは使いこなせていない方はぜひ勉強しておくことをおすすめします。発想が格段に広がっていくことを実感できると思います。本を読んだだけでは身につきませんのでセミナーなどで勉強されることをおすすめします。

■テンプレートを作る


初めてこれらの分解をするときには、軸の下にどのような項目を入れていくのがいいか分かり難いので時間がかかると思いますが、慣れてくると割合簡単に作れるようになります。

コツは、テンプレートを作ることです。ようは、過去にやったプロジェクトのタスクをすべてこのマインドマップに当てはめてみてグルーピングしてみることです。グルーピングしたらそこに名前をつけます。そして更にそれをグルーピングしてみることです。最後にプロジェクトに直接結びつくまでにグルーピングできると、おおよそ前述のような多数の軸が出来上がっていると思います。

プロジェクトは、目標が違ってもやることを抽象化していくと、同じようなことがたくさんあります。例えば、Aプロジェクトで最初にやるべきなのはキックオフミーティング(全員を集めて、それぞれの人にプロジェクトへのコミットメントを語ってもらう)などは、Bプロジェクトでもやることは同じですよね。ただ、集める人と語ってもらうテーマが違うだけです。

具体的に言えば、「人」という軸で考えるときには、直接関係者、間接関係者、業務知識を持っている人、活動に責任をもつ人、みたいなグループができて、更にその下に部門、課、人名などが来るはずです。またスキルと言う軸で言えば、組み込み技術、電子技術、Web技術、ヒューマンアクセシビリティ、メカ技術などが上げられます。そこにまた人やスキルレベルで分けるなどの分解ができます。そうしたグループを作っておいて、新しいプロジェクトを計画するときに、そのグループは新しいプロジェクトでは必要かどうか、必要なら誰にお願いするのが適切か、いつやるのが適切かを考えていくわけです。

こうしておくと、例えばプロジェクトをキックオフするときに、もれなく連絡ができますし、その後、「自分にも連絡をください」と行ってきた人や、キックオフ時に「他に関係しそうな人を紹介してください」といえば、新しく関係者リストを更新できます。

私は、上記のような考えるべきことがマインドマップを書いたファイルを用意しておいて、新しいプロジェクトをスタートするときに、これをコピーしては使っています。さらにこれを実際のプロジェクトに適用している時に、新しい項目や軸を思いつけば、この汎用マインドマップにちょっと抽象化した表現で書き加えていくので、やればやるほど抜け漏れがなくなっていきます。
こうすることで、プロジェクトを経験するたびに、予測精度が上がり、予測ミスによるトラブルが減少していきますので、プロジェクトの遂行速度や品質が向上していきます。


◆このテーマのおすすめ図書


俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方

マンガでわかるプロジェクトマネジメント

できるYouTuber式Excel現場の教科書

なるほどデザイン〈目で見て楽しむ新しいデザインの本。〉

テンプレート仕事術―日常業務の75%を自動化する

俺のフィロソフィ仕組みで勝って、人で圧勝する俺のイタリアンの成功哲学

■同じテーマの記事

「やりたい」が見つかる秘訣

過去記事でも何度か紹介しましたが、「自分が本当にやりたいことってなんだろう」っていうのが過去の自分の悩みでした。成功本などを読むと、「どうしてもやりたいこと」というテーマがあって、それに向かって突き進めと書いてあるのですが、どうやったら「どうしてもやりたいこと」がわかるのかっていうのは、「考えろ」程度にしか書いてない。でも、「やりたいことはありません」というのも寂しいですし、年のはじめに、ちょっと落ち着いて考えてみませんか。..

スケジュールで決済のためのバッファを設ける

何かの稟議をとうすためには、上司やそのまた上司、さらにそのまた上司・・・に決済してもらうことが必要です。ところが総じてこうした役職が上に行くほど決済のための時間を取ってもらえなくなります。忙しいんです。本当に忙しくて決済印を押す時間もないかどうかは、そんなに偉くないので知りませんが…(^^;;私の専門である IT 関連でも、何かのシステムを導入するとなると何千万円なんて簡単に行ってしまいます。そうすると、重役や社長の決済が必要で、その方々に説明するだけの資..

記憶の10の基本原則

一度聞いただけなのに案外記憶に残っていることと、何度聞いても覚えられないことってあります。その違いは何でしょうか?記憶の力を高めるものマインドマップはもともと記憶の研究の中で生まれたものらしいので、記憶をするというテーマで書かれているものが結構あります。ここでご紹介しているものもそのひとつ。記憶の力を高めているのは、大きく・初頭効果、新近効果・連想・興味があること・繰り返しなのだそうです。..

上司にもアポイントメントを取る

上司になにかの相談をするときには、原則上司に打ち合わせの予約を入れるようにしています。もちろん、緊急事態であったり、至急決済がっほしいなどというときには、いきなり話しかけることもありますが、上司には上司の都合や仕事のタスクがあり、表面上はいざしらず、いきなり何十分も時間を取られるのはあまり気持のいいものではないからです。単なる報告だけで、1〜2分で終わるようなものなら、基本はメールで済ませます。上司から質疑や意見があ..

記憶力を高める

人間はどうやってものごとを学習したり記憶したりしているのでしょうか?もし、これがうまく制御できたら、便利だと思いません?・昨日出張に行ったけど、タクシーの料金っていくらだったっけか?・昨日あったあの人。名前なんだったかな?・あれ?今日の予定で入っていたミーティング、何時からだった?などなど、管理人は、自分の記憶力の悪さには特上級の自信があったりします。認知行動学人間の頭のなかはどうなっているのか、学者さんたちは一生懸命研究をしてくれています。その成果は..

思考フレームワーク

ビジネスマンとして、思考力を鍛えたいと思う方は多いみたいですが、何をどのように鍛えればビジネスマンとして思考力がついたといえるのでしょうか?Yahoo質問箱なども時々見てますが、やっぱりこういったことを考える人は結構みえるみたいですね。そこで、本日は何かのハックではあなく、ビジネス思考力について考えてみたいと思います。思考の6段階教育学者でベンジャミン・ブルームという学者さんが思考の6段階モデルというのを提唱したそうです。..

posted by 管理人 at 20:21| Comment(0) | 発想法・アイディア術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: