業務の目標を分解するときにはWBSに代表されるような方法でタスクに分解していきます。ただ、こうしたタスクの分解のためのツールは、汎用的な説明が多いために、実際にはタスクに分解することがうまくできない人が多いようです。
私は、よくプロジェクトの計画化のお手伝いをすることがあるのですが、なかなかプロセス(プロジェクトより小さな単位の業務のカタマリ)やタスク(最小の業務の単位)に分解することがうまくできないと詰まってしまうとか、全てのタスクを抽出することができずに見積工数が甘くなる、プロジェクトの実行中に新たなタスクが必要になるなどの場面をよく見かけます。
プロジェクトを実行する側の人であれば、それでも業務はこなせますが、リーダーやマネージャともなれば、これは致命的です。「○○月までにできます」と言っておきながら、途中で「重要な業務が抜けていたので、人員の増強をお願いします」「実は計画が杜撰で納期に間に合いません」ということを上司に報告しなければいけない羽目になります。これはマネージャとしては「どういう計画を立てているのだ?」と言われかねません。
どのようなタスクがあるかを細大漏らさず抽出していくためには、ひとつのプロジェクトを多数の軸で見るという指針が役に立ちます
たとえば、軸を「時間」におけば、そのタスクを時系列に並べるとプロジェクトの計画表、すなわちガントチャートが出来上がります。またそれ以外の軸で考えれば、チェックリストになったり、分析チャートになったりします。
どうもこの「軸」を変えることができないで、タスクの抽出に失敗する人が多いようです。「軸」は「切り口」と言ってもいいかもしれません。
何かのゴール(プロジェクト)に対して、タスクや必要なリソースを考えるときにマインドマップ(後述)を使って、いくつかの軸で必要なことを思い出すようにすると効果的な作業分解ができるようになります。以下は私が使っている軸のサンプルです。
・ハードウエア要素(必要なモノ)
・ソフトウエア要素(必要な形のないもの)
・時間
・開発ステップ、作業
・5W2H
・利益、便益、コスト、メリット
・成果物ベース要素
・材料ベース要素
・活動要素(どんな活動が必要か)
・知識(どんな知識が必要か)、スキル(どんなスキルが必要か)
・人(関係者、関係部署、関係グループ、影響を受ける人)
・課題、気になること
・リスク、環境変化
これらについて、思いつくことをあげていきます。さらにその思いついたことから連想する別のことも、とにかく思いつくことすべてをあげていきます。ひとつの軸を一気に作るのではなく、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしながら、前に書きだしたものから連想をしながら書き出していきます。
こうすると、抜け漏れがすごく少なくなります。
もちろん、必要に応じて付け足すこともしていますが、最初にこうした事を考えておくと、連絡漏れが少なくなり、抜け漏れのタスクが後で発見されるというリスクが少なくなります。
以下では、この連想的な発想法を支援する非常に強力なツール、マインドマップについてご紹介します。
こうしたツールで作った情報は再利用ができます。過去の資産の活かすテンプレート化についてもご紹介します。最初は時間がかかるかもしれませんが、こうして再利用することによって、次のプロジェクトからはより短時間に、より品質の高いタスク分解ができるようになります。
■マインドマップ
マインドマップとは、マインドマップ(英: mind map, mindmap)とは、トニー・ブザンが提唱する、思考の表現方法です。頭の中で考えていることを脳内に近い形に描き出すことで、記憶の整理や発想をしやすくすることができるようになっています。
私はXmindというツールを使っています。以下のURLからダウンロードできます。フリー版とPro版(有償版)があります。
Xmind
http://jp.xmind.net/
Xmindに限りませんが、マインドマップというツールは、目標設定編でご紹介したとおり、頭の中にあるキーワードを連想的に並べていくことができ、思考の動きにしっかり追従した言語化や見える化をしてくれるので、もし使ったことがない、あるいは使いこなせていない方はぜひ勉強しておくことをおすすめします。発想が格段に広がっていくことを実感できると思います。本を読んだだけでは身につきませんのでセミナーなどで勉強されることをおすすめします。
■テンプレートを作る
初めてこれらの分解をするときには、軸の下にどのような項目を入れていくのがいいか分かり難いので時間がかかると思いますが、慣れてくると割合簡単に作れるようになります。
コツは、テンプレートを作ることです。ようは、過去にやったプロジェクトのタスクをすべてこのマインドマップに当てはめてみてグルーピングしてみることです。グルーピングしたらそこに名前をつけます。そして更にそれをグルーピングしてみることです。最後にプロジェクトに直接結びつくまでにグルーピングできると、おおよそ前述のような多数の軸が出来上がっていると思います。
プロジェクトは、目標が違ってもやることを抽象化していくと、同じようなことがたくさんあります。例えば、Aプロジェクトで最初にやるべきなのはキックオフミーティング(全員を集めて、それぞれの人にプロジェクトへのコミットメントを語ってもらう)などは、Bプロジェクトでもやることは同じですよね。ただ、集める人と語ってもらうテーマが違うだけです。
具体的に言えば、「人」という軸で考えるときには、直接関係者、間接関係者、業務知識を持っている人、活動に責任をもつ人、みたいなグループができて、更にその下に部門、課、人名などが来るはずです。またスキルと言う軸で言えば、組み込み技術、電子技術、Web技術、ヒューマンアクセシビリティ、メカ技術などが上げられます。そこにまた人やスキルレベルで分けるなどの分解ができます。そうしたグループを作っておいて、新しいプロジェクトを計画するときに、そのグループは新しいプロジェクトでは必要かどうか、必要なら誰にお願いするのが適切か、いつやるのが適切かを考えていくわけです。
こうしておくと、例えばプロジェクトをキックオフするときに、もれなく連絡ができますし、その後、「自分にも連絡をください」と行ってきた人や、キックオフ時に「他に関係しそうな人を紹介してください」といえば、新しく関係者リストを更新できます。
私は、上記のような考えるべきことがマインドマップを書いたファイルを用意しておいて、新しいプロジェクトをスタートするときに、これをコピーしては使っています。さらにこれを実際のプロジェクトに適用している時に、新しい項目や軸を思いつけば、この汎用マインドマップにちょっと抽象化した表現で書き加えていくので、やればやるほど抜け漏れがなくなっていきます。
こうすることで、プロジェクトを経験するたびに、予測精度が上がり、予測ミスによるトラブルが減少していきますので、プロジェクトの遂行速度や品質が向上していきます。
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