タスク管理の手法は、古くから様々な方法が提案されています。本書ではGTD(Getting Things Done)という手法を中心に説明をしていきますが、最初にGTD以外の手法について概説しておきます。
タスク管理の手法は、どのような手法を用いたとしても前述したとおり、いくつものタスクを管理することによって、効率的に目標を達成するためのものです。そのために、ひとつのタスクに集中できる状態を作り、タスクを実行する順序を制御します。
したがって、どのような手法であっても、自分の仕事や性格にあったものであれば問題ありません。
タスク管理の手法は、古くから様々な方法が提案されています。本書ではGTD(Getting Things Done)という手法を中心に説明をしていきますが、最初にGTD以外の手法について概説しておきます。
タスク管理の手法は、どのような手法を用いたとしても前述したとおり、いくつものタスクを管理することによって、効率的に目標を達成するためのものです。そのために、ひとつのタスクに集中できる状態を作り、タスクを実行する順序を制御します。
したがって、どのような手法であっても、自分の仕事や性格にあったものであれば問題ありません。
ファーストタスク法
今日(あるいは、これから)取り掛かるタスクを決めておき、さまざまなタスクや用事に優先してこのタスクを実行するというタスクの管理方法です。
一般的には、朝一番というのが体力・集中力が最も充実した時間であり、外部からの鑑賞が入りにくいことから、朝一番で最もやりたいタスクを完了させるというのが、ファーストタスク法の考え方になります。
現行の執筆、試験勉強、領収書の整理など、毎日コツコツすすめるようなタスクに適しています。
トレイシステム
トレイとは、書類を入れておく箱のことを指します。基本的には書類をベースにしたタスク管理の方法ですが、PC内で管理するようなタスクにも応用できます。たとえば、タスクを1件ずつファイル化し、保存フォルダをトレイに見立てて実施していくようなことができます。
トレイシステムでは3つのトレイを使います。
- 未処理トレイ:発生した時点の書類を入れておく
- 処理済みトレイ:処理が終わった書類を入れておく
- 保留トレイ:さらなる情報や検討が必要な書類を入れておく
最初に発生時点では、「未処理トレイ」 に入れておき、作業を始めるときに「未処理トレイ」から書類を取り出して、作業が終わったら「処理済みトレイ」にいれます。もし何らかの理由で作業が継続できないとき(さらなる情報や検討が必要になった場合)には、保留トレイに入れます。未処理トレイに戻してはいけません。
状況によって書類の置き場を変えることで、居間やるべきことと、そうでないことを明確に切り分けることができるようになります。
PC上等での管理を考えると、それぞれのトレイは、タスクリストの役割を持っていることになります。
- INBOXについて
トレイシステムで使用する「未処理トレイ」はこのあとに紹介する多くの方法でも採用されています。とくに「未処理トレイ」の手法は多くの手法で「INBOX」と呼ばれています。
これは、「未処理トレイ」の考え方を拡張したもので、あるシステム内に入ってきた、まだ何もされていない情報を入れる場所を示す概念になっています。
よくメールアプリなどでも、INBOX(受信箱) と呼ばれる名前がついていることがあります。
このようなINBOXは、未処理完検の一時保管場所、という意味で扱われたり、タスク発生場所であったりします。このINBOXをいかに扱うかがタスク管理の最初の課題になります。
INBOX-ZERO法
マーリン・マンが発案し、『INBOX Zero: Cutting Through the Crap to Do the Work That Matters』(ISBN= 978-0061953798)で発表した方法です。INBOXの考え方を補強するもので、簡単に言えば「(極力)INBOXの中身を空っぽの状態にしておく」というシンプルな指針の方法です。
たとえば受信箱にメールが溜まってくると、いちいちタスクとしてタスクリストに登録するのではなく、受信箱にメールを置いたままにしておき、その中から次にやることを探すようになります。受信箱がタスクリスト化してしまい、実際のタスクリストと合わせて複数のタスクリストが存在する状態になります。
その結果、どのタスクリストに従ってタスクを実行していけばいいかわらからなくなり、タスクリスト信頼性が下がるために、タスクが実行されなくなったり、重要なタスクが見落とされたりする危険が生じます。
さらに、INBOXはオープンリスト(どんどん勝手に追加されていくリスト)なので、常時新しい案件が流れ込んできます。どれだけ実行してもそのリストは「終わり」にはなりません。どこかの瞬間に中身がゼロになっても、新しいメールが入ってきた途端、タスクが発生してしまいます。INBOXは終わりのないタスクリストなのです。
そこで、受信箱をタスクリストとして使うのをやめ、中にあるメールを〈処理〉して、INBOXを空にすることを一つのタスクに設定します。この場合の処理とは、2分でできることは実行する、タスクを見定めリストに追加する、資料だけ取り出してアーカイブする、といった行為のことです。(これはGTDでも引き継がれています)。
一旦そうしてゼロにしたら、次にINBOXを処理するときまではINBOXのことは考えずに、本来のタスクリストに取り組むことによって、作業効率を上げることが可能になります。それは、自分が状況をコントロールしている感覚に強く影響を与え、作業に対する集中力も上げることができるようになります。
常に何かが流れ込んでくるINBOXに振り回されるのではなく、自分が状況に作用を与えられる主体感を取り戻すための手法。それがINBOX-ZEROです。
ちなみに、本書の「コツ」のところにも述べますが、INBOX-ZEROを実現するためには、
- そもそもINBOXに入ってくる情報(メールなど)を減らす
- INBOXを確認する頻度を減らす
- INBOXを確認するときには、一気に全部処理する
ことに注意すると良い結果が得られます。
GTD
デビッド・アレン(David Allen)が提唱するタスク管理の手法です。Getting Things Doneがフルネームですが、GTD(ジーティーディー)という呼び方が一般的です。
『ストレスフリーの仕事術』(デビッド アレン(著)、二見書房;ISBN=978-4576060736)という書籍で紹介されています。その後、いくつかの続編や類書が発売されていますので、読んでいただけると本書の内容もより深く理解でき、応用もしやすくなります。
ここでは『ストレスフリーの仕事術』(デビッド アレン(著)、二見書房;ISBN=978-4576060736)で紹介されている方法を簡単にご紹介します。
GTDは「気になること」をすべて書き出し、それらを適切なリストに配置した後で、必要に応じてそのリストを参照しながらタスクを実行していく、というワークフローを持ちます。このようなアプローチは他のタスク管理手法にも見受けられますが、GTDを特徴づけるのは、その後のプロセスです。
GTDを特徴づけているのは、
- 「処理」と「実行」を異なるものとして分けて扱っていること
- 定期的なレビューを処理プロセスの中に組み込んだこと
- プロジェクト、依頼リスト、待機リスト、次のアクションリストのように、タスクリストを分類分けしていること
があります。
特に、定期的な「レビュー」については、その後の多くの手法に影響を与えました。
レビューは、リスト群のメンテナンスであり、その行為に直接的な生産性はありませんが、定期的に実行することで、タスクリストを常に良い状態に保つ事ができるため、本書でも採用しています。
ポモドーロテクニック
「ポモドーロ」とは、イタリア語でトマトを意味する言葉で、この手法ではキッチンタイマーのように一定時間をカウントダウンできるタイマーを使い、キッチンタイマーの代表的デザインにトマトのデザインが多かったことから、このような名称がついています。
まず25分のタイマーをセットし、その25分間だけは単一のタスクに集中して実行します。その後5分の休憩を入れます。この30分(25+5分)を1セット(1ポモドーロという単位)にして、タスクの実行を続けていきます。
その他の実行手法でも、タイマーを使うものはありますが、それらとポモドーロテクニックには、大きく二つの違いがあります。
ひとつは、作業時間を25分間に固定していることです。一つのタスクに必要な工数を一つの単位とするのではなく、「この作業を25分間だけ進める」という固定した時間フレームに作業を割り当てます。
もう一つの特徴は、GTDと同様に〈レビュー〉が組み込まれている点です。全体の進捗を確認し、優先順位を再設定する工程がポモドーロテクニックにもあります。その工程では、作業の進め方自体が適切であるのかも確認されます。
ここで、作業単位が均一になっている効果が発揮されます。Aという日では6セットできた。Bという日も同じく6セットできた。しかし、Cという日は3セットしかできなかった。さて、どうしてだろう、といった視点が持てるようになるのです。この視点は時間管理、タスク管理の方法を改善していく上で役に立ちます。
マニャーナの法則
『マニャーナの法則 明日できることを今日やるな』(マーク・フォースター(著);ISBN=978-4887595422)で紹介された方法で、その後、続編として、『仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則 完全版』(ISBN=978-4799319802)が出版されています。
本手法の特徴は、原書の副題「明日できることを今日やるな」で有名になりましたが、「仕事を、その発生と同じ日に手がけるのは極力避ける」という哲学に基づいて、以下のようなステップで実行されます。
- 遅れている仕事は、すべて「やり残し」のファイルに!
- 1日の仕事はまとめておいて、翌日に確実に処理!
- それでも間に合わない仕事はリスト化し、時間が空いたらやる!
- 「やり残し」ファイルにある仕事は、毎日、朝一番に着手!
特に、タスクリストの管理に「クローズドリスト」(一旦完成したタスクリストにあとから追加をしないようにしたリスト管理の手法)を使っていることが特徴です。
タスクは、あるとき気になったこと、上司の思いつき、顧客からの要望など、次々と発生します。通常、これらが発生した途端に着手したくなりますが、そのタスクは本当にすぐに着手しなければならないわけではありません。中には本当に緊急なものもあるのでしょうが、緊急ではない場合が少なくありません。
片方に達成すべきタスクのリストがありながら、そうした「特に緊急というわけでもない」タスクに取り組んでいては、いつまで経っても終わりは見えてきませんし、締め切りぎりぎりになるまで着手できない仕事も類発します。
そこで、今日やるべきことを集めた一日分のタスクリストを作っておき、当日はそのリストの実行だけに注力します。当日発生したタスクについては、(本当に喫緊のものを除いて)一旦横にどけておき、翌日以降に先送りします。これが「明日できることを今日やるな」という副題の意味です。
こうすることで、一日のタスクリストには明確な「終わり」が設定され、今やるべきことに取り組めるようになり、作業量の変動がないので、翌日以降の工数見積の精度も向上することになります。
もちろん、発生したタスクは、優先順位の判断からするとより上位にあるものもありますので、完全に1日の間に計画外のタスクの挿入を禁じるものではありませんが、このポリシーは示唆に富んでいると考えていいでしょう。
タスクシュート
〈タスクシュート〉は、タイムライン式の管理法です。一日の行動をタスク実行順序と工数からシミュレートします。管理単位は1分が推奨されています。
このタスクシュート法は、二つの特徴があります。
ひとつは、一日のタイムラインにその日の全てのタスクを載せることで、もうひとつは、その結果を繰り返しを活用することです。これら二つが相まって、一つの大きな効果をもたらします。
まず、タスクシュートでは、その日に行動すること逐一記載します。些細な行動であっても記載していきます。9:15に朝食を食べる、9:32に家を出るなど、細かい行動です。
正確かつ詳細なスケジュールを書くと、その計画に無理があることが発見されます。定時までに終わるはずの予定だったものが、実際には残業しないと終わらない理由が明確になるのが、このタスクシュート法の長所です。
その改善のためには、昨日実際にやったことが中心になります。多くの知識労働者は、毎日違うタスクをこなしていると考えがちですが、基本的に多くの時間は毎日、毎週、毎月という単位で繰り返されているタスクがあります。これらをベースに計画を立てると現実的な計画ができるのが、タスクシュート方のメリットです。
タスクシュートの考え方をベースに設計されたExcel上で動作するツールがとして、「TaskChute」(https://cyblog.biz/pro/taskchute2/index2.php)が公開されています。
バレットジャーナル(Bullet Journal)
ノートを使ったセルフオーガナイズの手法です。シンプルなワークフローなので馴染みやすく、個人の用途に合わせて拡張できるカスタマイズ性も持ち合わせています。
タスク管理手法としてご紹介するのはちょっと不適切かもしれませんが、タスク管理としても使えますので、ご紹介します。
この手法は、ノートのあるページにThe Daily Log(日単位ログ)のページで、日付を書き、その下に当日行うタスクやイベント、簡単なメモを箇条書きで記します。
前節で説明したようにタスクの上位にはより大きなタスクやプロセスが存在します。このため、The Monthly Log(月単位ログ)、The Future Log(年単位ログ)などのページを作り、さらにそれらのページを管理する索引ページも作成して、全体が管理できるようにします。
タスク管理としては特別な手法はほとんど使われていませんが、「一日分のタスクリストを作る」「適宜参照するリストを作る」「ログを残す」などの基本的な手法が簡単に実現できるのが特徴です。また、アナログツールだけで実行できるので、自由度が高く、適切なデジタルツールが使えない環境、あるいはデジタルツールが使いにくい場合に威力を発揮する方法です。