なにか仕事を指示されたときに、最初に何をしますか?
その仕事に関する書籍を購入すること、ネットでそれはなにかを調べること。
多くの人はそういう行動をします。まあ、悪くはありません。私の知る限り、そういう人が多いです。
そういう仕事を指示する立場になると、「で、何をすればいいですか?」と聞いてくる人がいるのにはちょっと閉口しますが。
■仕事の成果は戦略で決まる
最初に調査から入る人は、まぁそこそこの結果を出してくれます。指示した側から見ると、50点から80点くらいですかね。ちなみに、「何をすればいいですか?」と聞いていくる人は、30点がいいとこです。
ちなみに、100点以上をかなりの確率で叩き出す人もいます。こういう人はその仕事に対してこういう質問を返します。
「その結果は誰がどうなればいいですか?」
仕事の内容によって、言葉自体は異なりますが、質問の内容をざっくりまとめると、これを聞き出そうとします。
では、試しにあなたの仕事の理解度をちょっと確認してみてください。
あなたはいまいくつかの仕事を持っていますね。その仕事を書き出してください。そして、その仕事の結果、誰が、いつ、どのようになること をそれぞれ書き出してください。
頭に思い浮かべるだけではダメです。言語にして書き出してください。
書けましたか?
これが書けないということは、その仕事の目標を本当に理解できていないのです。目標がわからないのに、その仕事は完遂できませんよね。だから仕事を指示した上司にとっては50点にしかならないのです。
仕事の成果を出したいと思ったら、目標をたてて、それに至る道筋、つまり戦略を考えないといけないわけです。冒頭に書いた必要な情報を集めることは、目標が決まり、戦略が決まって、作戦を考える段階で必要な作業であって、最初に取り掛かるようなことではないのです。
良い目標と良い戦略がなければ、どれほどの知識があろうが、どれほどの情報を持っていようが、ただのムダにしかなりません。高等教育を受けると知識や情報が優先されがちですが、知識や情報は必要なときに、必要なだけあればいいのです。いつ、どこで、どのような知識が必要になるのかがわからなければ、闇雲に情報を集めることになり、ほとんどの苦労はムダになります。
仕事の成果というのは、目標と戦略に依存しているのです。途方も無い時間や労力を透過できる状況にあるのであれば別ですが。
■顧客と課題を明確化する
「顧客」というと、会社の製品やサービスにお金を払ってくれる人、という感じを受けるので、もうちょっと適切な言葉があるといいのですが、あまり適切な言葉がありません。
ここで言っている「顧客」とは仕事の成果である「知的生産の成果物」の受け取り手という意味です。
したがって一般的な意味での「顧客」である取引先に加え、仕事の発注者である上司や他部署の人も含まれると思ってください。今後、「顧客」というときは、知的生産の成果物(以下、単に「成果物」と呼びます)の受け手となる全ての人を意味していると考えてください。
そうすると、なぜ、調査するということを最初にやってはいけないかがわかってくると思います。
知的生産物の受取人である「顧客」は当然ながら、その成果物を欲していることからわかるように、その成果物の作り方には精通していますが、その使い方については、「顧客」の知識に及ばないわけです。
たとえば、システム開発の担当者が原価計算システムを作るに当たり、顧客(ここでは原価管理をする部署)に「原価計算の原理」などというものを滔々と説明できたとしても意味を成さないわけですね。それが1〜2ヶ月調べただけの付け焼き刃であればなおさらのことです。
経理業務であれば、成果物は伝票を適切な分類で分類して、その金額を正確にシステムに入力されたデータです。それを遅滞なく、あとで税務署に突っ込まれることのない分類で処理することが求められているわけです。決して新しい税制分類を定義してほしいわけではないのです。
これが、「調査から入ってはいけない」と言った理由です。
そんなものは、実際に使っている人(顧客)からすれば、当たり前の話です。顧客に何らかの成果物を渡そうとしているのであれば、顧客が何を欲しているか、その成果物が適切かどうかわかりません。なぜそれを欲しているかを知らなければ、最適な提供方法はわかりません。
そしてコンピュータではなく人間であるあなたに仕事が回ってきたということは、より柔軟な発想で、そこにある課題を解決したり、最適化したりはできないからなのです。
淡々と言われたことを言われたように処理するだけなら、疲れ知らずのコンピュータにやらせたほうがいいに決まっています。人間がやる理由は、そこに「発想力」という力があるからです。
それを、冒頭に書いた「何をすればいいですか」などと聞くのは、
私はコンピュータ並みにイチから十まで教えてくれないとできません、でもコンピュータのようには早く計算できませんけどね〜 (テヘペロ)。
って聞こえてしまいます。閉口したくなるのも頷いていただけるかと。
まあ、新社会人れべるならやむを得ないことと思ったりもしますが、10年選手でこれを言われると…。
最初にやるべきなのは、冒頭の理解度の確認でも書いたように
誰が
いつ
どのようになること
かを定義することです。そして、それに対して、どのような課題があって、どのように解決するのか、どのようなリソースが必要なのかという戦略を立案することなのです。
それが、文章として記述できるくらいには言語化できるまでは、それ以外のこといくら調査しようと検討しようと、たんなる時間つぶしでしかありません。
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