久しぶりにビジネス書の紹介。
「洞察力」「観察力」みたいなものは、スキルとしてあるプロセスで学習すれば身につくというものではありませんね。しかし、それを身につけるまでのプロセスにはいくつかのパターンがあるようです。本日は、洞察力とはどのように発揮されるのか、それを組織としてどのように育てていくのかについて考察した一冊です。
長文なので、分割しておお送りしています。
本日は第3回目。要約のパート2です。
■Pert2 見えない問題を見抜くための「心の扉」を開ける
「見えない問題を見抜く力」を発揮する機械を逃す 4 つの理由は
見抜く力の弱い人 強い人
誤った考えに固執している 誤った考えから解放されている
経験不足 十分な経験がある
消極的な姿勢 積極的な姿勢
具体的な考えにとらわれた推論 遊び心が伴った推論
なのである。
●IT は人間の問題解決を支援できるのか?
コンピュータが私たちの生活の隅 々 まで浸透してくるにつれて、 IT 技術者たちはどうやって、より有効に使えるようになるのかについてのガイドラインを考え出してきた。
・IT システムは、作業の効率をより一層向上させてくれるはずである
人々が効率良く作業をするために目的を設定することは、明確な作業内容がすでに決められていて、安定した条件で作業が行われる場合だけに意味がある。人のアイディアが閃いた結果から作業内容が変更されるのならば、その IT システムはもう適用できないことになる。
このガイドラインは、人 々 が作業を考え直すことをかえって難しくさせてしまうこともあり得るのだ。ブーンとキャロウェイが戦術を変えたことで、 2 人は貴重な時間を使って、再度、プログラミングするはめになるだろう。人はときどき、作業を慌てて変更することを避けるために、従来の作業に固執しやすくなるのだ。
・IT システムは、重要な手がかりを明確に表示してくれるはずである
このガイドラインは、さらに良くない。何かのアイディアを閃いたあとに Jll 心いがけない形で関連がある手がかりを、私たちはおそらく見逃すことになるからだ。
多くのコンピュータの支援システムは、データべースから出入りする情報に依存している。また、そうしたデータべースは構造化されているので、利用者は情報を見失うことなくして操作することができる。ところが、知的労働者たちがさらにアイディアを出すことで考え方を改めるのならば、元来のデータべースの構造は古くなってしまうのである。このようなことが生じるとき、 1 死来のデータべースの構造は取り扱いが恩かになり、「見えない問題を見抜く力」を発揮するうえでの障害になるのである。
・IT システムは、無関係なデータをフィルターにかけて処理するはずである
このガイドラインは有害である。
無関係なデータをフイルターにかけて処理するという IT システムの取り柄は、私たちが事前にどのデータに関連性があるのかを知っている限りにおいて効果的であると思われる。しかし、私たちのアイディアが閃くことを助けてくれるような出来事や、思いがけない形での関連性ある手がかりまでも処理してしまう。
たとえば、グーグルのような検索ェンジンは、あまりにも「役に立ちすぎる」のである。私たちの好みの傾向を知り、満足させてくれるマッチングを示してくれる。しかし、私たちはそれ以外の選択肢を見ることがなくなるのである。
・IT システムは、人が目的に向かって進行していることを管理してくれるはずである
このガイドラインもまた、問題を生み出すことになる。管理システムは、私たちが計画通りに作業が進んでいるのかを支援してくれるだろう。しかし、仮にプロジェクトを開始したあとに、その作業過程をどのように再構成するのかについてのアイディアが] xJ いたのならば、管理システムは障害となり得る。さらに亜心いことに、目標をどのように修正するのかについてのアイディアが閃いた場合、すべての進行指標はもはや使い物にならないのである。元来の目的への進行具合を管理するツールは、インディアンたちを探し出すのに不適合な方法を指示することで、騎馬隊を困らせることになる。また、ブーンに最適な追跡ルートを選ばないように絶えず指令するのである。
すなわち、精密な IT システムほど「見えない問題を見抜く力」を退化させる。
4 つの IT ガイドラインのそれぞれは、秩序性とシステム構造に依存したものである。その一方で、「見えない問題を見抜く力」というのは無秩序なものである。意思決定支援ツールや IT が設計する手段を変更するためにも、システム開発者たちは、その作業がどのよ 5 つに行われるのかについて注意を払うのではなく、むしろ、意思決定者に対して物事を発見するための余地が与えられていることに、より注意を払うべきだろう。
精密 IT システムが「見えない問題を見抜く力」をときどき阻害し得るものならば、組織にもたらす影響は比べ物にならない。すなわち、組織は「イノべーションに価値をおいている」と主張するが、実際にどのように運営されているのかを知ることなく検証することはできないということである。
●組織は「見えない問題を見抜く力」をどのように抑圧しているのか
組織は、意図的に従業員たちの「見えない問題を見抜く力」を抑圧していることがあり得るもので、従業員たちは習慣化され、しかも見分けがつかないような抑圧的な方法に従っている。
それは、
・予測可能性の罠
このプロジェクトは期日通りに、しかも予算内で完了しなければならない。そのために計画を立てる。
計画のタイムラインは、各段階がいつから始まり、いつ終わるのかがわかるように設計されている。
計画が狂ったときでさえも、その原因を察知し、資源を再配分することで期日が遅れることはない。気づいていただきたいことは、あなたはプログラム管理者として、自分の時間の大部分を計画の進行具合に割き、劃画を微調整することである。この時点で、「見えない問題を見抜く力」を発揮させることについては何も考えていない。
私たちは、プロジェクトと人材をより良く管理したいので、予測可能性を向上させたいと思うものである。そうしたことは、すべての経営者たちと組織からすれば、当然のプレッシャーである。
そのような体系的なアプローチの仕方は、「見えない問題を見抜く力」から生じたアイディアによるものではないのである。
・「完壁主義の艮」にはまる組織
私は「完壁主義」をミスがないことと定義している。組織は、ミスを減らすことに自然と魅了されるものである。ミスは簡単に定義でき、簡単に測定でき、簡単に管理できるものだからだ。ミスなく完壁であることへの願望、完壁主義の願望は、予測可能性の願望に決してひけをとらない。
完壁主義は、まさに体操選手が規格化された動きを完遂するかのように元来の計画を厳格に実行することである。ところが、一見えない問題を見抜く力」というのは完壁主義を超えるものであり、この力は、元来の計画をより良くするものである。それなのに、どうして自分たちを当初の目標にがんじがらめに縛る必要があるのだろうか?
組織は何かを発見することよりも、ミスや不確実性を減らすことばかりに偏ってしまうのである。こうして組織は「予測刊能性の罵」と「完壁主義の罠」にはまってしまうのである。
こうして組織はミスをなくすことを強化するために
・より厳しい基準を設定する
・管理を強める
・すべての情報源を文書化する
・想定していることをつかむ
・そういった想定に対して、不確実性の値を概算する
・検討する回数を増やす
・一層厳しい方法で結論を立証する
・チ工ックリストや手続き方法に頼る
・より忠実に、予定日に間に合うようにする
のようなことをする。
その結果、
・私たちの注意が散浸してしまう
・私たちは推察することが嫌になってしまう
・「見えない問題を見抜く力」を否定的な観点でとらえる
・私たちに例外を抑圧することを奨励する
・私たちを消極的にする
を招いてしまう。
多くの組織は、「ブラック・スワン」という、稀に起こる危機を発見できる方法を探している。
しかし、そうした危機は事前に発見できるものではないという点を見逃している。
多くの場合、稀に生じる危機の初期段階の兆候と、それを認知して反応する間の時問があるように思われる。
結局、私が思うことは、組織に所属している多くの人たちは、組織が稀に生じる危機を認知する以前に、初期の兆候を発見しているのではないかということである。
組織は警鐘を鳴らす人を抑圧するのではなく、彼らの警鐘に耳を傾けるべきなのである。
しかし、そうすることは、組織の DNA に反対に作用するものである。組織の DNA は‘例外や不規則な性格を持つ[見えない問題を見抜く力」を抑制するようにプ口グラミングされているのだ。
私たちはときどき、過去に与えられたものを利用するという従来のやり方に固執しているために、行き詰まってしまうことがある。また、解き方のアイディアがなかなか思い浮かばない問題に対して、「 9 つの点でできている 『 箱]の中で線を引かなくてはならない」という解き方に固執してしまうのである。実験室内で行われる、「見えない問題を見抜く力」についての実験は、「やけっばちな推測」を試すものである。研究者たちは、被験者たちにアイディアを出さなければ解けないような課題を出す。そうした課題は、被験者たちが不要な思い込みに固執してしまうことで問題が解けず、行き詰まってしまうように導くのである。こうした間題を解く唯一の方法は自分の思い込みに気づき、それを捨てることしかないのである。
私は、問題を難しくし、同時に正解率を高めるためのさまざまな方法を模索する研究者たちの意欲には敬意を表する。ところが、ときどき、「そうした方法論が、実験室の外では役に立たない」という印象を持つのである。しかし、多くの研究者たちは、私が行っている現場主義的な研究を好ましく感じていない。彼らは、慎重に条件づけされた仮説を検証することを好む。それゆえ、心理的トリック問題の理論的枠組みを活用し、その多様な結果を考察するのである。
■参考図書 『「洞察力」があらゆる問題を解決する』
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