ひとつのタスクが完了した時や、今日はこれで帰るという時に、ある決まった動作をするとストレスが減ります。そういう自分ルールを持っておくと、ストレスフリーとは言いませんが、ストレス軽減に役立ちます。
■未完了の課題は集中力を阻害する
よく見かける人で、メールの受信箱にメールを溜め込んでいる人がいます。人によっては1000件をこえるひとも実際に見たことがあります。その中には既読になっているメールやら、すでに返信したメールなども入り込んでいて、なにかするにしてもそのメールの一覧を行ったり来たりして、探し出しながら作業をしています。
曰く、「まだ読んでないメールは既読になっていないのでそれでわかる」のだそうですが、でも開くと30秒で自動的に既読になるような設定されているので、読みかけでも既読になっちゃってたりします。
私は社内で業務効率化の支援もしているので、それについてやり方を指導もするのですが、当人はそれが当たり前で、問題だという認識すらない。
こういう管理の最大の問題は、脳が1000件の問題を片付いたと認識していないことです。つまり、それについて、引っ掛かりがあるために度々思い出させるのです。そのためオフロに入っていても、トイレにいても、ふとしたことで1000件の膨大な未処理タスクや、それぞれ処理したかどうか記憶がないタスクなどを思い出すのです。結局、今目の前にあることに集中できないのです。
結果集中力が低下し、仕事の品質や作業効率を低下させます。
よそ事を考えながら、良い仕事はできませんね。
GTDなどの作業のテクニックも、根本的に「引っかかりがあることは頭の中ではなくて、別のリストに持たせなさい」ということを言っています。それは集中力を高めるための方策のひとつなのです。
■一つのことが終わった時に、終わったと認識する
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●シャットダウンの儀式が重要
この戦略をうまくおこなうには、まず、その日の仕事が終わったら、仕事上のどんなささいなことでもあなたの注意の領域に侵入させないこと。
これには、メールのチェックや仕事関連のサイトの閲覧も含まれる。もう一つは、就業日の終わりに、厳しい(シャットダウンの儀式)をおこなうことだ。
詳しく言えば、この儀式は、未完成の仕事や目標やプロジェクトすべてを見直す、そして、それぞれについて、
1.完成させるための確かなプランを立てるか、あるいは
2.適切な時期に再び取り上げられるところに止め置くこと。
また、一連の段階を一つずっ踏んでいくこと。最後は完了したことを表す言葉でしめくくる(私の場合は、「これでシャットダウン」と言う)。安っぼく聞こえるかもしれないが、あなたの心に、仕事のことは忘れていいのだという合図を出してくれる。
シャットダウンの儀式は、最初、極端に思えるかもしれないが、実は十分な理由がある。それが「ツァイガルニック効果」だ。
これは二○世紀初頭の心理学者、ブルーマ・ツァイガルニックの実験研究に由来し、未完了の課題は私たちの注意を支配する可能性があるといいうものだ。
もしあなたが午後五時に仕事を中断し、「今日はもう仕事は終わりだ」と断言すると、あなたは頭から仕事のことを消し去ろうと努めるだろう。同時に、あなたの頭の中の果たされていない多くの義務は、夜の間ずっとあなたの注意を引こうとしつづけるだろう。最初、これは解決不可能に思えるかもしれない。"常に" 未完了の仕事はある。いつかすべての義務が処理されるときがくるというのは幻想である。
幸い、私たちは課題を頭から追い出すために、それを "完了する" 必要はない。この問題で助けとなってくれるのが心理学者のロイ・バウマイスターで、彼は E ・ J ・マシカンポとともに「任しとけ!」なるおどけた論文を書いている。
その中で、被験者たちに、(これから)未完了の課題を完了するためのプランづくりを指示することで、そのツァイガルニック効果をかなり減じることができたとしている。
「仕事を中断しても、目標のためのプランをしっかり立てることで、目標達成がたやすくなるだけでなく、他の仕事のためにも知的資源が使えるようになる」あなたはリストにある仕事に一つ残らずプランを定める必要はないが、それらを共通のリストに入れ、それから翌日のプランを立てる前にそれを見直す必要はある。
この儀式によって、未達成の課題をいったん意識から消し去るとともに、課題を忘れることは確実になくなるのだ。儀式のために一日の終わりに10分から15分余分に時間を取られるかもしれないが、それだけの報いはある。
カル・ニューポート(著) 『大事なことに集中する―――気が散るものだらけの世界で生産性を最大化する科学的方法』
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■ツァイガルニク効果(ザイガルニク効果)
本書で登場するツァイガルニク効果(ザイガルニク効果と表記されることも)とは、Wikipedia を引用するとこんなふうに書かれています。
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ツァイガルニク効果(ツァイガルニクこうか、Zeigarnik effect)は、人は達成できなかった事柄や中断している事柄のほうを、達成できた事柄よりもよく覚えているという現象。ツァイガルニック効果、ゼイガルニク効果、ゼイガルニック効果とも表記する。
ドイツのゲシュタルト心理学者クルト・レヴィンの「人は欲求によって目標指向的に行動するとき 緊張感 が生じ持続するが、目標が達成されると緊張感は解消する」という考えに基づき、リトアニア出身で旧ソビエト連邦の心理学者ブルーマ・ツァイガルニク(1901年11月9日 - 1988年2月24日)が「目標が達成されない行為に関する未完了課題についての記憶は、完了課題についての記憶に比べて想起されやすい」との事実を実験的に示した[1]。以上がツァイガルニク効果。
さらに、ツァイガルニクらには、未完成の図形と完成した図形についての記憶研究もある。知覚の実験にあっては、未完成図形の方が完成図形に比べて記憶の度合いが悪い。
自分自身の行為を記憶する過程と、視覚像を記憶する過程とは、相異なる法則性に従っている。
出典:Wikipedia
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要は集中して作業したあとに、何かのトリガによって緊張の緩和をすることができれば、その問題は完了したと脳に刻むことができるのです。
GTDを本格的にやったことがある方ならわかると思いますが、気になっていることをリストに書き出しても、頭の中はスッキリしません。結局、翌日にもう一度同じようにすべての気になっていることを書き出すと、昨日と同じものが出てくるのです。
つまり、頭の中を空っぽにできていないのです(「頭を空っぽにする」技術と言いながら)。
それは、その気になっていることが完了したと認識していないからです。
■完了したと思える作業を最後にする
それを無理矢理に認識させる方法として、「完了したら、完了したと認識するような行為をする」という方法が、本書で示されている、シャットダウンの儀式です。
これはかなり有効な方法です。ただし、1日に1回ではもったいないので、ひとつのステップごとににやりましょう。
・気になっていることを書き出した
・タスクリスト化した
・やるべきことをの一覧を作った
・そのタスクをやり終わった
こうした時に、
・「ヨシッ!終わり!」っと声に出して言う
・付箋に書いていたら、その伏線を丸めてゴミ箱に捨てる
・ノートに書いてあることをペンで塗りつぶす
・タスクのフラグを完了にする
・メールを「処理済」フォルダに移動する
こうした「終わったと思える」決まりきった作業をするのです。
これであなたの頭の中のもやもやが少しだけスッキリします。
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