本は2度、3度と読む度にその理解度が上がります。そして1冊を読むのに要する時間は理解度が高いほど早くなります。これは自分が座右の銘にして読んでいる本であっても、たまたま本屋で暇つぶし用に買った本でも同じです。それを使った速読法があります。私はこれを
先読み速読法
と読んでます。
■先読み速読法
先読み速読法などと大層な名前をつけましたが、やっていることは簡単です。
本を読んでいるときに、読んでいる次の行を意識する
それだけ。じゃ、頑張ってください。
…って終わってしまうと書くことがないし、「何いってんだ?」と思われてしまうので、その原理とちょっとしたコツをご紹介します。
■RASと既知情報
脳科学でRASという言葉があります。"Reticular Activationg System" の頭文字をとって RAS (「ラス」と読むらしい)というのですが、ようするに、「人間は見たいものだけを見るようにできている」ということです。
例えば、本を読んでいるときに、読んでいる行や読んでいる文字を見てますよね。ただ、目はそれほど視野が狭くないので実はページ全体を見ています。
それが、読みたい部分だけしか見えないのは、読んでいるときには目的の行や目的の文字以外をフィルタしてしまって、意識の外に出してしまうからなんです。そうすると必要な部分しか見えなくなるので、集中してその文字や文章を判読できるようになるわけです。これが RAS という機能です。
これは意識していない人が少なくないですが、これをはっきり意識すると、自分がどのような情報をフィルタして捨ててしまっているかが認識できるようになります。
もうひとつ、脳には特別な機能があって、すでに知っているの情報というのは処理が早いのです。これは、同じ本を2度読んでみるとわかります。1回目より2回めのほうが早く読めます。よく知っている分野のほうが全く知らない分野の本を読むより早く読めるのは、誰でも経験的に知っていると思います。
■先読みをする
そこで、今読んでる行のすぐとなりの行をちょっと意識するのです。
たとえば、この文章を読んでますよね。そうするとすぐ下にある文字がなんだか気が付きますか。見ている範囲を意図的に広げるだけで「見ること」だけはできます。読んではいけません。読もうとすると、そちらの行に意識が行ってしまうので。単に見るだけでいいのです。
日本語は特にこの方法に適していて、漢字という意味を持った文字があります。これがあると読まずに見るだけでも、なんとなくその漢字が意味するところのイメージが湧きます。
そうすると、脳にとっては次にその行を本当に読んだときには、すでに知っている情報なのです。
2回めに読めば早く読めるのは前述のとおりです。
■漢字をイメージに変換するトレーニング
ここでポイントになってくるのが、
見ている漢字を言語化せずにイメージする
ということです。私は最初に速読を習ったときにこの方法の訓練を受けました。
言語を「音」でなく、字体で理解(イメージ)してしまえばいいわけです。
どうやったら訓練できるかって? わざわざセミナーなんかに行く必要はないですよ。
本とそれを読み上げたデータを購入してください。それから再生速度が10倍くらいまでスピードが上がるMP3プレイヤーをダウンロードしてきてください。
あとは、ほんの読む速度に合わせて文字を追っていくだけ。それを再生速度を2倍、4倍、5倍と速度を上げていってください。最終的には10倍くらいまで。そこまで来るともう字を読んで、それを言語化して理解することはできません。そうすると、字を見た瞬間にその字の保つ意味のイメージが頭の中に広がるようになります。読むのを諦めなければ、ですが。
たとえば、「書籍」という漢字があります。普通黙読するときには、「しょせき」と頭の中で音にしています。そして、その音のイメージと漢字のイメージから、いわゆる単行本の形がイメージに浮かび、その意味を理解しています。それを「書籍」という漢字をみたら、単行本のイメージをそのまま浮かべて理解してしまうのです。
日本語の漢字は特にこれに向いていて、ある象形文字の組み合わせで漢字が出来上がっています。つまり「しょせき」という言葉を知らなくても、「なにかが書かれたもの」というイメージができます。
■先読みトレーニング
その「文字」を「見る」作業と並行して、今読んでいるものの次の行も見るようにしてください。これは意識するだけでいいです。RASがちゃんと処理してくれますから。