2021年12月07日

プレゼンの3つの必須要素のなかで最も欠けているものは


プレゼンなどでプレゼンの目的を明確にすることは、プレゼンをする第1歩なのですが、それでも全く説得力のない場合が少なくありません。当然社内の場合は、「彼がこういっているのだから」とかいう人間関係で受け入れてもらえる場合も少なくありませんが、それはプレゼンや交渉のすすめ方がうまくなったと勘違いしてはいけません。

単に、組織の力関係や、個人的な人間関係で受け入れてもらっているに過ぎない場合が多いのです。

では、組織力の背景や人間関係を除いても説得力のあるプレゼンというものはどういうものなのでしょうか。

■説得力のあるプレゼンとは


説得力のあるプレゼンというのは、基本的に以下の要素を備えている必要があります。

 1.論理的で必要不可欠な行動を要求するものであること
 2.その要求する行動やプレゼンの目的が明確に示されていること
 3.その行動をした結果、行動をした人に利益があること

ここで、1,2については多くの交渉術や論理技術の本に書いてあります。書籍を読めばわかります。プレゼン関連の本を読めば、「全体の背骨をきちんと作る」「なにが言いたいのかを明確にする」などと書いてない本を探すのは不可能です。ただ多くの場合、もう一つ重要なことが書いてあります。

  心を動かされること(プレゼンを受けた人の行動を促すこと)

です。ところがこれについて、具体的に書いてある本というのは非常に少ないです。理由は簡単で、それは相手が誰か、どのような状況にあるのかは千差万別で、書籍などに書くような一般論では説明しきれないからです。

このため、プレゼン技術では1,2は勉強できても、3は勉強できない。
つまりプレゼンについて一生懸命勉強しているであろう人が作る、「あと1歩のプレゼン」になっている原因です。

たとえば、地球温暖化について、よく政治家や環境団体がいろいろな情報を出しています。それが科学的根拠があることも、重要であることもわかります。では質問ですが、あなたは地球温暖化のためになにかの行動を起こしていますか?
ほとんどの人は、「否」なのではないでしょうか。レジ袋が有料化されたりした時には、マイバッグを持っていきますが、サービス(無料)でレジ袋をつけてくれるお店ではなにも言わずにレジ袋を受け取っていませんか?

つまり、行動に結び付けられるだけの説得力がないのです。

「業務効率化のために業務日報はやめましょう」と提案しても誰も受け入れてはくれないのも同じです。

■なぜ提案は受け入れられないのか?


なぜ理路整然たる資料を作り、反論の余地がない完全なプレゼンをしても、それが行動にうつらないのか。端的なキーワードが以下の本に書いてありました。

★P92(95)〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

繰り返しになるが、選択肢の設計には人が関わってくるため、人がもとになっている問題やチャンスに適用する必要がある。

ここで重要になるのは、問題の解決のために、彼らに本当にやってほしいことは何か、見極めることだ.広い視野で考えよう。彼らに本当に、心から、やってほしいことは何だろうか?やってもらいたいことがわかったら、彼らが欲しがりそうなものを考える。あなたから。人生から。またはあなたたちが働いている環境やシステムから。

彼らの立場に身を置いて、問いかけてみよう。私に何か見返りはあるのか? (WllFM :What's In It For Me?の略)と。

彼らが考えているのはそれだけだと想像するのだ。

さあ、あなたはその質問に答えさえすればいい。あなたがしてほしいことをしたら、彼らに何か見返りはあるのか?何らかのかたちでモチべ一ションを高めるのだ。

金銭面でもいいし、何か実体的なかたちでもいい。ごまかしているような感じがするかもしれないが、それで構わない。

イアン・アトキンソン, 笹山 裕子(著) 『最高の答えがひらめく、12の思考ツール ―問題解決のためのクリエイティブ思考
――――――――――――――――――――――――――――★


  WIIFM:What's In It For Me?

私はプレゼンで資料を作る時に、論理的な整合性や完全性は当然意識しますが、最も意識するのはこのWIIFM("ウイーフム"と読むらしい)です。つまり、

  プレゼンを聞いた人(=行動を起こして欲しい人)にどのようなメリットがあるのか?

です。

もし、プレゼンが「あなたが○○してくれると私が嬉しい」になっていたら、それはだれも「いいこと言っているね」とすら思ってもらえないでしょう。だってプレゼンを受けた人が「私の時間や労力が削られるだけ」なのですから。そんなもの誰も聞き入れてはくれません。ただプレゼンする側は「私は嬉しい」と言っているだけなのです。受ける側からしてみれば、「あなたが幸せになろうが不幸になろうが興味がない」のです。

だからプレゼンは、「○○をするとあなたが幸せになりますよ」と言わないといけないのです。

■プレゼンを受ける人がなにを望んでいるか?


では、どうすれば、プレゼンを受ける側が望んでいることがわかるのかというと、それほど難しいことではありません。

その人の立場で自分のプレゼンを眺めてみるだけでいいのです。「自分の立場で見るとこれはメリットがある」では独りよがりなだけです。「あなたの立場で見るとこれはコストをかける価値がある」と言わないといけないのです。

プレゼンを受ける人にとっての価値とはなにか?

これも本書に書いてありました。

★P92(95)〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

●ポジティブに考える:取りかかるための22のアイデア

それでも、人びとの知性や心情に訴える方法が見つけられれば、それに越したことはない。

彼らのなかに、ポジティブな思考を起こさせることができるだろうか?ポジティブな感情は?彼らにしてほしいことが大きければ大きいほど、やりたいと思わせるにはより大きな精神的・感情的見返りが必要となる。

手始めに、人びとが欲しがるものを挙げてみよう。

 楽しむこと、リラックスすること、安心感を持つこと、
 賢くなったつもりになること、人に好かれること、
 もっと成功すること、何か良いことに参加すること、
 勝つこと、より魅力的になること、
 笑うこと、喜びを感じること、
 やりがいのある何かをすること、何かを変えること、
 褒められること、感謝されること、微笑むこと、
 分け合うこと、おいしいものを食べること、
 興味深い経験をすること、気持ちの良い経験をすること、
 わくする経験をすること、報われる経験をすること

たとえばこの22のアイデアをひとつひとつ吟味し、あなたの間題を解消したり、あなたのチャンス獲得を実現したりしてくれる人たちに、見返りとしてこのような経験をしてもらうにはどうすればよいか、考えてみてもいいだろう。

イアン・アトキンソン, 笹山 裕子(著) 『最高の答えがひらめく、12の思考ツール ―問題解決のためのクリエイティブ思考
――――――――――――――――――――――――――――★


人が欲しがるものは、おおよそこのジャンルの中にしかありません。これらをプレゼンの中に具体的にかけばいいのです。

これが提示できれば、多少論理的に破綻していてもあなたの提案は受け入れられます。



■参考図書 『最高の答えがひらめく、12の思考ツール ―問題解決のためのクリエイティブ思考




ビジネスの問題を解決し、チャンスをつかみ、イノベーションを実現するのは、無味乾燥のプロセスに従うこととは全く違います。
「最高の答えにいかにして辿り着くか」−重要なのは、正しい心構えでいること。クリエイティブに考えること。
本書は、問題解決において最も実際的な、解決策を見つけるフェーズに焦点を置いています。

数々のブランド戦略に携わってきた著者が、
インサイト(INSIGHT)、イノベーション(INNOVATION)、インスピレーション(INSPIRATION)の3つのIを切り口に、
競争力を獲得するためのクリエイティブ思考について解説し、チャレンジを成功に導く「ひらめき」をあなたやチームに促す、実用的な12の思考ツールを提供します
(ツールキットPDFのダウンロード付き)。

■目次
「問題解決」という問題の解決法

PART T : インサイト
イントロダクション
あなたの脳はここで間違える

PART U : イノベーション
イントロダクション
1 問題を大きくする Think bigger
2 他人になる Think like another
3 反逆する Be contrary
4 制約を受ける Be constrained
5 選択肢を設計する Choice architecture
6 古い+古い=新しい Old old = new
7 逆行分析する Reverse engineering
8 問題を回避する Sidestep the issue
9 ランダムを挿入する Random insertion
10 精査し、推定する Interrogate and extrapolate
11 シンプルな解決をする Solve something simpler
12 組み合わせ、再定義する Combine and redefine

PART V : インスピレーション
イントロダクション
1 準備 Preparation
2 創出 Generation
3 発展 Development
4 実施 Implementation





◆アマゾンで見る◆◆楽天で見る◆◆DMMで見る◆

最高の答えがひらめく、12の思考ツール ―問題解決のためのクリエイティブ思考
著者 :イアン・アトキンソン, 笹山 裕子
楽天では見つかりませんでした
最高の答えがひらめく、12の思考ツール ―問題解決のためのクリエイティブ思考
検索 :商品検索する



●このテーマの関連図書


観察の練習

マッピングエクスペリエンス ―カスタマージャーニー、サービスブループリント、その他ダイアグラムから価値を創る

クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法

ユーザーインタビューをはじめよう ―UXリサーチのための、「聞くこと」入門



■関連する記事

問題に着目しない

私は小学校の頃、跳び箱が不得意でした。まぁ、運動自体が余り得意ではなかったので、その中の一つでもあったのですが、特に跳び箱の時間はイヤでした。跳び箱の方に走って行くと、跳び箱にぶつかりそうな恐怖(おおげさですが)で足がすくんで、手前の踏み台で立ち止まってしまいます。高学年になってから、先生に跳び箱の飛び方というのを教えてもらいました。曰く、「跳び箱の天面を両手を上から下に振り下ろして、思い切りたたけ」というものでした。そしたら飛べるようになったんですよ。あっさり。..

根回しの順番

会議で自分の提案が拒否されたことはありますか?私はよくあります(未だに)。だから、偉そうに言える立場ではないのですが、過去に結構チャレンジャブルな提案をして受け入れてもらったことも少なからずあります。その時の進め方を分析してみると、一定のパターンがありました。ポイントだと思っているのはうまく根回しをしたことそれをすることで相手の利益に訴えられたこと理解しやすい説明ができたことです。根回しは絶対に必要本日は、「根回し」について。多くの重要な議題..

エッセンスを抜き出す

先月でも先週でも構いません。なにかうまく行ったことを1つだけ思い出してください。・上司に進捗状況を報告したら、褒められた・会議でたくさん発言できた・契約がとれた・設計書のデザインレビューで指摘件数がゼロだったなんでも。抽象化では、それはなぜうまく行ったのでしょうか?・報告する前に報告する事項をノートに書き出しておいた・会議が始まる前に、その会議の目的に沿ったアイディア出しをした・お客様とすごくいい意思疎通ができた・チェックリストを使って、..

成長を加速する報告書の技術

まだ駆け出しの頃、上司によく「出来事をぼんやり見るな!」と怒られました。自分としてはぼんやり見ているつもりはなかったので、ちょっと「ムッ」としたりしたのですが、今思うと汗顔の至りですね。せっかく学習の機会があるのに、その機会を「ぼんやり」見過ごしている事が多いんですよ。意外と。多分ですが、同じ年月生きてきたにもかかわらず、成長速度やその達成度が異なるのは、この「ぼんやり度」が違うからなような気がします。観察するに..

矛盾す複数の問題を一気に解決する「インクルージョン思考」

表題の「インクルージョン思考」というのは、問題がいくつもあって、それらの問題を一気に解決してしまうような、「おぉ、その手があったか!」というアイディアを出すための考え方。ドラマやアニメなどを見ていると、最初の方で色々な問題が次々と発生して、主人公がにっちもさっちもいかない状態に追い込まれることがあります。それを後半に、ある一つのことをやることで一気に解決して大団円、というストーリがよくあります。あのアイディアはどうやって思いつい..

BATNAを用意してから交渉に臨む

交渉において、私が大切にしているものが、核心にいくためのストーリーとBATNAです。いきなり「××してください」は通用しないかんたんなものならいいのかもしれませんが、自分が何かほしいものがあって、それをくれるように相手と交渉するときに、いきなり「××をください」というのは直接的ではありますが、通常は下策です。たとえば、「ちょっと、を用意しておいてください」「明日までにの報告書を作ってください」「一緒に..

posted by 管理人 at 17:05| Comment(0) | 交渉術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: