■gRIDsの原理
ローマ字は一部の例外を除いて
[子音] + [母音]
の連続なのですが、これを2文字で見ると、
[子音] + [母音] + [子音] + [母音]
になります。その後ろの [母音] + [子音] + [母音] の部分は、結構出現頻度にかなり偏りがあります。
さらにローマ字を打つときには2文字目はかならず母音なので、キーボードで、2文字目は母音の5キー(a/i/u/e/o)以外は使ってないことになります。
そこで、ローマ字の定義ファイルを書き換えて、2文字目のときに母音以外(子音)の文字に、出現頻度の高い [母音] + [子音] + [母音] のパターンを入れてしまうと、2キーでひらがな2文字が入力でき、キーボードのほとんどのキーが活用できます。
たとえば、nキーがローマ字の2文字目のときには、"ann" の機能を割り当てると、
zn → zann → ざん
kn → kann → かん
のように入力できるようになります。
これによって「ざん」と入力するのに、普通にローマ字のときには4回打鍵が必要ですが、gGRIDsではたった2回の打鍵で入力できることになります。また、もともとローマ字では使ってなかったキーの組み合わせなので、従来どおりのローマ字でも入力ができます。
このようにすると、キーボード全体の使用頻度が平均化されたうえに、打鍵回数を大幅に削減できます。
「かな入力」方式は1キーでかな1文字に対応するので、打件数はローマ字の約半分ですみますが、これに習熟するまでには結構努力が必要ですし、なれるまではキー入力速度は恐ろしく下がります。そのため、楽になると認識しながらも、乗り換えに至らない人も多いと想像します。
gRIDsは、ローマ字入力でありながら、キーの操作回数を削減できる上に、それぞれのキーの使用頻度を均等化して、特定のキーの劣化を防ぐことができる方法です。
■頻度の高い文字
調査方法の詳細は省きますが、日本語を2文字に分解してみると次のパターンのが多いです。
子音 + 母音 + [んいくつきちう]
例として「高速入力方式」をローマ字で書くと(太字+アンダーラインの部分が上記の 母音 + [んいくつきちう] に該当します)以下のようになります。
kOU sOKUnyUUryOKUhOUsIKI
大字+アンダーラインの部分に注意してください。
たとえば、「高」の "kOU" は
k +"OU"
で出来上がっています。gRIDsでは、この "OU" (gRIDsでは "おう"と表記します) の部分を、"p" キーに割り当てているので、
kp
と入力すれば、画面には未変換文字列として 「こう」 が表示されます。
冒頭に述べたように、この後ろの太字+アンダーラインの文字の出現頻度は日本語ではかなり偏りがあります。そこで出現頻度の高いパターンである以下の組み合わせを、ローマ字では2文字目に使用しないキーに割り当てます。
┌ あ ┐ ┌ ん ┐
│ い │ │ い │
│ う │ ✕ │ く │
│ え │ │ つ │
└ お ┘ │ き │
│ ち │
└ う ┘
こうして作ったキーマップが以下のものです。(クリックして拡大表示)
キーの右上赤字で書いてある文字がローマ字の2文字目に来る文字になります。たとえば、"p" には、"おう"と書いてあるので、kpと打鍵すれば、
k + おう ⇒ 「こう」
と表示されると読んでもらえればいいです。
通常のローマ字では2文字目に母音が来ますが、この2文字目の母音は変更していないので、
K O U
と打鍵しても、「こう」と入力することは可能です。したがって、ローマ字で入力しながら、gRIDsのキーで覚えている部分だけ操作するようにすれば、入力方式を変更したことによる一時的な入力速度の低下を招かずにすみます。
■ローマ字入力とgRIDsの操作の違い
gRIDsはローマ字入力は原則そのまま継続できるように設計していますが、例外があります。ローマ字における特殊な入力方法です。それが、「ん」と小書き文字の扱いです。
ローマ字入力では「ん」は、nnと入力するか、nのあとに次の文字の子音を入力することで、「ん」になります。
しかし、gRIDsでは、すでに「ん」の文字は、子音キーのでほとんどのパターンをカバーできます。このため、「ん」は単独キーとして、右下隅のキー「\(バックスラッシュ)」位置に移動しています。また、英語によくある「ぱたーん」などのように (長音記号)+ん は ”−”の2回押しで対応します。したがってローマ字との互換性はありません。
つぎに互換性がないのは「小書き文字」です。
小書き文字とは「ぁぃぅぇぉゃゅょっ」というような、ひらがなに添える小さなひらがなです。捨て字とも呼ばれ、基本的には発音されない文字です。これはローマ字では x や l のあとに、普通にひらがなを打つと小書きに変換されます。
しかし、小書き文字は多くの場合、JYA(じゃ)などのように子音の後ろで補助的に使われる場合がほとんどですので、単独で使うことは殆どありません。
使用頻度が多いのは「っ」です。ローマ字では子音を重ねる(2重打鍵する)ようになっていますが、記述方法としては例外的な扱いですので、妙な記述方法をするよりも、単独で記述できたほうが便利です。このためgRIDsでは単独キーで「;」(セミコロン)に割り当てます。これでttと打鍵して「っ」をつかうような、子音を重ねる入力方法は不要になります。
JYA(じゃ),MYA(にゃ),NYU(にゅ)などのように小さな「ゃゅょ」を伴う表記は、Yキーを挟んで3回打鍵しないといけないので、人差し指を使うことが多く、打鍵がし辛いです。
これを打鍵しやすくするために、NNなど子音の連続打鍵は NYと同じ扱いをするようにします。つまり、NYA と入力するかわりに、NNAでも「にゃ」が入力できるようにします。
これは打件数としては同じですが、N,Y,Aと打鍵するより、Nを2回打鍵するほうが楽なのは明らかです。
さらに、ちょっと音の近そうな文字(あくまでも私のイメージですが)は、単独で入力もできるようにします。
これが Q, X, C, L で、それぞれ
Q=KY X=SY C=CY L=RY
です。これで、「りゃ」と打鍵するには、RYA と打鍵していたのを、LAの2打鍵で入力できるようにします。たとえば、「きょう」とローマ字で入力しようとすると、kyouと打鍵が必要ですが、qpと打鍵するだけで入力ができるようになります。
最後に「あん」「あい」など、ローマ字の2文字目そのものを、vキーで使用可能にしています。たとえば、vnとタイプすると、「あん」が表示されます。これは日本語において、vで始まる文字というのはほとんど使用されないため、拡張文字として機能させています。ただし、vの直後の母音はローマ字定義をそのまま使用しています。va=ヴぁなどです。したがって「ヴ」を使う文字は普通のローマ字の入力ルールで入力すると覚えておけばよいでしょう。
まとめると、gRIDsはほとんどのローマ字を引き継いでいますが、以下の点に違いがあります。
・「ん」は単独で「\」(バックスラッシュ)、「ーん」は「−」(ハイフン)の2重打鍵
・小書きの「っ」は ; (セミコロン)で入力する
・Xではじまる小書きは XX で実現。ただし、小書き文字単独の表記はローマ字と同じにする
・NNなどの子音の2連続入力で小書きの「っ」を入力する方法は停止して、NYの打鍵と同等の扱いにする
DD = DY、 BB = BY、 NN = NY、MM = MY、 PP = PY
・Q、X、C、LはKY、SY、TY、RYと同じとする
・vで始まる子音文字は、gRIDsの2文字目をそのまま利用する
のように違いがあります。
■その他の便利キー
その他、いくつかの便利機能を追加しています。
・「おう」「いう」「あう」のパターンも追加する(右手小指を使うので若干入力しづらい)
・記号定義
記号キーを2重打鍵すると、※など全角の記号が出せるようにする
・拡張定義
KKは拡張キーマップの選択を可能にして、指示名詞を簡単に入力できるようにする
・特殊定義
よく使う2〜3文字の文字列を簡単な連想から短縮入力できるようにしておく
連想は、対象の文字の子音部分。たとえば、「なる」というのはローマ字では「naru」となる。このとき、"nr" はローマ字・gRIDsのルールでは未定義のため、これを「なる」と定義しておく。
・置換定義
右手人差し指で異なるキーを連続で使用するような場面が多いので、別のキーでも入力できるようにする。
たとえば、"bu" は2キーとも右手人差し指を使うので、これを "br" でも入力できると楽に入力可能になる
・2重打鍵による、小書き「ゃゅょ」を伴うキーで、gRIDsのルール上別のキーが該当する場合には、0(ゼロキー)に逃す。
たとえば、"nn" は本来、"なん" に変換されるはずだが、NYの代用としたため、 "n0"で "なん"が出せるようにする
・撥音定義
よくつかう「っ」を使う表現は、+キーで入力できるようにする
・上書き定義
"yi"、"ye" など現代日本語では使用しない文字や使用頻度の低いgRIDsの組み合わせは、未定義文字と同じ扱いをして特殊定義に使う
■キーマップ
では、これらをベースに定義したローマ字キーマップを見てください。

キーボードの絵のうち、
キーの右上: ローマ字の2文字目
キーの左上: 2連続打鍵したときの文字
キーの右下: 2連続打鍵したときのローマ字の1文字目(ローマ字表記)
キーの左下: ローマ字の1文字目(ローマ字表記)
キーの中央: KKに続いて打鍵したときの文字
です。右上のローマ字の2文字目はローマ字表記ではなく、ひらがな表記になっています。たとえば、nキーの「あん」は、ローマ字表記をすると、annと入力したのと同じ意味です。
覚え方は、左から順に、「う群」「お群」「え群」、右は「い群」「あ群」のならびです。「うおえいあ」とおぼえてください。それぞれの群は「んいくつきち」の順番になっています。例外として、「え群」の「ち」はキーボードが足らないので、ちょっと飛んだ位置にあります。順番が、ひらがなの並び順になっていないのは、使用頻度が高いものが、ブラインドタッチのホームポジションの位置に近くなるようにしている、すなわち、より打鍵しやすい位置になっているということです。
この順番、「うおえいあ」「んいくつきち」だけおぼえてしまえば、このキーマップはもう見る必要はありません。
これ以外に頻出する2重母音をP、@、「 のキーに割り当てられています。これは最後の母音が「うおえいあ」の順番になっていますが、「うう」「えう」などは使用頻度とタイプしやすさと残りのキーの数を勘案して割当をしていません。結果「おう」「いう」「あう」だけが登録されています。
KKにつづいてタイプするKK拡張文字というのを作っています。
たとえば、kkjとタイプすると、「↓」(下向き矢印)に変換されます。3キーとタイプ数が多いですが、「やじるし」と入力して変換するよりは簡単ですし、Kキーはホームポジションキーなので打鍵にそれほど苦労しません。また、gRIDsの配列だと、「いい」になるはずですが、これも直上にiキーがあるので、ここは連打でキーマップが切り替わるようにしています。
まずKK拡張文字でキーボードの下段は指示名詞です。順番は「あそこど」のグループ順で、それぞれのグループごとに「このれ」を続けています。「あそこど、このれ」とおぼえてください。ただし、「あこ」はありません。たとえば、kkzで「あの」と変換されます。
KK拡張文字の右手ホームポジションに対応するキーは、矢印です。矢印の位置はJKL;のカーソル制御のキーボードマップ(viなどのエディタでよく使われる)マッピング方法に準拠しています。
最後に、gRIDsの「あいくつきち」のパターンに当てはまらないけど、よく使うことば、たとえば「する」「です」「わた」などは、その子音だけを打鍵すると出せるようにしています。たとえば、
する → suru → sr
わた → wata → wt
ひと → hito → ht
このようなパターンを特殊定義として別表にまとめてあります。子音が同じで別のよく使う文字になるときには、少しずらしてあります。これはやっているうちに覚えます。

■gRIDsの設定方法
