多くの会社で、毎年テーマに上がるのが「効率化」。言葉は違いますが、残業時間削減とか、働きかたの改革とかいう美辞麗句で多くの会社が社員に改善提案を募り、それを実践することを要求しています。社員は社員で、何かの工数を少しでも削減すると、上司から、ひいては会社からの評価が高くなるため、それを目標の一部にします。
多くの人は、「効率を上げる」ということを「良いこと」ととらえています。しかし、効率を上げるのはムダです。
時間をムダにするもっとも良い方法は、仕事時間を効率化する方法を考え、実践することです。
例えば、システム化のメリットとしてよく聞くのが、「システム化によって××時間の効率化ができる」ってセリフです。まあ、殆どのシステムは、身も蓋もない言いかたをすれば、そのくらいの効果しかないので、それを言う以外にシステムに投資してもらう理由なんてないのですが。
■効率化のさきにあるもの
たとえば、いままで8時間かかっていた作業を1000万円のシステムを導入して、4時間にできたとしたらどうでしょう?
1人の担当者が毎日やっていたとすれば、効率は2倍!
1年の人件費を1000万とすれば、2年で投資回収できる
それは、すごい成果に見えます。でもたいていはウソです。
■パーキンソンの法則
パーキンソンの法則をご存知でしょうか。
パーキンソンの法則は、1958年、英国の歴史学者・政治学者シリル・ノースコート・パーキンソンの著作『パーキンソンの法則:進歩の追求』(英語版のみ)、およびその中で提唱された法則です。
具体的には、
第1法則
仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
第2法則
支出の額は、収入の額に達するまで膨張する
の2つです。第1法則を読んでください。
仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
つまり、2 時間でできる仕事であっても、3 時間あれば 3 時間で、4 時間あれば 4 時間かけてやるものなのです。
確かにどの職場でも、殆どの人はなんやかやと忙しいですよね。残業しなければいけないほど仕事もあるでしょう。上司の前であくびをして、鼻毛をむしるのに一生懸命な人なんてたぶん、見たことがないでしょう。
たとえば、先程のシステムの例で言えば、いままで1日8時間かかっていた仕事を、半分の時間でやれる1000万のシステムを導入したのであれば、その人の成果は4時間に相当する分がふえるか、その人の給料を半分にしないと合わないのに、会社や部門として成果が増えることも、支払っている給料が減ることもありません。ただ単に1000万という固定資産が増えただけなのです。
■最高の無駄遣いは効率化を目標にすること
まずもって、「××効率化」と言って効率化活動をするのが会社や組織は大好きだと認識する必要があります。その効率化活動で生産量が増えるか、従業員が減ることはありません。生産量が増えるのは、より多く受注したときですし、人が減るのはリストラしたときだけです。「効率化」をしても役に立たないのです。
効率化活動をするために時間や労力を投下して、あくびをする時間を作る
効率化することを目標にすると、効率化はできるかもしれませんが、それによる成果は何ももたらさないのです。最高の時間の無駄遣いです。
■パーキンソンの法則の発動を防ぐ効率化とは
効率化で会社として何も起きない活動の間違いは以下のような点です。
? 効率化、すなわち業務時間の削減を目標とすること
? 効率化による経営上の影響(会社の損益の変化)を明示しないこと
? 削減した時間を維持・拡大する仕組みを持たないこと
です。
つまり、効率化は、それ自体が目標であってはいけないのです。何か新しいことをする手段でないといけないのです。「何かをする」と決めていなければ、すなわち目標が明確でなければ、効率化は時間と労力の無駄遣いでしかないのです。
時間管理を学ぶのも同じです。いま、新しいこと(成長のための勉強や訓練)をするつもりがないのに、時間管理して仕事やプライベートを効率化する必要はありません。鼻毛を抜く時間が増えるだけです。
今すぐ、本書を閉じて、好きな小説でも読み始めるか、友人に連絡をとって今週末の遊びに行く予定を立てたほうが、よほど楽しい人生を送ることができます。
もし「効率化」をしたいと考えるのであれば、冒頭に述べたことの逆、すなわち
? 削減した業務時間をつかって生産的な業務をすることを目標とする
? 目標は経営指標、すなわち会社の損益に寄与するものを設定する
? 効率化した業務がもとのやりかたに戻らないような仕組みを作る
事によって、パーキンソンの法則の発動を防ぐことができます。簡単に言えば、今の業務時間を増やすことなく、成果を増やせばいいのです。
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