2022年10月03日

時間を無駄にする最も効果的な方法


多くの会社で、毎年テーマに上がるのが「効率化」。言葉は違いますが、残業時間削減とか、働きかたの改革とかいう美辞麗句で多くの会社が社員に改善提案を募り、それを実践することを要求しています。社員は社員で、何かの工数を少しでも削減すると、上司から、ひいては会社からの評価が高くなるため、それを目標の一部にします。


多くの人は、「効率を上げる」ということを「良いこと」ととらえています。しかし、効率を上げるのはムダです。
時間をムダにするもっとも良い方法は、仕事時間を効率化する方法を考え、実践することです。

例えば、システム化のメリットとしてよく聞くのが、「システム化によって××時間の効率化ができる」ってセリフです。まあ、殆どのシステムは、身も蓋もない言いかたをすれば、そのくらいの効果しかないので、それを言う以外にシステムに投資してもらう理由なんてないのですが。


■効率化のさきにあるもの


たとえば、いままで8時間かかっていた作業を1000万円のシステムを導入して、4時間にできたとしたらどうでしょう?

1人の担当者が毎日やっていたとすれば、効率は2倍!
1年の人件費を1000万とすれば、2年で投資回収できる

それは、すごい成果に見えます。でもたいていはウソです。

■パーキンソンの法則


パーキンソンの法則をご存知でしょうか。

パーキンソンの法則は、1958年、英国の歴史学者・政治学者シリル・ノースコート・パーキンソンの著作『パーキンソンの法則:進歩の追求』(英語版のみ)、およびその中で提唱された法則です。
具体的には、

 第1法則
   仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
 第2法則
   支出の額は、収入の額に達するまで膨張する

の2つです。第1法則を読んでください。

仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する

つまり、2 時間でできる仕事であっても、3 時間あれば 3 時間で、4 時間あれば 4 時間かけてやるものなのです。

確かにどの職場でも、殆どの人はなんやかやと忙しいですよね。残業しなければいけないほど仕事もあるでしょう。上司の前であくびをして、鼻毛をむしるのに一生懸命な人なんてたぶん、見たことがないでしょう。

たとえば、先程のシステムの例で言えば、いままで1日8時間かかっていた仕事を、半分の時間でやれる1000万のシステムを導入したのであれば、その人の成果は4時間に相当する分がふえるか、その人の給料を半分にしないと合わないのに、会社や部門として成果が増えることも、支払っている給料が減ることもありません。ただ単に1000万という固定資産が増えただけなのです。

■最高の無駄遣いは効率化を目標にすること


まずもって、「××効率化」と言って効率化活動をするのが会社や組織は大好きだと認識する必要があります。その効率化活動で生産量が増えるか、従業員が減ることはありません。生産量が増えるのは、より多く受注したときですし、人が減るのはリストラしたときだけです。「効率化」をしても役に立たないのです。

効率化活動をするために時間や労力を投下して、あくびをする時間を作る

効率化することを目標にすると、効率化はできるかもしれませんが、それによる成果は何ももたらさないのです。最高の時間の無駄遣いです。

■パーキンソンの法則の発動を防ぐ効率化とは


効率化で会社として何も起きない活動の間違いは以下のような点です。
?   効率化、すなわち業務時間の削減を目標とすること
?   効率化による経営上の影響(会社の損益の変化)を明示しないこと
?   削減した時間を維持・拡大する仕組みを持たないこと
です。

つまり、効率化は、それ自体が目標であってはいけないのです。何か新しいことをする手段でないといけないのです。「何かをする」と決めていなければ、すなわち目標が明確でなければ、効率化は時間と労力の無駄遣いでしかないのです。

時間管理を学ぶのも同じです。いま、新しいこと(成長のための勉強や訓練)をするつもりがないのに、時間管理して仕事やプライベートを効率化する必要はありません。鼻毛を抜く時間が増えるだけです。
今すぐ、本書を閉じて、好きな小説でも読み始めるか、友人に連絡をとって今週末の遊びに行く予定を立てたほうが、よほど楽しい人生を送ることができます。

もし「効率化」をしたいと考えるのであれば、冒頭に述べたことの逆、すなわち
?   削減した業務時間をつかって生産的な業務をすることを目標とする
?   目標は経営指標、すなわち会社の損益に寄与するものを設定する
?   効率化した業務がもとのやりかたに戻らないような仕組みを作る
事によって、パーキンソンの法則の発動を防ぐことができます。簡単に言えば、今の業務時間を増やすことなく、成果を増やせばいいのです。



■参考図書 『仕事の生産性を上げる技術〜時間管理編(下)〜




ある漁師が、新しい網を手に入れた。初めて使った日には100匹の魚が取れた。漁師はもっとたくさん取ろうと何度も漁に出るようになった。しかし、量に出れば出るほど取れる魚の数は少なくなり、漁師が漁に出る時間はますます長くなった。漁師仲間が彼に聞いた「なぜ網を修理しないのか。穴だらけじゃないか」と。
漁師は答えた。「そんなことをしている暇はないほど忙しい。もっと魚を取らないといけない」。

本書は、あなたの目標達成を手助けするために、時間管理の手法について書かれた本です。時間管理についてあなたが抱えている問題のいくつかを解決するための手助けをしたいと考えています。そのために、「時間」という認識しづらいものをどのように捉え、どのように生産性を上げるために利用するのかについての原理原則と実際の応用例を提示します。

従来のビジネス書では、非常に抽象的な時間管理の手法の紹介になるか、非常に具体的で環境依存になって応用のしづらい紹介になるか、出版物にするという制約の中で、ピンポイントに絞られていた時間管理の手法について、その全体像を示すとともに、それを応用したTipsを600ページ超にわたって解説しました。

下巻では、上巻で述べた論理的な手法を実際の場面で使用したノウハウと、上巻では論旨の流れから説明しきれなかった原理原則の捕逸の80個をランダムにご紹介しています。

これらのノウハウは、インターネットのハウツーサイトや書籍を丁寧に巡回すれば、同じようなものは見つかると思います。ただ、それがどのような原理に基づいて考えられたのかについては、上巻の論理部分を読んだあとだと、より理解が進み、自分の環境に適用しやすくなっていると考えます。つまり、一般原理を知っていることで、表面的には異なる環境のハウツーを自分の環境への適用や応用ができるようになるのです。下巻ではその適用事例を見ることで、自分の環境であれば、どのように適用できるだろうかと考えるヒントになると考えています。

あなたは、人生という大海で漁をしています。魚をたくさん得るためには、一度漁に出るのをやめて、網を修繕する時間を作ってください。網を修繕するだけでなく、もっと高性能な網を使った漁労方法を知れば、あなたはより短時間でより多くの魚をとることができるようになります。本書は網を修理し、多くの魚を得る方法について詳述します。





◆アマゾンで見る◆◆楽天で見る◆◆DMMで見る◆

仕事の生産性を上げる技術〜時間管理編(下)〜
著者 :
楽天では見つかりませんでしたDMMでは見つかりませんでした



●このテーマの関連図書


仕事の生産性を上げる技術〜タスク管理編(上)〜: 生産性を10倍にするタスク管理の技術 仕事の技術



■同じテーマの記事

締切は打ち合せ日程で決まる

よくスケジュール管理や時間管理の技術として、「マイ締め切り」というものが推奨されています。たとえば、3月30日が本当の締め切りだとしても、自分で3月28日を締め切りとして管理するようにすると、多少の変動があっても本当の締め切りには間に合う、というようなものです。私も「それなら」と思ってやってみたのですが、それで3月28日、いわゆる「マイ締め切り」通りに出来上がったことはなく、やっぱり、3月30日になって、慌てて資料を作るようなことを繰り返しました。マイ締..

ひとつの作業が終わったら休憩ではなく、するべきことがある

なにか集中する作業をしていて、一区切り付きました。大抵の人は、「あ〜やれやれ。ちょっと一服」と隣の人と雑談をしたり、コーヒーを飲んだり。まあ、それが1時間作業をして5分程度、というのであればいいですが、気がついてみたら雑談に花が咲いてしまって1時間ほど休憩時間だった、などということはないでしょうか。私には "あるある" なのです。特に最近は、在宅ワークなどが増えてきたので、休憩時間の間に仕事をしている、、、とか?脳..

効率化には作業の準備の時短が効く

仕事におけるあらゆる作業を細分化していくと、次の3つに分解できます。1.準備2.実際の作業3.後片付けたとえば、ノートになにか書こうと思ったら、ノートとペンを出してきて、書き付けて、ノートとペンをしまう、という3段階ですね。製造現場では、この3段階をそれぞれに分けて効率化をします。現場に入ると最初に言われるのが、整理整頓。これは、1と3の作業を効率化するためです。なにかやりたいと思ったらすぐに準備ができますか..

変換キーを2度押さない

仕様使用試用差異際再これを見てなにか思いつきますか?はい、そうですね。全部同じ「読み」です。同音で異なる漢字これらは、PCで書こうとするとどうしても誤字になりやすいものです。このブログでも後で見返してみると多数の誤字があるのですが、これは「読みを入力する」というPCでの文書作成の特性によるものです。ところがこの誤字脱字は、ビジネス文書としては割と恥ずかしい部類のものです。たとえばメールなどで、お世話になります。→押せわになります..

プレゼンの3つの必須要素のなかで最も欠けているものは

プレゼンなどでプレゼンの目的を明確にすることは、プレゼンをする第1歩なのですが、それでも全く説得力のない場合が少なくありません。当然社内の場合は、「彼がこういっているのだから」とかいう人間関係で受け入れてもらえる場合も少なくありませんが、それはプレゼンや交渉のすすめ方がうまくなったと勘違いしてはいけません。単に、組織の力関係や、個人的な人間関係で受け入れてもらっているに過ぎない場合が多いのです。では、組織力の背景や人..

スピード段取り術1

本日は久しぶりにビジネス書のご紹介です。ちょっと古い本ですが(私が新しい本を紹介すること自体が珍しいので、普通かも)、これも折にふれて(大体1年に1〜2回)は読み返している本です。書いてある事自体は、「すごい!」というネタではありませんが、なにか問題にぶつかっていて、どうやって自分の時間を確保しようとか、どういう習慣作りをしたらいいだろう、と悩んでいる時に、「あ、な〜るほど」と思えるヒントが満載の本です。是非時々読み返して見るために、手元においておきたい本の1冊。これ..

posted by 管理人 at 11:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 時間術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック