非常に個人的な感想ですが、プログラミングで熟練者と言われる人には面倒くさがりが多いような気がします。
もちろん例外はいますし、事実かどうか確かめたわけでもないのですが、私の知る範囲だと、「こつこつ」「繰り返し」「淡々と」ということを極力避けたがる傾向があるという印象です。私も含めて。
■同じことを繰り返すな
たとえば、スポーツの世界。
とうぜん、反射神経とか動体視力などのように持って生まれた才能もあるでしょうけど、スポーツで最も大切なのは、ひたすら地道に単調なトレーニングを繰り返して、体にその動きを覚え込ませることだと考えます。イチロー選手がそうであったように。
ところが、面倒くさがりな人というのはこうした地道な努力というものを「避けたいもの」と認識するわけです。だからといってそうしたことをしないわけではないですし、スポーツ選手であっても地道なトレーニングが好きだというわけでもないのでしょうけど、プログラマという人種は、こうした地道な繰り返し作業を嫌がる傾向があるように思います。
もちろん、好き嫌いにかかわらず、仕事なので必要があればやらざるを得ないですが、PC錠での作業であれば、作業を繰り返すより、プログラムを作ってPCに作業させるほうが楽だと考えがちなのです。
たとえば、特定のフォルダに10個ファイルを作らないといけない(中身は何でもよい)ときに、エクスプローラでそのフォルダを開いて
右クリックで新規作成→ファイルでファイルを作る
という操作を10回繰り返すのではなく、10個のファイルを作るプログラムを書いて実行させるほうが楽だと思ってしまうようなものです。
プログラミングの世界にはDRYの原則というものがあります。
Do not Repeat Yourself. 同じことを繰り返すな
略してDRY(ドライ)です。
ほとんどのプログラミング言語にはライブラリという機能があります。サブルーチンやオブエジェクトなど名前はいろいろですが、過去に作ったプログラムを再利用する機能です。これによって、多くのライブラリを持っている熟練プログラマほど、プログラマの生産性は高くなるのです。この生産性の差は数倍どころか数百倍にもなります。
ライブラリを作ってあると、ある機能を果たすために何度も同じプログラムを作る必要がなくなるだけでなく、つねに一定の品質が保たれるというメリットもあります。過去にきちんと動いたライブラリは、与えるパラメータさえ間違わなければ同じように動くことは保証されています。しかし、あらたに作ったプログラムはその動作をひとつひとつ確認しなければ安心して使うことはできません。
つまり、ライブラリがあるというのは、ライブラリがない人と比べてスタート地点がすでに違うのです。生産性は圧倒的に変わることは自明です。
■ライブラリ=自分だけのテンプレート集
ライブラリという考え方は、実際の仕事にも応用できます。
つまり、過去に作ったものをなるべく再利用できるようにしておけばいいのです。
それが「テンプレート集」です。
たとえば、メールに書く「お世話になります。○○株式会社の△△です。」という挨拶文。これを「お」と入力しただけで変換候補に出せるようにしておけば、ここまでのタイプ時間は10分の1にはなるでしょう。
定例会の議事録を書くのであれば、議事録に書くべきこと「会議時間」「出席者」「議題」などは最初から書いておくことができるでしょう。それを位置からタイアップする作業に比べたら、以下に生産性が変わるかは考えるまでもありません。
プレゼンなどで使う書式や図形も、だいたいは同じパターンの繰り返しです。
であれば、プレゼン資料で変えなければいけない部分だけを●●●などのようにしておいて、これを書き換えるだけにするほうが作業が簡単で、常に一定の品質のものが作れることは間違いありません。
ちょっと難しい言い回しは、一度書いたものは残しておいて、再利用できるようにしておくのがいいでしょう。
※「直子の代筆」というアプリがあります。これはテーマといくつかの質問に答えるだけで、ちゃんとした文章を生成してくれる優れものツールです。1987年リリースなのですが現役でつかえます。
自分の仕事を効率的に進めるために、テンプレート集(仕事の上で典型的なことをすべて再利用可能な状態にまとめたもの)を作っておくと、生産性は格段に変わります。
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