「こういう機能があるとよいかもしれない」「こういうものが必要になるかもしれない」そう思って用意したものが、あとになってどのくらい使っているかを確かめたことはありますか?
たいていは使っていません。
■必要になってからつくる
企画書や要望書を書くときに、あれもこれもと盛り込んでしまいがちです。たとえば、プレゼン資料を作成するときに
「△△についてはどのようになっているのか」
「それをやると△△という問題がある」
などと突っ込まれるような場面があるかもしれないと考えると、それに対してもスライドを用意しておこうと思ってしまいます。完璧な説明をしようとすると、プレゼン資料は何十ページにもなります。そして、実際にプレゼンをすると、「結局何が言いたいんだ?」と作った説明資料は全否定される、などということになります。
これを戒めるため、YAGNIという言葉があります。
これは“You aren’t gonna need it”の頭字語で、おもいっきり意訳すれば、「今 必要だと思う機能が必要になる日は来ない」ということ。
作る前にあれこれ考えて、あれもこれもとアイディアや対策をふくらませても、実際にそれが日の目を見る確率は思いっきり低いのです。
最近のソフトウエア開発では「アジャイル開発」というのが流行です。
これはユーザの要望のキモとなる部分だけを作ってリリースし、その後に必要になった機能を追加したり、ユーザの要望を聞きながら性能を向上させていって、素早くソフトウエア開発を実用に乗せるための手法です。
なにかの業務改革のアイディアでもPoC(Proof of Concept:概念実証)という手法が用いられることが多くなりました。
新たなアイデアやコンセプトの実現可能性やそれによって得られる効果などについて小さく検証することです。これによって事前に検討したアイデアやコンセプトのが実現可能であることを検証して、期待した効果が得られることを確認しながら、徐々にプロジェクト拡大していくという手法です。
たとえば新規性の高いビジネスを立ち上げる、あるいは革新的な技術を利用するといったとき、本当にそれが実現できるのか、それによって効果が得られるのかを机上の議論のみで判断するのは困難です。そこで実際に小規模で試作や実装を行い、できあがったものを用いて検証を行うことにより、実現可能性の判断の精度を高めることが可能になります。
特にソフトウェアの場合は、ヒットする確率のほうが低いわけだ。使われないソフトウェアはメンテナンスされないし、そんなソフトウェアに未来はない。未来があるかどうかわからないものに時間を使うのは無駄でしかありません。
■最初から大きく狙いすぎた企画は実現すらしない
大切なのは、「今必要なのはどれ?」ということ。
そのアイディアや企画・ソフトウエアはなぜ必要とされるのか、なにがそれのコア部分なのかを判断して、コアを作りこむのです。
ところが現実には、「1000万円投資すれば実現できます」という提案が少なくありません。それがうまくいくかどうかわからないものに大金を投じるのは投資ではなくてギャンブルです。アイディアや企画というものは、当たる確率というのは常に低いのですよ。
それを最初からユーザが100万人になったときの事業を想定して作るから、あれもこれもと盛り込みたくなって、工数の見積もりは爆発し、予算がいくらあっても足りないということになってしまう。
でも、たいがいのものはたったひとつの要望を満たすものとしてスタートしているのですよ。
例えば、Googleは最初は検索のための入力枠しかありませんでした。Facebookだって、最初は単に自分のプロフィールを登録して、ほかの人のプロフィールを参照する機能しかなかった。
最初から「何でもできる」というアイディアや企画は何もできないのです。最初には「いちばん重要なものしかない」から始めるのが成功させる秘訣です。
どう使うのかがわからない機能が追加された巨大戦艦を作りましょう、ではなくて、とりあえず筏(いかだ)で人が乗っても沈まずに川が下れるようになってから、湖でも移動できるようにオールをつけたり、左右に曲がれるように舵をつけたりすればいいのです。
だからYAGNIをどこまで徹底できるか、というのはアイディアや企画にはとても重要なのです。
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