プロジェクトを進める上で、PMBOKは王道ですが、常に工数が不足して遅延したり失敗しそうになるのは、多くの場合PMBOKに書いてない人間関係の管理に失敗する場合が多いように思います。
■地震はどのように起きるのか
仕事の話からはちょっとはずれてしまいますが、地震が起きる理由は、二対以上の対流するマントルの動きによって、地表がマントルに吸い込まれる際に、その反動で大きく跳ね上がるときの振動が伝搬したものだと考えられています。ひとたび地震が発生すると、大きな災害を生むことは言うまでもありません。
私達の仕事も同じような状況にあります。つまり世の中の動き、会社の方針などによって様々なプロジェクトが起案され、それが原因になって様々な動きが発生します。その結果あなたの仕事は影響を受けて変化せざるを得なくしているのです。
もし、地震が発生した時に対処しようとしても、それはなかなか対応しきれるものではありません。もちろん震度が小さいうちはなんとかなっていくでしょうが、大きな揺れが起こってしまえばもはやなすすべはありません。
近年の研究では、小さな地震を強制的に発生させて地震のエネルギーを徐々に放出させることによって、大きな地震を防ぐような研究もなされているそうです。
■プロジェクトの人間関係
PMBOKを始めとする多くのプロジェクト管理に関する書籍には、書いてないことが多いのですが、プロジェクトが失敗する要因は、プロジェクトを実施する人たちの技術力が不足していたとか、工数見積もりが甘かったとかいう問題ではなくて、
プロジェクトに反対する人達によって頓挫した
ということが多いように感じます。
そもそも、そのプロジェクトが承認されたのは、技術的にはやれると判断したからでしょうし、その判断をした人は、相応の判断能力がある人でしょう。それでも失敗するのは、「やってほしくない」人がいて、失敗するように仕向けた場合が多いのではないかと感じます。
プロジェクトというものは、最終的にその結果が、他の人に対して何らかの影響を及ぼすことを目的としています。
たとえば、業務効率化プロジェクトというものは、関係する人たちの仕事のやり方を変えてもらわなければいけません。また、そのプロジェクトを推進するように担当になった人もいます。これも影響を受ける人です。
そして影響を受ける人の、そのプロジェクトへの対応は3つのグループに分かれます。
第1のグループは、積極的に賛成・推進する人。
第2のグループは、積極的には賛成しないし、推進もしようとしない人。関係する人の大部分がこのグループでしょう。
第3のグループは、反対する人。いわゆる抵抗勢力です。
しかし、そのプロジェクトが承認されたとすれば、それが業務命令ですので、正面切って反対するということは、会社における立場がなくなるので、第3のグループの人達は水面下での反対活動、つまりそのプロジェクトを失敗に追い込むような活動をするのです。
こうした第3のグループの人達を放置しておくと、プロジェクトは遅延どころか頓挫します。
プロジェクトで、もっとも多くの時間を使わなければいけないのは、プロジェクトを推進するタスクではなくて、こうした人達に対する対応なのです。
■地震の原理とプロジェクトの反対勢力
ここで地震の話に戻ると、プロジェクトに対して良い印象を持っていない人たち、すなわち第3のグループの反対者は、そのプロジェクトに対して表立って反対するのではなく、地表の下で着々と地表の歪みをためています。そして、あるときに「このプロジェクトでは目的は達成できない」と声高に叫ぶのです。
「このプロジェクトは間違っている」とは言いません。あくまでもプロジェクトは自分たちより上位者が決定したものなので、その目的を否定はできません。何を否定するかというと、「プロジェクトの進め方」や「目的に対する効果」です。つまり、「やり方を考え直した方がいい」とか「この目的を達成するためには、今のやり方では不十分」という言い方をします。
地震発生です。
一度、地震が起きてしまえば、家屋の倒壊、火事、津波と派生的に問題は広がります。
プロジェクトリーダーは、そのために走り回ることになるのです。
『仕事の生産性を上げる技術〜タスク管理編〜』では、これを「鹿威し」と呼んでいます。つまり、チョロチョロ水が少しずつ流れ込んだ竹筒があるとき水の重さに耐えきれなくなってバランスが変わり、水を下の池に落とします。そのときに、「コーン」と澄んだ音を発します。
ただし、プロジェクトリーダーにとっては、それは大騒動のスタートピストルの音ですが。
あなたがもし、プロジェクトの推進において、その他大勢の担当者ではなく、プロジェクトリーダーやそれに近い位置にいるのであれば、以下の言葉を常に胸に刻んでおいてください。
・慣性の法則
・作用反作用の法則
・鹿威し
・トレードオフ理論
物理用語みたいな言葉が並んでいますが、れっきとしたプロジェクト管理の用語です。
「慣性の法則」とは、人は今やっている、慣れた状態ややり方がもっとも居心地がいいと感じます。やり方を変えるのは新しく覚えなければいけないことができますし、最初のうちは失敗もします。だから、やり方を変えるのには反対するか、消極的になるのです。
「作用反作用の法則」とは、ある一方向に振れると、必ずもとに戻ろうとする力が生じるということです。
わかりやすいのが、アメリカの大統領選挙でしょうか。民主党の次には必ず共和党が勝ちますね。
会社でも、事業部制がもてはやされたかと思えば、次にはフラット組織とか言い出しますしね。身近なところでも思い当たるフシはあるのではないでしょうか。
「トレードオフ」とは、「あちらを立てればこちらが立たず」状態です。これも事例をあげるまでもなく、リーダーをやったことがある人なら経験のひとつふたつどころではないのではないでしょうか。
■タスクを発生させないようにするには
こうしたタスクは発生してから出ないとわからないかというとそんな事はありません。
上記の4つの法則を考えて、人の動きを見ていれば、それが水面下の状態のときに、抑え込むことはある程度は可能です。
これをすることによって、地震の発生を防いでいれば、そこから派生する消火活動はしなくてすみます。消火というタスクは減らせるのです。
多くのタスク管理の書籍では、タスクの「うまい断り方」みたいなものを紹介しています。
それ、実際にどの程度使えますか?
発生した以上、だれかがやらなくてはいけませんし、そのプロジェクトの範疇のものであれば、リーダーが「忙しいからできません」ということはできません。それを断れる前提のタスク管理って、プロジェクトを失敗させるのではないかと思ったりします。
■参考図書 『仕事の生産性を上げる技術〜タスク管理編(上)〜』
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