「人が育たない」
こうした悩みを抱える組織は少なからずあります。というか、ほとんどの組織でそのように感じられているのではないかと思います。
いくつか原因は思い当たるところはあるのですが、ひとつには「正しく育てていない」というものがあります。
■ティーチング・コーチング
多くの人が管理職になると、こうした研修を受けたり、書籍を読んだりすると思います。
もちろん、こうしたものは有効なのですが、これはある事象に対して、上司(管理職)がやった方がいいと思うやり方に部下を導くものです。当然、良い部下であれば同じ状況になれば、以前に教えてもらったやり方でやろうとするでしょう。
上司としては、それが自分が導かなくても、部下が自主的に上司が期待する動きができるようになったら、「ちょっとは育ったな」と思うわけです。
ところが、部下は教えられてないこと(ティーチングされてないこと)はできません。
そして、世の中の基本ベースは変化し続けています。つまり、上司が指導できるのは、特定の事象についてだけです。全く同じ事象は再現することはありません。
そうしたら、また上司に聞くしかなくなります。
部下が自分で考えて、「こうしてはどうでしょうか?」と提案したときに、上司は自分の経験に照らして、「それじゃだめだ。こうしなさい」というのがティーチングやコーチングです。
上司はそうしたときにどう思うでしょうか。
「なかなか部下が育ってくれない…」と思うのではないでしょうか。
これが、ティーチングやコーチングの限界だと思っています。
理想的なティーチングやコーチングは、「どのように考えれば、良い行動に結びつくか」という結構抽象度が高いレベルで教えることを目標にしていますが、「考え方」のようなものは、なかなか教えられるものではありませんし、部下にとっても、「顧客が満足度が高まるように」などと抽象的なことを言われても行動にならないので、結局具体的な行動の指示を求めてしまうのです。
上司としても、自分の経験から得た思考方法をすべて論理的に語れるわけではありません。もし語れるとしても、そのために何時間も滔々と喋る時間もありません。結局、「こうやりなさい」という具体的な話にならざるをえないのです。
■リアルタイムフィードバックという育て方
「ケンブリッジコンサルタンツ」という会社があります。
ここでは、何かをするたびに「フィードバックタイム」という時間があるそうです。時間といっても、数分のことです。
たとえば、顧客の前で報告をしたあとに、同席していた他のコンサルタントから、
・○○の質問に対して、なぜあのように答えたのか?
・結論を話したときに、意思決定者をしっかり見ていたのは良かった
・データの説明に時間がかかりすぎていて、深く議論ができていなかった
などと指摘を受けたり、良かった点を強調されたりするそうです。
そのときに、指摘する人は「○○はいけない」という問題提起ではなく、「なぜその行動をしたのか」「なぜその行動はいけないのか」という基準・理由を話さなければなりません。
このように、記憶が新しいうちに、その行動の意味を問われたり、最適な行動を促されたりすること、または良かったやり方を強調されたりすることは、その人にとって非常に強く印象に残ります。これがその人の経験値となって、さまざまな応用が効く経験学習につながるわけです。
なにかの行動をした直後にそれを指摘(良い意味でも悪い意味でも)されるというのは、その人の考え方や行動規範を作るのに非常に強い影響をもたらすことができます。
多くの会社で1年間の総括として、上司と部下の面談をしていると思います。
しかし、上司であれ、部下であれ、半年前の行動は記憶にありません。ぼんやりしかおぼえていないこと、すでに遠い過去になったことに関して、「あれではダメだった」といわれてももう取り返しはつきませんし、部下にとっては「後出しジャンケン」で言いたいことをいっているくらいにしか思えません。
さらに、「行動によってダメだったところ」を言われても、嫌な思いをするだけです。
なので、上司としてはこういう事は言いたくありませんし、部下も聞きたくありません。
結局、フィードバック面談という名前の、評価結果の伝達と雑談会になるだけなのです。
なにかの行動をした直後に、
・なぜその行動をしたのか
・その行動のどこが問題で、なぜそれが問題なのか。
これを明示しない限り、部下は成長しません。
また、上司自身も「なぜ問題なのか」が語れない人が少なからずいます。
それは、自分の過去の経験だけで、自分が物事を見ているからです。そうした人は、結果としてうまくいかなかったときにだけ、「あれではダメだ」というようなものです。結果論しか語れないなら上司は、予算管理だけしていればいいのです。
■自己フィードバックという育ち方
ある程度の年齢になると、こうしたフィードバックも受けられなくなります。「ケンブリッジコンサルタンツ」みたいな文化風土の会社にでもいない限り。
私もそのひとりなのですが、私は「行動の理由を記録する」ということをやっています。
つまり、なぜその行動をしたのかを記録しておいて、あとで冷静になったときに、その行動は適切だったのかを自己評価するようにしています。
それは過去の自分に向かって、少しだけ賢くなった自分が上司としてフィードバックしているようなものだと考えています。
つまり、半日後でもいいですし、半年後でもいいですので、その行動の理由の記録を見て、「この理由でこの行動は良くない」などとフィードバックをするのです。フィードバックといっても、誰に話すこともできないので、日誌に書き出しています。
書き出すという行為は、それなりに論理的に書くことになるので、曖昧な書き方にはなりません。
文章にしないといけないですから、それなりに考えます。
同じようなことを何度も考えると、より考えが洗練されていきます。もちろん、一流の人から見れば微々たるものかもしれませんが。
▲フィードバック入門(4569832903)○
・読了
・ティーチングでもコーチングでもない、フィードバックという新しい仕組みの提案。
※感ティーチングでもなく、コーティングでもなく、ひとつひとつの事象を正しくフィードバックするとい方法は一つの結論でもあると思われるのだが、近年の「人が育たない」という課題に対して、マネージャがプレイヤーとしても振る舞う必要が出てきたために時間が持てない、キャリアパスが一つではなくなったために自分のキャリア形成のプロセスがロールモデルにならない、年功序列が崩れてきてマネージャより経験値の高い部下ができた、という3つを課題としてあげているが、そのためにフィードバックをする時間を確保しましょう、それも1人に付き2〜3時間というのはどう見ても問題を解決していない。
プレイヤーがなぜマネジメントをしないといけないのか、時間がないをどのように解決するのか、自分の経験のない問題をどのように解決に導くのかについては、本書では書かれていない。「部下と話し合いましょう」では答えが出るものではない。
・フィードバックの方法については、ひとつずつは参考になるところはある。たとえば
・個別の部屋において事実と要望を述べ相手の意見を聞く
・時間制限を作らず、相手が納得したと思うまで話す
・議事録を部下に作らせて納得度合いを測る
など。
・一方で、マネージャは会議が詰まっており部下に注意するだけの時間を持たない、などの現代の問題提起に対しては特に答えを持っていない。その上、部下が納得留守まで1時間という時間を区切らずに話し合うべき、などは実現不可能だと感じる。大体において時間は有限であり、マネージャのスケジュールはその後もすでに予約済みである。
※感歳を取るとどうしてもフィードバックを受け取る機械が少なくなる。それに自分としてはあまりそういう話をするのを好まないし、友人に頼むのと言うのもできないので、自己フィードバックが重要になる。
つまり、例えば1流の著者と比べて自分はどうなのだろうか、なにか課題になることはないだろうか、と考えたり、会議を録音・録画してそれを見返すと、見ているときには他人事なので、フィードバックが出やすいという側面がある。
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