「なぜなぜ分析」という言葉を知らない人はあまりいないのではないかと思います。
では、そのやり方は? というと結構心もとない人も見えるのではないでしょうか。
やっぱり、ある手法というのは、基本的なやり方があって、そのやり方をきちんとトレーニングを受けていないとうまく使えないものです。
これは、なぜなぜ分析に関する本を読むだけではな足らなくて、実際に講習などで受講してみないとうまく使えるようにはなりません。もちろん、講習を受けたからといってそうなるとか限らないですが、本で詳細を学び、それを先生について実際の訓練をやった人というのは活用できるラインを超えられる人は多くなります。
「なぜなぜ分析」の3つのキーポイントについて考えてみたいと思います。
前回は、悪いななぜなぜ分析の例として、「一つだけの抽象的な原因」を考えることの間違いについて紹介しました。
今回はもうひとつの課題「責任転嫁」について。
●経営者のせい
○○の問題が起きた
↓
△△部品が変形した
↓
試作段階の検討が不充分だった
↓
開発人員が不足している
↓
人員を増やす予算がない
↓
経営者が悪い
またしても同じ事例ですが、分析の3つ目「開発人員が〜」に着目してみます。
あなたが経営者ならこれはあなたの問題です。しかし、大体なぜなぜ分析をやる(やらされる?)人というのは一般職員。その一般職員が、「人員不足」を言って何か解決しますか? ましてや経営者にそんなことを報告しようものなら、何を言われるかは火を見るよりも明らかですね。
何かの自己啓発書ではありませんが、変えられるのは自分だけなのです。
つまり、自己および自己の影響力の届く範囲に答えを求めない限り、分析は分析で終わってしまいます。
「なぜなぜ分析」をする目的は、その問題をもう発生しなくするために対策を取ることが目的で、分析で満足してしまっては意味がありません。時間の無駄です。それくらいなら、メールをひとつ読んでいたほうがまだマシです。
■原因には手が届くことが必要
何かの問題を対策しようとしたら、対策の行動を起こす人が必要です。その人の行動を促すことができるのであれば対策としては有効だといえます。
しかし、多くの場合、痛みを伴った問題を受けた人は対策を取る(もう痛みを感じないようにする)ことに対してモチベーションはありますが、痛みを受けていない人が対策を取るモチベーションは生まれません。だって自分は痛いことも痒いこともないから。
逆に、対策を取ること自体が面倒くさい(痛みを感じる)わけです。
それでも対策を実施していくためには、その対策を実施する人に「対策をしよう」というモチベーションになる何かが必要です。これが私が過去記事で時々書いている「影響力」という力です。
この影響力が届く範囲で、問題を発見していかないと、きれいな報告書(なぜなぜ分析チャート)が出来上がるだけで、何ら効果のないものになっていきます。
いずれにしろ、問題が自分のところに入ってきたということは、その自分のところに入ってくる経過があるはずです。そこに着目することです。
■ひとつの現象に対して複数の対策
そして、それぞれの原因に対してそれぞれの対策を立てることです。TOCなどでは複数の問題点に対してひとつの根本原因を出して、その根本原因に対して対策を打つことで、複数の不都合な現象をまとめて消してしまう、というような考え方をしますが、なぜなぜ分析では、逆でひとつの現象に対して、複数の原因をだしてそれぞれの原因に複数の対策をとって、完全に問題を消滅させることを目指します。
■影響力の範囲
自分の影響の範囲外へでた時点で、なぜなぜ分析は終了です。つまり、前回述べたように、ひとつの原因を複数の原因にわけ、それぞれをどんどん深堀りしていきます。そして、原因が自分の影響力の及ぶ範囲からでた時点で、なぜなぜが5回に達していなくとも終了させればいいわけです。逆にまだ影響力の届く範囲なら、6回でも7回でも深堀りをする必要があるということです。
■参考図書
といって唯一の正解があるわけではありませんし、私ごときが正しい説明ができるとも思えないので、以下の本をご紹介しておきます。『なぜなぜ分析 徹底活用術―「なぜ?」から始まる職場の改善』
※ものごとの原因を突き止める簡単な思考法が「なぜなぜ分析」です。なぜ? を繰り返していくと、いままで気が付かなかったさまざまな現象とその原因が見えてきます。仕事改善に業務改善などに適用すれば、大きな成果が期待できます。本書では、なぜなぜ分析のポイント、正しい使い方などをていねいにわかりやすく説明しています。
ただし、本書は読むのは結構骨が折れるので、以下の本が取っ掛かりとしては楽かもしれません。
『問題解決力がみるみる身につく 実践 なぜなぜ分析』
※問題の本質は「なぜ?」を適切に繰り返すことで見えてきます。物事を論理的にとらえ、ミスやトラブルの原因を的確に追究したいビジネス人必読。「なぜ?」の問いに答えていくだけの、誰にでもできる究極の問題解決手法をわかりやすく解説します。
『生産・品質トラブルを防止する なぜなぜ分析と変更管理』
※モノづくり現場では何かとトラブルに見舞われている。そのトラブルの再発防止策を講じられるようにするのが「なぜなぜ分析」で、トラブルの発生を未然に防ぐようにするのが「変更管理」である。本書は、なぜなぜ分析と変更管理をわかりやすく解説したもので、再発防止から未然防止につなげていく改善の大きな手がかりを提供してくれる現場改善の実務書となっている。
『「なぜなぜ分析」習得の7ステップ―真の原因をつかめ!』
※問題解決手法の代表である「なぜなぜ分析」本来の目的とは、仕事の「あるべき姿」とのズレを見つけること。しかし、結果を急ぐあまりの思いつきや、論理に飛躍がある分析も多い。本書では、現場・現物・現象で徹底的に観察し、原理・原則によって問題発生のしくみを理屈付けしながら解いていく。体系的に、誰でも、いつでも、簡単にできる「なぜなぜ分析」の入門書。
『なぜなぜ分析実践指南―現場トラブル徹底攻略法』
※製造現場のトラブル解決の虎の巻! 「なぜなぜ分析」とは、製造現場でのトラブルの真の原因を、発生現象をスタートに「なぜ」「なぜ」…と繰り返して追求していく画期的かつ効果的な分析手法です。現場で抱えている問題を「なぜなぜフローモデル」にあてはめて考え、「なぜなぜケーススタディー」を参考に展開していけば、トラブル解決の方法がきっと見つかるはずです。
私は『問題解決力がみるみる身につく 実践 なぜなぜ分析』が取っ掛かりには良かったと思います。『なぜなぜ分析 徹底活用術―「なぜ?」から始まる職場の改善』は結構ハードルが高いかのように思いました。もし製造系でなぜなぜ分析を活用したい方には、最後の『『なぜなぜ分析実践指南―現場トラブル徹底攻略法』が最適かと。
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