よく「当社はフラットな組織を目指しています」みたいなお話を聞く機会があります。
何を持って「フラット」と言うかはよくわかりません。だってその会社には、
社長―役員―部長―課長―係長―その他大勢
というちゃんとしたヒエラルキーがあります。フラットというのなら、
社長―その他大勢
になっているかというと、10人規模の会社ならそうでしょうけど、100人規模、1000人規模でそんなことができるわけがない。
で、「上司」なる人間ができると、そこに情報の滞留ができます。社長は役員にはいろいろ目標を話すかもしれませんが、その他大勢に語るのは、「年頭所新演説」くらい。結果として、上司が情報を握り、部下は上司の言うことが社長の意向になるし、現場の情報は社長には上がらない組織の出来上がり…、と。
■情報を部下にオープンにしよう!
本書『あたりまえだけどなかなかできない 課長のルール (アスカビジネス)』では、課長としてどのように行動すべきかについて、著者が描いたあるべき姿を見せてくれます。
私も新任のころはよく参考にした本でした。
★P38〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
課長であるあなたまでが持っている「幹部情報」いわゆる、経営陣の「経営情報」を、極力あなたの部下にオープンにしていくようにしましょう。
もちろん、管理職まわりの重要情報を、わざわざ非管理職(部下)に伝える必要はないという考え方もあります。また、人事系や労務系の情報については、いくらフラットな組織でも、上下を問わす全員が同じものを共有するというわけにもいかないと思います。それでも、あなたの組織の事情が許す範囲で可能な限り、情報開示を実行したほうがよいのです。
吉江勝(著) 『あたりまえだけどなかなかできない 課長のルール (アスカビジネス)』
――――――――――――――――――――――――――――★
部下としてみると、じつはこれ、ちょっとありがた迷惑かも知れません。
なにしろ、部下は現場でさばき切れないほどの現実にぶつかってます。その上に管理職が持つような年間計画情報や、経営状況の日々の変動まで知らされても、情報洪水に溺れるだけの場合が少なくないからです。
その上、そういった情報に対するトレーニングがされていないので、その情報をどう処理していいかわからない。
たとえば、「来年度の予算は一律10%カットになるかもしれない」みたいな情報を開示された時に、「じゃあどうしよう」というのがわかる非管理職(部下)がいたら、その人は相当優秀です。次の管理職候補でしょう。殆どの人は、「さっきからクレームの電話がなっているのに、来年の話なんて知るかよ!」じゃないでしょうかね。
■部下が情報を知ることの重要性
本書『あたりまえだけどなかなかできない 課長のルール (アスカビジネス)』では、この情報開示の必要性について、以下のように書かれています。
★P38〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
まずひとつは、情報開示することにより、あなたの部下は、会社のめざす方向性が見え、自分の立ち位置がわかり、忙しい日常業務の中で、今自分が何に関わりどんな役割で目の前の業務に取り組んでいるのかということの理解を助けるためです。
ふたつ目に、会社のやろうとしていること、会社の意図や戦利戦略が明らかになるので、あなたの部下への指示の中味も変わります。
硝末的な指示を出すことが少なくなり、あなたの指示自体が洗練されていくことになります。
ただし、メリットばかりではありません。あなたは「幹部情報」に変な尾ひれがついたり、一人歩きしないように、充分注意しなければいけません。また情報開示が「ここだけの話」や「うちの課限定情報」になってもまずいでしよう。
あなたの課の部下が知っているのに、隣の課の部下がまったく知らないのでは、組織全体に弊害をもたらしかねません。
あなたは、幹部情報を部下に公開することでは、常に上司の了解や他課長との調整と根回しをセットにする必要があります。
一番大事なことは、「幹部情報」を無差別に何でも流すのではなく、そこには「取捨選択」が働き、かつ、スルー(横流し)するのではなく、あなたの価値判断を加味した形で部下に伝えないといけないということです。
吉江勝(著) 『あたりまえだけどなかなかできない 課長のルール (アスカビジネス)』
――――――――――――――――――――――――――――★
本書でいうところの「幹部情報」を具体的にどのような情報に当てはめてみるかによって、本書の言うところの判断は異なるかもしれませんね。
が、「部門の年休消化状況」とかは幹部情報に当たらないのでしょうね。「部門の組織再編の検討」だとすれば、「幹部情報」に当たるのかもしれませんが、こんな情報を流したら、不安を煽るだけかも。
■部下に必要な情報を必要なタイミングで
一番いいのは、「その部下に必要なタイミングで、必要な情報を」開示することではないかと思います。
もちろん、「ここだけの話」になってしまうと、部下に不公平感が生まれ、不満の要因になるので要注意であることは本書のとおりですが、部下にも、情報を咀嚼(そしゃく)できる人と、字面に振り回される人がいて、どういう流し方をしても結局は理解できない一部の部下ができてしまいます。
ですので、私は、情報を上司が捕まえた時点ではなく、部下に必要だと思った時点で、上司の咀嚼した情報を与えるのが、いいと考えています。これが本書で書いてある「取捨選択」なのではないかと思ってます。
なので、当然「××のような可能性はありますか?」と聞かれたら、事実を応えるようにはしています。部下にインパクトの少ない言葉を選んで。
余計な情報は混乱をもたらすだけ、ちょっと足らずに部下から聞いてくる、というのが現時点良さそうな気がしています。
どのみち、上司本人も十分な情報を持っておらず、足らないところは経験と想像で補っているのが実情ですし。情報なんて100%になり得ることはありませんからね。
部下も処理しきれない、上司は表現しきれない、できないことをやろうとしないことが寛容かと。
■参考図書 『あたりまえだけどなかなかできない 課長のルール (アスカビジネス)』
◆アマゾンで見る
書名 :あたりまえだけどなかなかできない 課長のルール (アスカビジネス)
著者 :吉江勝
◆楽天で見る
あたりまえだけどなかなかできない課長のルール |